第33話 教導魔術師団②
(【リターン】発動! こいつらの魔法攻撃力と魔法防御力をレベル1の状態に戻して固定する。さらに記憶を探索者大会前の状態まで戻す!)
綾への危害を示唆されたので、さすがにギルティだ。
なので【エクステンション】で強化された機能を使ってやる。
普通の【リターン】ではたとえばレベルを1にしたとしても、ダンジョンでモンスターを倒せばレベルが上がってしまう。
しかし、【エクステンション】があると戻した状態を固定できることがわかった。
さっきの例だとどれだけモンスターを倒しても永遠にレベルが上がらなくなる。
これが判明したとき、マスターの雄也さんはドン引きしていた。
のは一瞬だけで、悪巧みを思いついたマスターは僕に命令した。
『俺の肉体を全盛期に戻して固定しろ』
というわけで××年分の経験を蓄積した若い肉体を持つ日本最強(多分)の探索者を誕生させてしまった。
しかも経験はこれからも蓄積されていくわけだから手に負えない……。
それには目を瞑りつつ、さて【リターン】発動後の『教導魔術師団』は混乱の極みにあった。
「あれ、ここは訓練スペース? さっきまでダンジョンにいたはずだが……」
「なんでみんなこんなに集まってるの?」
「マスター、こんなにみんなを集めて何かあったんですか!?」
「今日は休みでデートのはずなのに……」
そうやって誰も彼もが記憶の整合性が取れず混乱の極みにあるうちにこっそりと僕はクランの建物を出ていった。
◇◇◇
side 教導魔術師団クランマスター
「マスターレーザー!!」
「グギャアアアアア!!」
上級ダンジョン『夜月』の最奥のボス、グリフォンは青白い極太のレーザー攻撃を受けて消滅していった。
「これで威力が上がるはず…… どうだ?」
白いシルクハットとマントを纏った『教導魔術師団』のクランマスター、
いつの間にやら『教導魔術師団』のクランメンバーの魔力が推定レベル1まで落ちていた。
また知らぬ間に探索者大会は終わっている。
その記録によると出場するはずだった四条レナは準決勝で敗退していて、『反撃の衣』は粉々にされたらしい。
が、『反撃の衣』は無事であるしレナは戦った記憶がないと言う。
わけがわからぬ。
魔力がレベル1相当だから、強力な武器や防具の魔力加算ボーナスがあっても精々が上級ダンジョン攻略止まり。
ならばレベルを上げたらどうかと比較的レベルが低かったメンバーのレベルを上げさせたが、魔法の威力は変わらなかった。
それを我が身でも確かめるため、上級ダンジョンを周回しレベルを上げたのだ。
我には【魔砲】スキルがあり、クランの中では最も攻撃力が高い。
マスターレーザーはその中でも範囲・威力・燃費ともに優秀で我の代名詞でもある。
だから他の者よりも比較的早くレベルを上げることはできたのだが……
やはり威力に変化はなかった。
普通はレベルが上がれば多少なりとも変化は感じられる。
魔力に関しては一切それが感じられなかった。
となると、知らぬ間に呪いの類いかスキルによる状態異常攻撃があったか。
だが今のクランの状況を見るに、クランメンバー全員に対して魔力のデバフをかけ記憶を消去している。
こんなこと1人でできようもない。
できるとすれば【分散化】【範囲内強化】【記憶操作】【呪術】を持つ高レベルの者たちの【魔法統合】であろうか。
レベルが上がっても能力が上がらないとなると、外国の『ブゥードゥーシャーマン』クランに呪術使いによる呪いの可能性が最も高いが、外国からだとさすがに範囲対象外だろうし、なぜ我々だけがピンポイントで狙われたのか心当たりがなさすぎる。
どちらにしろこのままでは次のクランランキングは悲惨なことになるし、そもそもこの大所帯を維持できるかどうかすら怪しくなってしまう。
背に腹は変えられぬのでギルド研究所の副所長に大金を積んで【魔導鑑定】の行使を依頼した。
これでも伝統あるクランだからな。
それくらいの金はある。
だが……
「特に呪いの形跡は見つからないわね。スキルや魔法が行使された痕跡もないわ」
童女のような容姿の真矢女史から告げられたのは無常の言葉。
彼女はつい最近【変装】のスキルを手に入れたらしくアラフィフの容姿ではない。
まあ女性の容姿に触れるのは紳士のすることではないんだが。
「バカなッ! 現に我々はレベルが上がっても能力が上昇していないのだぞッ!」
「って言われてもねえ…… 一応何回か【魔導鑑定】を発動して診ているんだけど、やっぱり何の痕跡も見つからないのよ。可能性があるとすれば【魔導鑑定】を欺く効果のある呪いなのか、痕跡が残らない完結型のスキルなのか。どちらにしろ私にはわからないわ」
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