第3話 最強の殺し屋クロは、六色稽古を体験する

 「はぁーはぁー」


 息を荒げるレイにそれを見てニッコリとほほ笑むリリー。ルクスは毎日毎日違う色の特訓稽古をやっていた。そこで一番きつかったのはこの女の練習だ。


 「リリーきついよ……」

 「レイまだだよ!」

 「えぇー」


 こいつは情報専門の事をやっているので人間の体を知り尽くしている。そのためレイにとって一番キツイ内容をぶち込んでくるわけだ。


 その次の日は師匠の特訓だった。


 師匠はこの世界の暗殺術や、魔術、武術を全てレイに教えてくれた。


 「レイよこの世界には武術と魔術があることを教えたな」

 「うん」

 「魔術は限られたものにしか扱えないと教えられてきた。だが私はそうとは思わない。魔術は難しいが私たちの六色稽古を耐え抜いたら必ず魔術が使えるようになる」

 「わかった」

 「そして魔術は武術よりも容易に自身の力をあげることができる。そして魔術を極めたものを深淵化という」

 「武術も同じく己の肉体を己自身で強くしていくからこちらは誰でも使えるようになる、そして武術を極めたものを極限化という」

 「それって二つ一緒に使えるの?」

 「深淵化と極限化は対立しているため、基本的には不可能だがそれを可能としている人間どもがいる。それが我ら六色光だ。もちろん六色光に入れるほど強くないとこの異形の技は不可能だ」


 レイはリヒーの話は真剣に聞いて、訓練が終わった後も自分で訓練を毎日続けていた。


 数年後……


 「レイ、俺を殺しに行くつもりで戦え!!」

 「分かった」


 赤のミレイユは今レイと対人戦の訓練をしていた。ミレイユは一流の火力枠で戦闘に関しては現黒のリヒーの次に強いと言われている。そんなミレイユの武器はメリケンで己の拳に極限化と深淵化を乗せて戦うのが主流だがその攻撃を受け止める者がいた。


 「なに……」

 「危なかった」


 何かが爆破した音に近い打撃音と共にミレイユが自分の拳を見るとレイの短刀の側面でミレイユの拳を受け止めているのが見えた。これはミレイユ自身すごく驚いた。赤の別名は【武器破壊の赤】の二つ名がある中たった一人の子供に自身の打撃を何も被害なく受け止めるのは明らかにおかしいのだ。


 「おいリヒーさん、レイは少しおかしくないか?」

 「私も前々から思っていた。あの子は素の力が強いんだ。もしかしたら黒になるかもしれない」

 「それはそれは(笑)。御冗談はよしてくれ。流石にリヒーには勝てないな」

 「それは分からんぞ。今度六色全員VSレイをやるか」

 「マジかよ……」


 そんな会話をしていたリヒーとミレイユはその次の日、レイVS六色をやることになった。


 「レイちゃん!無理しないでよ!!」

 「黒の名において私たちは本気で相手にする!」

 『了解!』


 リヒーは他の六色に本気で戦うように黒の名前のもとこの戦いを行う事を約束した。開始のゴングが鳴り一番最初にレイの元にたどり着いたのは青のミルだった。


 「レイすまない。《深淵化束縛呪しんえんかそくばくじゅ》」


 髪で片方隠れているミルの目が風の勢いでふわりと浮いた。レイは初めてミルの片目をみたらそこには黒目ではなく金色に染まった魔眼まがんがついてあった。


 「……」


 レイは無言で束縛呪をいとも簡単に無効化させてしまった。そのままレイはミルに模擬短刀を腹に突きつけるがミルは寸前でかわす。次に向かってきたのは黄のリキッドだった。


 リキッドは【黄の歩く毒】と言う奇妙な二つ名を持つ者だが、一瞬でそう言われている理由がレイには分かった。


 「レイさんは僕と戦ったことないからまだ勝手が分からないよね」

 「……見切った……」

 「《深淵化毒霧しんえんかどくきり》」


 リキッドの放った魔術は空中に霧が舞いその霧は触れるだけでも瞬時に筋肉が硬直するほど強い毒だ。レイはその霧から離れようと後方に下がったがそこにはカノンが居た。


 初めてレイは焦った。


 「ばいばいレイちゃん」


 カノンは身の丈ほどある長い銃と手に収まるほど小さい銃を持っていて、短い銃でレイに標準を合わせていた。バンと銃声が鳴って六色は勝ったか……と思ったその時白い白煙の中から出てきたのは片手に銃弾を持ってもう片手にはリキッドの毒霧を入れた瓶を持っているレイの姿が居た。


 それはまさに神業と言えるぐらい凄かった。その神業を見せたレイの元に瞬時に近づきレイが気が付いたころには首元に刃が置いてあった。


 「……影」


 先ほど首元に置いていたはずの刃の間にはなぜか何もいなくなっていた。リヒーはすぐさま後退して周りを見渡すと天井の柵に立っているレイの姿があった。


 そのままリヒーは自身の武器である双刀を持ちレイの元に向かう。その速さは異次元で音も風も出ていなかった。その速さはこの世界で一番と言ってもいいぐらいなのにそれについてこれるレイがそこにはいた。


 「レイお前強くなったな」


 その言葉を吐き捨ててリヒーはレイの短刀に当たって地面に着地した。


 その夜レイ以外の六色が集まり。やはりレイが異常な存在だったことを話し合っていた。


 「今日の議題の結論を言おう」

 「さてさて~。レイちゃんはどうなるか」

 「レイは実践に行かせることにする。実際の任務に出向けば自分の足りないところが分かるはずだ……」


 そうしたレイは後に数々の偉業と伝説を作ったのだ。

 


 

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