カルタがはじまる

「着物を着てどうするのかな。」

巫女が厳かにいう。

「日本の文化の集大成、カルタを始めます。」


「カルタ、カルタを始めるのか。」


「ただし、私が持っているのは、ふつうのカルタではございません。」


「ふつうではないカルタというのはどういうものだい?」


「私は、天照大神さまの時代から伝わる、カルタはカルタでも‘光の札’という言霊の力を持った札を使います。」


「カルタは天照大神さまの時代には、ないはずではない?」


「あるのですよ。光の札は。驚きましたか。」


僕は、その凛とした巫女が大好きななのだ。

「おかえり。」


「え?耳人形さま、今なんと仰ったんですか?」


「つい、口から出てしまいました。日本ってカルタって深いな。

あの...、人面犬ってどれくらい前からいるものなのですか?」


「さて、存じえておりません。

それと、耳人形さま、私はこの光の札をたしなむ者、つまり巫女として常日頃から‘響き’を気にしています。

私、小町は先ほど、指人形さまが‘おかえり’、と仰った時にかすかに四国の風を感じたのです。もしかして、四国を嵐でも通るのでしょうか。

心配です。」






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