第27話 独占生インタビュー
僕の独占生インタビューは、ヤミキンさんの所有する自社ビルの専用スタジオで行われる。
スタッフさんがあれこれ動き回る中、僕はぼーっと立っていたが頭の中では事前の打ち合わせの内容を復唱していた。
とはいってもキーフレーズを覚えておいてそこを元にアドリブを利かせるというものだから、とにかくキーフレーズだけは忘れないようにしていた。
そして、有名Youtuberヤミキンの配信サイトで、史上空前の低レベルで探索者大会に優勝した誠の生インタビューの配信が始まった。
◇◇◇
『ほないくで~!! 今回は探索者大会で低レベル優勝記録を超絶更新した帰来誠はんの独占生インタビュー配信回やでぇー!! 顔出しはあかんけど、その分出演料を安くしてくれると申し出てくれたありがたいお人や! やけどな、わいはそんなケチやあらへんからな、ちゃんと正規のギャラ払ったるで! ほな早速いこか! 誠はん、今回の優勝はぶっちゃけどうやった?』
『あ、どうもこんにちは、帰来誠と言います。今回の優勝ですが、様々な要素が重なって優勝できたと思っています』
『誠はん固いなあ、緊張してはる? 初めてやしそりゃそうかな。まあすぐ慣れるやろ。ズバリ聞くで、決勝直前に武器やらなんやら破壊禁止のルールが追加されたやろ? あれどう思た?』
『えーと、確か運営の方が「興行上の理由」って言ってましたよね。僕は組織の運営とかしたことがないのでそのあたりの苦労がわかりませんが、僕には事前に一言もなかったので、何かとても切羽詰まった事情があったのだと思います』
『いやあ、大人なんやな誠はん。わいだったらキレとるでたぶん』
『禁止されましたけどそれとは関係なく優勝できましたし、まあ別にいいかなって』
『おお、煽りよるでこやつ!!』
『え、何でですか?』
『しかもド天然ときた!! こりゃかなわんな。ほな次、えーと視聴者からの質問は…… これにしよか。「失礼かも知れませんがそのレベルホントですか?」 ああ、みんな聞きたいんやろうなと思てな』
『ホントですよ。ちゃんと大会前の検査も受けました。もし違ってたら国営のギルドのメンツがつぶれちゃいますよね? だから正しいですよ。それと、予選のときに誰かが僕のレベルを見破って大声で叫んでくれたおかげで僕のところに攻撃が殺到してきましたからね。大変でした』
『ほえ~、予選でそんなことがあったんや。そうそう、そういうことが聞きたいんやで。次いこか。あ、やっぱこういう質問来るんよな~ 「彼女いますか? いないなら立候補したいです。ちなみに巨乳です」 えらい積極的な質問やな。おらんかってもこれから選び放題やろ?』
『え…… あ、いやその……』
『なんや、童貞かいな。恥ずかしいことやないんやで。誰でも童貞の時期があるんやし。童貞のほうが言うこと聞いてくれるからいい、っていう女の子もおるんで』
『そういうわけじゃないんですが、彼女はいます』
『おお、どんな子なんや?』
『えと、恥ずかしがり屋さんなのでここで言うとあとで怒られそうなのであまり言えませんが、とても大事にしたいと思っています』
『愛されてんな~。うらやましい子やで、その子。プライベートはその辺にして次、ん、なんやこの質問? 「決勝戦で何か観客席の一角が騒がしかったの知ってる?」 こんなこと誠はんに聞いてどうするんや? 試合に集中してたらいくら誠はんでもわからんやろ』
『一応気づいてましたよ。師匠からは常に視野を広くしていろ、と言われてましたので。僕も試合のあと気になって大会の運営の方に聞いてみたんですが、何か呪い返しを受けたような症状の人がいたみたいですね』
『呪い返しねえ…… 怖いなあ。ん、なになに、「その症状の人は『漆黒の瞬き』クランの人らしい。妨害魔法のエキスパートで観客としてたまたまいたらしい」って。どこでそんなこと知ったん、この視聴者はんは? まあええかそんなこと。そしたら次、「破壊スキル持ちですか? 一撃KOもあったのでアサシン系統のスキルもありますよね」 ん~こういう質問はちょっとあかんかなあ……』
『えと、スキルについては探索者の生命線なのでお答えできませんが、昔は無能スキルって言われてました』
『いやあ誠はん、律儀なお方やなあ。こういう質問はホントはタブーやでなあ。うっかり拾ってしもたわいも悪いさかい、許してえな。それにしても無能スキルやて、この結果をみたらそれはありえへんやろ』
『僕は「白銀の輝き」クランで鍛えてもらいましたのでそうでなければ無能スキルのままだったかもしれません。微力ながらもクランの役に立って国民の皆様のために貢献できればいいと思いますので、どうか「白銀の輝き」クランを暖かく見守ってください』
『おお、綺麗にまとめはったな誠はん。ほいたらこれで今回の独占生インタビューの配信を終わるでぇ~。チャンネル登録よろしくな!」
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