第124話 ホテルで戦力分析をする

 晩ご飯を食べに行こうとなったがキャシーは断ってきた。


『ごめんね、パーティのみんなと食事に行く約束なのよ』

『それではしょうが無いね、キャシー』

『今日は楽しかったわ、タカシ、みのり、デイシュー、ミハル、また遊びましょうね』

『また遊ぼうね、キャシーちゃん』

『しばらく日本に居るの?』

『なんか教授プロフェッサーが色々研究があるらしいわ。しばらくは居ると思うの』

『じゃあ、今度川崎においでよ、案内するよ』

『いいわね、楽しそうだわ。では、バーイ』


 キャシーはヘルメットをかぶり、バイクのエンジンを吹かして乃木邸を出て言った。


「Dチューバーにはいろんな子がいるのだなあ」

「敵だ~~」


 鏡子ねえさんは判断が二元論すぎて困るな。


 乃木先生は俺たちを高級焼肉店につれて行ってくれた。

 鏡子ねえさん大喜びであった。


「美味い美味い、肉が溶ける」

「鏡子くんはよく食べるねえ」

「本当に孫のようだわい」


 東郷先生が鏡子ねえさんを見る目が孫を見る目になってるな。


 しかし、高級なだけあって、どの肉も美味しいな。


「タカシくん、もう一度『浦波』を見せてくれるかね」

「良いですよ」


 東郷さんに収納袋から『浦波』を出して渡した。


「素晴らしいなあ、ワシはまだオヤジに足下も及ばない」

「まあ、先代の愛が籠もっているからな、諦めろ」

「短矛の方はどこにあるんですか?」

「白虎の家の倉だな、戦闘中に折れてしまって、表権能も無くなっておるぞ」

「白虎くんはカマドさんの血筋を?」

「そうじゃな、宗家の次男坊と夫婦になって一男一女を産んで、白虎と麒麟が孫にあたるぞ」


 陰陽師の家も結構複雑な感じだな。


「短矛なら泥舟も使えたかもしれないのに」

「いや、鼻捻はなねじほどの長さじゃ、槍術では操作できんわな」

「違う武器種なんだ」


 東郷先生が両手で押し包むように『浦波』を返してきた。

 やっぱり凄い物なんだなあ。

 大事に使わせてもらいます。


 焼肉を食べおわったので、乃木先生の車でホテルまで送ってもらった。

 今日は『ホワッツマイケル』の襲撃は無かったな。

 キャシーと知り合ったけど。


「はー、食べた食べた、焼肉はいいな」

「美味しかったね、鏡子おねえちゃん」

「毎日焼肉でもかわまないぞ」


 健康的に毎日焼肉は色々と駄目だろう。


「それでは、装甲脚絆が出来たら連絡するよ」

「凄いのを作ってやるから楽しみにしておれよ鏡子」

「楽しみにしてるよ、東郷じいちゃんっ」

「色々お世話になりました」

「こちらこそ、色々な事を教えてもらった、こんど東郷と二人で難波迷宮へ行って見ようと思う」

「そうじゃな、『生産者』になるんじゃ」


 それは凄い事になりそうだね。

 美春さんを見ると、口に人差し指を当てているから、『素材研』の事はまだ秘密なんだな。

 親子で協力して、新素材を使って、新しい退魔弓とか作れば良いのに。


「みんな、また来てね、鏡子さん、次回は京都観光しましょうね」

「おうっ、観光したおすっ!! 奈良の鹿も倒す!!」


 倒したら駄目だと思うが。


 陰陽鍛冶さんたちと別れて、俺たちはホテルに入った。

 鏡子ねえさんがうーんと伸びをした。


「今日は採寸されて疲れた、みのり温泉いこー」

「いこういこう、ここの温泉大好きっ」


 みんなでエレーベーターに乗って五階で降りる。

 俺たちも男部屋に入って、ほっと一息。


「キャシーは台風みたいな子だったね」

「自分が、意外に英語をしゃべれるのがびっくりした」

「なんか、職業ジョブのせいらしいよ、異世界も言語がバラバラだから冒険者になると異言語の補助が付くらしい、だから英語の習得が楽になってるってさ」

「ああ、そうなのか」


 それはありそうな話だ。

 とりあえず、冒険配信者をやっていて得をしたなあ。


 泥舟の入れてくれたお茶でおまんじゅうを食べる。

 ああ、ほっとする味だな。


「明日は『ホワッツマイケル』が来そうだな」

「難波に来るね」

「八人に囲まれたら大変だから、さっさと迷宮の中に入るか?」

「キャシーも来るのかなあ」

「ジョン爺さんは強敵だな、『浦波』の[自動防御]でM2の魔法弾を受けられるかな」

「せっかくの『浦波』が削れてしまうよ」


 それは困るな。


「人数がこちらは四人、向こうは八人、キャシーも、パティさんも、マイケルもいる。勝ち目が無いなあ」

「あとは『錬金術師アルケミスト』と『重戦士ヘビーウォリアー』、『軽戦士ライトウォリアー』と『吟遊詩人』バードと『僧正ビショップ』だね、ははは」

「勝ち目がねえ」

「鏡子さんが暴れこめば……。二対一で倒されるよねえ」

「みのりの【スロウバラード】もマリア・カマチョに対抗されそうだな」

「マリア・カマチョさんは動画の歌PVを見るもので、戦うもんじゃあないねえ」

「ミリオンセラーの歌姫だしなあ」


 捕まる前にダンジョンに入る。

 四対六なら、まあ……。


「四対六でも無理だな」

「無理だね、困ったね」


 困ったなあ、川崎にとっとと帰りたくなってきたぞ。

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