第117話 女子部屋でかーちゃんから情報を聞く

 お風呂から出て浴衣に着替えて五階まで降りる。

 女子部屋のチャイムを鳴らすと浴衣のみのりが出て来た。


「あ、いらっしゃい、どうぞどうぞ」

「はいるよー」


 女子部屋に入ると、鏡子ねえさんが生八つ橋を絶賛頬張り中であった。


「それお土産じゃないの」

「自家用に買った、美味いぞ、タカシも食べろ」

「かーちゃんにも食べさせよう」

「そうだな、今日はあと一回か」


 そう考えると一日三回はきつい縛りだな。


「【オカン乱入】」


 ホテルの部屋は土足有りなので普通に呼んだ。

 光の柱からかーちゃんが現れた。


「かーちゃん、八つ橋たべろっ」

「まあ、ありがとうねえ~~。鏡子」


 かーちゃんはソファーに座って生八つ橋を食べ始めた。


「まあ、京都の味やねえ、懐かしいわあ」


 泥舟がボールペンとノートをかーちゃんに差し出した。


「ありがとうね、泥舟くん。とりあえず覚えているだけ、伊達男とネコ娘のスキルを書き出していくわ」


 伊達男

 【剣の素養Lv8】【射撃Lv6】【気配察知】【縦横斬(戦技)】【身かわしLv5】【大剣術Lv7】【受け流しLv5】【切り落とし(戦技)】【跳躍Lv6】【足運びLv3】【多言語理解】【チャージLv6】【斬撃抵抗】


「げえっ、完全な前衛じゃないか、なんて数のレアスキルだ」

「まだまだあったけど、覚えておらん、目立つのだけ書いたで」

「今、『射手アーチャー』をやってるのは完全に遊びだなあ」

「【剣の素養Lv8】がやばいな、それに【大剣術Lv7】も合わせてもってる、この場合は?」

「レベルが高い方が効くみたいだよ、タカシ」


 特級スキルといわれる【剣の素養】は、これで剣型武器の全てを使いこなすというレアスキルだ。


「やろう、私の時はナイフで【受け流し】してたか」

「そうだろうね」


 ネコ女

 【盗賊術Lv12】【気配消しLv6】【鍵開けLv8】【軽業Lv8】【急所撃ちLv6】【跳躍Lv3】【剣術Lv6】【盾術Lv5】【気配察知Lv7】【罠感知Lv5】【スリLv5】


「凄腕の盗賊……」

「すごいな、さすがは世界一のパーティのメンバーだ」

「なかなかごっつい『盗賊シーフ』やな、超一流やで」


 迷宮に入ってから、ずっと『盗賊シーフ』一本でやってきた感じだなあ。


「なんで、『忍者』とか『暗殺者』になってないんだろう?」

「ああ、宝箱の鍵があかんようになるからやな。戦闘力目的で別の職業ジョブにするとパーティが回らんようになるので、ずっと『盗賊シーフ』いう人は異世界でも多いで」


「マイケル氏の元の職業ジョブは?」

「『剣士ソードマン』だよ、タカシ」

「元に戻ったら手が付けられないなあ」

「高レベルの配信冒険者はやばいな」


「ほいじゃ、そろそろ行くで、気をつけてな、タカシ」

「わかった、ありがとうかーちゃん」

「かーちゃんまたなー」

「おかあさま、ありがとうございました」

「おばさん、ありがとう」


 かーちゃんは手をふりながら粒子になって消えて行った。


「こいつらと同じレベルのやつらが六人かあ、やべえなあ、へへへ」


 とかなんとか言いつつも鏡子ねえさんは嬉しそうである。

 強敵と戦うのが好きそうだしなあ。


「マイケルさんも危ないけど、『ホワイトファング』の田上さんも難波にくるんでしょう? 大丈夫かしら」

「『暁』大人気だなあ」

「あれだけ派手なデビュー戦を飾ったからねえ、権田権八を倒したのは『暁』だし」

「汎用性でいうと『宵闇』なんだけどね」

「やっぱさあ、世界一の馬鹿は世界一の武器が欲しいんだろうよ」


 それはあるかもしれないな。


「とりあえず、明日の京都観光も気を付けて行けよ、私は採寸だから」

「解った、ねえさんも頑張ってね」

「おうよ、所でどこに行くの?」

「ええとね、清水寺と銀閣寺と竜安寺ってとこかな」

「そうかー、いいなあいいなあ」

「京都にはいっぱい見所があるから、装甲脚絆を取りに来る時に一緒に回ろうよ」

「そうだな、一緒に回ろう、うんうん」


 はやくレベルを上げないとなあ。

 鏡子ねえさんの武器が来たから、もう三十階は突破できそうだけど、あまり急ぐと事故の元だしな。

 いろいろと難儀な事が続くな。


「とりあえず、明日の事は明日考えよう」

「そうだね、タカシくん、清水寺にいこー」

「せっかくの京都旅行だから、楽しまないとね」


 みんなで旅行なんて、滅多に無い事だからな。

 『ホワッツマイケル』は強すぎて対策を練る事も無意味な感じだ。

 なるようになるしかないな。


 泥舟と男子部屋に帰り、ベッドにもぐりこんだ。


 そうか、150階を目指すという事は、マイケル氏を追い越さないと実現しないんだな。

 遙か彼方の頂きに見える。

 マイケル氏が『剣士』のままだったら今日の襲撃で『暁』を奪われていたんだな。

 こっちを舐めているうちに強くなれば……。


 難しいな。

 一跳びで絶対的に強くなる方法なんか無い。

 あったとしたら、それは悪魔の罠か何かなんだろう。


 みんなと一緒に強くなるのが最善手だろう。

 きっと。

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