第2話 威楼流 蓬剣咲

薄陰が翌日学校に行くと瀬戸ミコに声をかけられとある教室まで連れて行かれた。


瀬戸「長らく使われていないこの教室を、生徒会討伐本部と名付ける!!」

いや勝手に使うなよ。


瀬戸ミコは声高らかに宣言した。


薄陰「気合い入ってるね...」

まだ眠気が完全に取れてない薄陰は彼女の声量に少し鬱陶しさを感じた。


二人はその教室に入る。

薄陰「改めて聞くけどさぁ、本当に勝算あるの?今の生徒会に楯突いたら殺されるかもしれないじゃん。」

瀬戸「イドが発現してないからってわけじゃないけど、私は現実至上主義なの。実現不可能なことは実行に移さない。」

薄陰「説得力に欠けるよ、現状二人じゃ何もできないよ。」

瀬戸「当たり前でしょ。そのためには綿密な計画が必要不可欠、忠実な仲間を増やすことが最優先事項だね。」


薄陰「まぁそうなるか…てかそもそもさ、1年生を虐げる今の生徒会の方針は不当だからって理由で先生方とか強育委員会が干渉してくれれば済む話だよね」

瀬戸「ちみは本当にこの学校の生徒か、薄陰?この学校の校訓は“自由”。余程大きな戦いが起きない限り彼らが重い腰を上げることはないんだよ。」

薄陰は妙に納得した。


瀬戸「だから、この1学年の中から優秀な人材を引き抜く!それと薄陰、昨日の生徒会役員は去り際確かにもうしないでねと言っていたはずだ。これはおそらく奇跡的に注意で済んだんだ!」

薄陰「...奇跡的に?」

瀬戸「あくまで注意止まりなんだよ。大人しく生徒会討伐の計画を練ろという私たちにむけた神様のお告げなんだよ!」


薄陰は瀬戸ミコの謎の自信に圧倒され、流された。

薄陰「...い、いいね!なら1年棟に大きな

ポスターを貼って一気に集めよう!」

瀬戸「ばかぁ!?」

薄陰「え?」

瀬戸「そんなことしたら1週間で上級生に潰される。上級生の圧力に耐えかねた一年生がここの情報をばらしたら終わりに決まってる。」

薄陰「...まぁ確かに。」

瀬戸「ここは慎重に行こう。」


一呼吸おいて薄陰が話し始める


薄陰「なら具体的にどうしたら良いの?」

瀬戸「まず“風紀委員”と呼ばれる一年生を味方につける。」


薄陰「風紀委員?」

瀬戸「教育委員会に任命された1年生のこと。彼らはこの学校に起きる不測の事態に対応できる優れた戦闘力を持つ者たちだ。」

薄陰「何人くらいいるの?」

瀬戸「有力な情報では4人だ。この学校は単位制だから風紀委員という身分が周囲に全く知られていない人もいれば反対に割と知られてる人もいる。彼らはよほどのことがない限り戦わないから知らなくても仕方ないが。」


薄陰「全員仲間にしたらかなり勝ち目があるね。」

瀬戸「簡単に言うな。彼らは1年の中でも飛び抜けて強いやつだから上級生の圧力など感じないに等しい。普通変化を望むはずないんだ。」

薄陰「...なるほど。」

瀬戸「だが1人、早々と味方にできそうな風紀委員がいる。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜体育〜


倉中高校の屋上のグラウンドで今宵も緊張感のある授業が展開されている。

蓬「とりあえず授業始めにグラウンド50周...」


この授業に出席しているとある1年生は彼の不条理に思わず声を出してしまう。

「は?」


“強師”

この島に点在する学校で血気盛んな生徒の抑止力となる存在

時に強師も血気盛んな時があり、カオスな状況が多々見られる


体育強師 蓬剣咲(ヨモギケンサク)は

この学校では異彩を放つ強師。

”自由“の校訓など彼の前では無意味。

自分の気の向くままに剣を振るう。


皆が感じる落ち着いた怖さ。声を荒げることをせず静かな恐怖を与える。


蓬「どうした?文句あるのか?」

「いえ...」


蓬「いいや、その目は不服そうな目だ。俺の授業におまえはいらん。」


薄陰もこの授業に出席しており、整列している生徒の1人だった。


薄陰(出た...蓬先生の理不尽タイム)


「やめてください!」

蓬は後退りした生徒にゆっくりと迫る


ジャキン...


刀を取り出す


蓬剣咲はフリースタイルの流派“威楼流”の剣士である。


瀬戸「..前から思ってたけどフリースタイルの流派ってなんやねん笑」

薄陰「おいあんまり大声だすな!!」



蓬「“花鳥風月”!!」

追い詰められた生徒もある程度健闘する。

しかし全てを防ぎきれず最後の斬撃を受ける覚悟をした。


がしかし、


シュパッ!

真心「先生、授業の時間が減ってしまいます。僕はこれ以上の指導は無意味に思います。」


真心徹(マゴコロトオル)は不思議な光を蓬の腕に向けて放った。


瀬戸「...さすが風紀委員」


瀬戸ミコはニヤリと笑った。

薄陰「え、真心くんが風紀委員なのか!!あの光、何のイドだ!?」


蓬は刀をしまい、真心の方を向く。

蓬「...まぁ一理ある。じゃあおまえら、整列し直せ。準備体操からだ...」


はい!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜授業後〜

授業後薄陰は廊下を歩く真心に声をかけた。

薄陰「真心くん風紀委員だったんだ!」

真心「あぁ、うん、いざというときは僕も結構強いんだよぉ?笑」


真心徹:誰にでも優しく笑顔が眩しい。ハキハキとした言葉遣いで皆から好かれている。


瀬戸も会話に入ってくる

真心「お、瀬戸さん急にどうしたの?」


瀬戸ミコと薄陰は生徒会討伐をし、新生生徒会の設立する計画を話した。



真心「なるほどぉ...確かに胸が痛いよね。僕もモヤモヤしてるんだ。」


薄陰「なら良かったら一緒に!」

真心「と言いたいところなんだけど、ちょっと今立て込んでて。」

瀬戸「何かあるの?」

真心「今水面下で1年生部員が蓬先生を野球部顧問から引き摺り下ろそうという動きがあるんだ。」


蓬は野球部の顧問であり、授業以上の冷酷さで部員の精神力を絶賛鍛えている。

そして風紀委員真心は野球部員であり、風紀委員として大事にならぬよう気にかけているのだ。


瀬戸「面白い話を聞いた...笑」

薄陰「笑い声じゃないよ瀬戸さん。確かに心配だね。」

真心「だから今回は見送るね。ごめん、応援してる!!」

瀬戸「何か彼らに動きがあったら教えてね!」




その直後、真心を見送る薄陰と瀬戸は声をかけられた。

小田「こんにちは、前は助けてくれてありがとう!!僕らも君たちに協力したい!!」

ウィ「...なぁんか、面白ぇことやってんだってぇ?」


薄陰「君、昨日2年に絡まれてた子か...それにウィズダムじゃん!!」



小田悠太:小柄で弱気、“口封じのイド”の発現者。

うるさい時は“お口チャック・ザ・リッパー”の技を使い周囲に静寂をもたらす。

先日江良に絡まれた際、結果的に薄陰に助けてもらったことに恩を感じている。


ウィズダム英和:長髪メガネで根暗。言動がキショい時があり言論統制したほうが良いとの声もある。イドは非発現だが、パッションで何事にも立ち向かう。

辞書みたいな名前だな。



瀬戸「友達?」

薄陰「うん、イドが無いのにパッションだけで戦おうとするやつなんだ。面白いだろ?」

ウィ「ぅるせ!」

瀬戸「仲間は多いほうが心強いからね!」

薄陰「うん!」

ウィ「生徒会を潰すとか頭おかしいこと考えてるんだろ?俺も暇だし付き合うわ。」

小田「微力ながら協力したい!」

瀬戸「...よし。この調子で同胞を集めていこ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オポァカ 海舟 現 @oppo-tae5151

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ