第57話 高田君に手斧を渡す
目玉さんにお礼を言ってデモンズ神殿から出て来た。
なんだか鏡子ねえさんの動きの質が違う。
ぬるぬるしてる感じに動いているな。
「ちょっと動きを試したい、六階行ってくる」
「駄目ですよ、アウトロー狩りは」
「駄目かあ」
とても残念そうだ。
「僕も早く転職したいなあ」
泥舟がしみじみと言った。
「次の狩りは月曜日だね、明日はお休みだ」
「え~~~」
「鏡子ねえさんは、俺と実家に行くんだからね」
「え~~~」
不満そうな顔をされてもなあ。
本当に鏡子ねえさんは戦闘以外ポンコツな感じだなあ。
「タカシ、これからどうすんだ」
「『オーバーザレインボー』を待って晩ご飯ですね」
「そうか、俺も行っていいか?」
「私も私も」
「ええ、良いですよ」
後醍醐先輩もチヨリ先輩も良い人だからね。
なんだか最近友達が増えてきて楽しいな。
「戦いたい、だれか喧嘩売ってこないかな」
鏡子ねえさん、物騒な事を言わないでくれ。
ロビーで雑談をしたり、峰屋みのりに売店で財布を買わされたりしていると、ポータルから『オーバーザレインボー』が出て来た。
わりとみんな明るい顔をしているから良い狩りができたようだね。
霧積だけがしかめっ面だ。
「お、新宮、待たせたか?」
「そうでもないよ、財布とか買ってたから」
「私が見てあげたんだよー」
「おお、それでは安心ですね」
なんか、厨二っぽい財布だけどね。
黒くてコウモリの羽が付いている二つ折りだ。
「鏡子ねえさんのねぐらを整理してたら、レア武器がでてね、これ」
俺は東海林に手斧を見せた。
「高田くん、使わない?」
高田君がてててと寄ってきた。
「す、すごいっ、魔法の手斧?」
「こう使う」
鏡子ねえさんが俺から手斧をとって、投げて、戻って来たところを空中でキャッチした。
「すげえええっ!! 欲しい欲しい欲しいっ!!」
「いや、だが、新宮、もう金が……」
「そ、そうなんだ、金が無いよ」
「ああ、良いって、鏡子ねえさんが迷惑を掛けたしね、あげるよ」
「アウトローから分捕ったものだしさ」
「えええっ!! いいのっ!!」
高田君は素直に喜んだが、東海林は思案顔だった。
「いや、こんな高額な物、悪いよ」
「じゃあ、バーター取引にしよう、『オーバーザレインボー』で槍か護拳で良いのが手に入ったら交換で貰うという事で」
「東海林君東海林君、僕、これ使いたいよ」
「悪いなあ新宮、鏡子さん、槍か護拳がでたら『Dリンクス』に回すから」
俺は高田君に手斧を渡した。
『高田~~、よかったなあ~~』
『これでゲッターにまた一歩近づいたぜっ』
『どこかでもう一本探してきてダブルトマホークブーメランしろー』
「新宮くん、鏡子さんありがとう、うれしいよ、これでゲッタートマホークができるよっ」
まあ、がんばってくれ。
「くそっ、高田ばっかりっ」
霧積が毒づいた。
「パ、パーティの物にして、交代で使おうよ、霧積くん、ねっ」
「いらねえよっ、俺は斧なんか不人気武器使わねえっ」
「そ、そうなんだ」
「霧積も三ヶ月待てよ」
「ああ」
大変不満そうだが、霧積も収まったようだ。
鏡子ねえさん、隙あらば霧積を殴るとばかりに俺の影でスタンバイしないで下さい。
「高田~~良かったじゃん、タカシさん太っ腹だ~」
「うん、僕、真のゲッター目指して頑張るよ」
「う、うん、がんばれなー。しっかし、鏡子ねえさんすんごいイケメンになったっすねー、あーし惚れそう」
「わたしも~~」
「そうか、惚れてもいいぞ」
「「「きゃ~~」」」
『オーバーザレインボー』の女子二人と峰屋みのりが黄色い声を上げた。
「鏡子さん、クラスチェンジしたのか?」
「ああ、【
「おお、そんな希少な上級職に、すごいな、世界で二人目ぐらいだろう」
「そうみたいだね」
「タカシのお母さんみたいに爆発的には強く無いが、常時居る回避タンクとしてすばらしく有利なメンバーだな」
「俺もそう思う」
後醍醐先輩がつつつと鏡子ねえさんの近くに寄ってきた。
「晩飯ですが、姐さん、何が食いてえですかい?」
「肉」
「サラマンダー家族でも行きやすか?」
「タカシはどう?」
むむむ、あれだろ、本場の牛肉ハンバーグ専門店。
行ったことは無いが、高いのは知っている。
「あ、タカシくん、また値段にビビってる」
「貧乏症だなあ」
というか、このところ外食しすぎでなんだか罪悪感が。
一食三百円ぐらいで済ませたいのだが。
「『きょうはいいてんき~~♪ おひさまわらってぴっかりこ~~♪』」
おお、峰屋みのりの【元気の歌】で体の底から活力が湧いてきたぞ。
そうか、新しいお財布にまだ万札がある。
サラマンダー家族、何する物ぞっ。
「なんだ、タカシ、金が無いのか、じゃあ俺が奢ってやんよ」
「お、おねがいします……」
「タカシくん、かっちょ悪いよう~」
「かかか、しょうがねえよ、なかなか金のある感じは慣れないよな」
「おねえちゃんも奢るぞ、三万あるし」
鏡子ねえさんがポケットからくしゃくしゃになった万札を出して来た。
「あ、ありがとう」
みんなでサラマンダー家族に行く。
そういう事になった。
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