第55話 魔石や武具を換金しにいく
俺と鏡子ねえさんと後醍醐先輩が大黒様のようにポリ袋を担いで階層を上がっていく。
「なんか、高レベルって力も強いね」
「そうだね、峰屋さん、まあ、一般人の平均が10なんだって、でレベル20ぐらいになると、戦士系は30とかになるので、まあ、三倍の力だよね」
「おほほほほ、バード系は魅力が常人の三倍ですわよっ」
「チヨリさん、射手(アーチャー)でレベル上げたって言ってたじゃない」
「うるさいわねっ、
「Dチューバーって、スーパーマンだよね」
「そのうち世界は破滅するわ、そんな気がしてならないわよ」
「い、異世界だと上手く回っているんだから、だ、大丈夫じゃない?」
世界は滅びないかもしれないが、昔の世界とは大きく形を変える事は間違いが無いだろう。
科学技術は緩やかに魔導技術と融合して、どこまでも発展して行きそうだ。
魔術師、錬金術師の
「僧侶も信仰心が馬鹿上がりするぜ。だけど、それは仏の教えと本当に沿った道なのか、そうでないのか、ちっとも解らねえ。転職も蘇生も浄土真宗の教えにはねえし」
「信仰心が爆上がりすると、阿弥陀仏に直接教えを聞いたりできるんでしょうか?」
「わっかんねえ、歎異抄の教えからするとそんな事はぜったいねえ、ねえんだが、わっかんねえなあ」
寺生まれの後醍醐先輩でも解らないのか。
まあ、異世界から来た宗教を元にした信仰心なのだから、多神教のような気がするが、祈れば神が答えてくれる世界では仏教は分が悪いかもしれないな。
確実に言えるのは、世界はこれからも変わっていく、という事だ。
今でももう、迷宮が無かった頃には考えられないぐらい世界は変わっている。
悪魔たちの静かな侵略だ、天然自然な人類の血を守れ、と声高に演説する宗教関係者も多い、だが、そんな声も宗教者でDチューバーという人の信仰心から来る言葉に負けてしまう。
なぜなら、信仰心の数値が上だからだ。
奇跡を起こし、人を癒やせるからだ。
とてつもない現世利益に人は弱い。
三階草原を越えて、二階レストラン街を抜けて一階ロビーに着いた。
三人で買い取りカウンターにポリ袋を置いていく。
「わあああ、沢山持って来ましたねえっ、なんだかテレビで見るゴミ捨て場みたいになりますねえっ」
「魔界にゴミ捨て場は無いの?」
「えっ? あっ、ふふふ、秘密ですよタカシさんっ」
今日の買い取り担当の女悪魔さんは羊みたいな巻き角でくるくるパーマの人だった。
ふわふわしていてとても愛くるしい感じだ。
さっそく彼女はポリ袋を開けてばばばと査定を始めた。
「全部で六百七十二万八千二百六十円となります」
おお、結構良い値が付いたな。
魔法のトマホークとか売ったらこれにさらに一千万とか付け加えられたか。
「じゃあ、換金してくれ、十万現金で、あとは口座に」
「まいどありがとうございます。Dカードを拝借いたします」
現金を貰った鏡子ねえさんはそれをまるまる峰屋みのりに渡した。
「服代」
「い、いらないよう、あれは鏡子おねえちゃんにプレゼントしたものだからっ、いいんだよっ」
「いや、それでは私の気がすまないし」
「えーでも」
「ブラックカードはみのりの親の金にたかる事になるんだろう、だから受け取ってくれ」
「しょうがないなあ、でも十万は多いよ、六万五千七百円だから、六万円だけ貰うよ」
「七万円もってけ」
いやです、うけとれと二三回応酬して、結局七万円で落ち着いたようだ。
鏡子ねえさんは三枚の万札を無造作にポケットに入れた。
「売らないけど鑑定してもうのは有り?」
「本当は無しです、けど、タカシさんのお願いだと特別に有りです、みんなには内緒ですよ」
やっぱり女悪魔さんたちは口が上手いなあ。
俺は魔法の手斧をカウンターに乗せた。
「魔法の品ですね、銀のレリーフの奴はグレードがあまり高くないんですよ。買い取り価格は一千百万円ですね」
峰屋みのりのリュートぐらいのグレードか。
魔法の品物の最低ラインっぽいな。
「じゃあ、これは?」
俺はマタギナガサを抜いてカウンターに置いた。
「…………」
お姉さんはマタギナガサをじろじろと舐めるように見た。
「三億六千五百万円です」
「えっ?」
「え、なんでだ、魔法ついてないだろっ」
後ろで聞いていた後醍醐先輩が声を上げた。
「あー、すいません、私は鑑定屋じゃないので細かい事は教えられないんですよ。でも価値ある物なので大事にしてあげてくださいね」
「あ、ありがとう」
「また来てくださいね、タカシさんっ♡」
女悪魔さんに投げキッスされてしまった。
「鏡子ねえさん聞いた?」
「意外と高かったな」
「お金、払う?」
「は? なんでだ、アウトローが持ってた奴だから原価は只だ、別に気にしないよ」
「た、助かる」
普通の良いマタギナガサだと思っていたけど、異常な高値が付いた。
なんか秘密でもあるのかな。
どう見ても、これは地球の品だよなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます