第54話 色々な物を仕分けする

 ポリ袋に入れた魔石と武具を持って樹から下りた。

 峰屋みのりと泥舟にポリ袋を渡して仕分けを頼み、今度は三号店に向かって樹を登って行く。


『樹上生活者や~~』

『雨が降らないから屋根は無いのか』

『木材をざっと組んで床を作り、寝台とかも作っているな。狂子の寝室拝見だ』

『時々配信で部屋は見たな、三カ所もあったのか』

『おっぱいしか見て無いから気がつかなかったんだ』


 三号店もだいたい同じような感じだった。


「鏡子ねえさん、器用だね」

「なんか頭が阿呆になってたので時間が掛かった。快適になるのに一年ぐらいかかったかな?」


 ここで寝て、オークゴブリンを狩り、池で水浴びをして原始の生活をしていたのだなあ。

 サバイバル生活だな。

 まあ、怪我にはポーションがあるから大丈夫だったのか。

 武具の隣に開封してないポーション、キュアポーションがあった。


「キュアポーションもあったんじゃん」

「緑色だから警戒して飲まなかったんだ」


 峰屋みのりGJだよなあ。


 こっちの武具入れにはレア武器があった。

 優美な銀の彫刻が入った手斧だ。


『高田の武器キターッ!!』

『これで完璧で究極のゲッターやーっ!!』

「高田くん? そういや斧がメインって言ってたけど……」

「これは楽しい、一時期使ってた」


 そう言うと鏡子ねえさんは手斧をリンゴの樹に向けて投げた。


「なげたーっ!!」


 どっか行っちゃうじゃん!

 と、思ったら、リンゴが沢山付いた枝を落とした後、手斧はキリキリと回って帰ってきた。


「すごい! 手元に戻ってくるのか」


『『『『『『トマホークブーメランッ』』』』』』

『高田ブーメラン!!』


 鏡子ねえさんはパシッと手斧をキャッチした。

 これは凄い武器だな。


「そうか、昨日鏡子ねえさんが霧積の魔剣を折って東海林のパーティには迷惑を掛けたから、これを高田君にあげようか」

「うん、いいぞ」


『『『『『いやっふーっ!!』』』』』

『高田がゲッターにまた一歩近づいた』

『ゲッターとは、迷宮の真実とは、こんな簡単な事だったのか……』


 なんか、コメントが盛りあがってるな。

 良くわからないが。


 とりあえず、一号店のように魔石と武具をポリ袋に入れて樹を下りた。


 小道ではみんながシートに武具を並べて仕分けをしていた。


「良い槍はあったかい、泥舟」

「ないねえ」

「というか、泥舟の槍は相当良い奴だろう」

「まあね、お爺ちゃんに貰った」


 女性陣は魔石を包んでいた葉っぱを取って魔石だけにしてポリ袋に詰め直していた。


「細かい魔石が多いですわね、でもこの量ならば」

「色んな魔石があるのね、濃い紫色で綺麗」


 峰屋みのりが魔石をとって空にかざしてのぞき込んだ。

 魔石は透明度が高くて、なかで何かの粒子がうごめいて見える。

 魔力の固まりだと言われているね。


 経験値の凝り固まった物だと思った配信冒険者が粉にして飲んだ事があったが、即死した。

 レベルアップには使えないみたいだ。


 さて、二号店に向かうか。

 みなもポリ袋とシートを持って付いてくる。


 途中、ゴブリンが二匹、オークが一匹出た。

 倒すとゴブリンカレーとオークハムが出た。


「おっ、オークハム」


 さっそく鏡子ねえさんは包み紙を歯で破いてハムをガリガリとかじり始めた。

 なんだなあ、腹ぺこキャラになってきたな。


「みのりもくうか?」

「う、うん、ちょっと味見る」


 峰屋みのりはベルトに挟んだ短剣を抜いて鏡子ねえさんがかじった方とは反対側を少し切って口に入れた。


「……、こ、これは! ハムだわ!」

「ハムだ」


 オークハムって大仰な名前なんだけど、味は普通のハムなんだよなあ。

 美味しいけど。


 二号店のある樹に着いた。


「ここが最近はメインの住処だった」

「そうなんだ」


 樹によじ登ってみると、確かに組んだ木が新しい。

 ちょっと工作力が上がっているのか、わりと良い感じに床ができているな。


 貯めてあるのは他の所と同じく魔石と武具だった。

 わりと良いバックラーがあるな。


「鏡子ねえさん、これちょうだい」

「いいぞ」


 ちょっとだけ良いバックラーだな、買ったばかりだけど、今のバックラーは売ってしまおう。


「あ、これだ、マキリというか、マタギ刀というか」


 手に取って見た。

 ずっしりと重い、日本刀みたいな作りの片手剣だな。

 魔法は掛かってないけど、相当良い物っぽい。

 今持っている初心者用片手剣より良く切れそうだ。


 ちょっと振ってみる。

 おお、バランスが良くて手に馴染むな。

 運の良いことに鞘も付いていた。

 組紐に血が乾いた後があるが、まあ、アウトローが持っていた物なんだろうな。


「気に入ったか」

「うん、貰っていいの?」

「私の物はタカシの物だ、私の大事な弟だからな」

「ありがとう、鏡子ねえさん」


 腰に吊して、よし、初心者装備から卒業だな。


 残りの魔石と武具を持って樹から下りた。


「わっ、剣、変わったね、見せて見せて」


 俺はマタギ刀を抜いて見せた。


「わあー、綺麗ね~~」

「剣鉈というか、マタギナガサっていう山刀だね、ドロップアイテムじゃなくて日本刀と同じ製法で作られた本式の奴だ」

「マタギナガサって言うのか」

「切れそうねえ、素敵」

「おう、腕に見あうもん持ったじゃねえか、タカシ」

「おにあいですわ~」


 みんなに褒められて俺はなんだか嬉しくなった。

 ああ、良い物を鏡子ねえさんに貰った。

 ありがとう、鏡子ねえさん

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