第12話 新しい彼女
「私は若さを取り戻したわ! また六徹できるわね!」
使い放題となった僕のスキル。
それが判明した直後にやったことは、はるかさんに頼まれて彼女の肉体年齢を18歳の状態まで戻すこと。
呆れた顔でマスターが若返ってツヤツヤしているはるかさんを見ていた。
「はるか…… お前もしかして最初からこれを狙ってたのか?」
「あんたの話を聞いていた時からね。こんなにうまくいくとは思ってなかったけど。うまくいきすぎて怖いくらいよ。これは依頼料なんか取れないわね。最近三徹までしか耐えられなくなっていたから助かるわ~」
「あいかわらず社畜精神あふれるやつだな。初めて会った時から何も変わっていない……」
「あんたにとって戦いが楽しいのと同じくらい私は研究が楽しいんだからいいのよ。あ、誠くん、そのスキル戻すだけじゃなくて返すこともできるから忘れないでね。具体的には相手の攻撃を跳ね返したり呪い返しできたりとかね」
お、何気に大事なことをさらっと言われた気がするぞ。
これって僕も戦いで役に立てることかな。
あ、でもダンジョンに潜るってなったらいつか『漆黒の瞬き』のやつらとも会うのかね……
それはちょっとイヤかな。
里香に会ったりしたら冷静でいられるか分からない。
そして、帰ろうとしていたはるかさんがおもむろにこっちに向き直った。
「うーん、やっぱり私がもらいすぎなのよね。借りが大きすぎて落ち着かないわ。どう誠くん、あなたがよければ今夜私といっしょに……」
「ダメです!! あげませんから!!」
泣き終わったあとも僕に抱きついていた綾さんがさらに僕をきつく抱きしめる。
痛い痛い痛いってば。
力が戻った綾さんのハグで僕の全身がバラバラになりそうだ!
「あらあら、妬けるわね。冗談よ。せっかく若い体にしてもらったんだから味あわせてあげようと思ったんだけど。そんな怖い顔しないで。じゃあまたね🎵」
ナニを味わうんですかね……
はるかさんが帰ってようやく綾さんのハグが弱くなった。
ああ、綾さんには手加減を覚えてもらわないと……
とにかく、マスターが目論んだ僕の強化作戦は成功すぎるくらい成功した。
「誠、俺の体も全盛期に戻してくれ。ずっと事務仕事ばっかで体が鈍ってんだわ。これで俺も前線に復帰できるな!! それとクランの建物も新築に戻しといてくれよな。それから……」
人使いが荒くなった。
◇◇◇
そしてその日の夜。
僕は綾さんの部屋にいた。
何でかって?
今日はマスターからクランの恩人である僕を家でもてなししたいからって呼ばれたんだ。
けど、呼んだ張本人のマスターはいない。
夜の酒場に繰り出していったからだ。
僕をもてなすんじゃなかったの?
そしてマスターが出ていくとき、「今日はお前をおもてなしするんだから泊っていけよ」「客を泊める部屋はないけどな!」と僕に言い放ち、そのあと何かを綾さんに言づけていて綾さんがなぜか顔を赤くしていた。
夕食は綾さんの手作り。
とても美味しかった。
そして風呂にも入らせてもらう。
体を洗おうと椅子にこしかけると、ガララッとドアの開く音がした。
いまこの家にいるのは僕と綾さんしかいない。
入ってきたのは言うまでもなく綾さんだ……
「誠くん、背中流しますね」
だめだ、後ろを見てはいけない。
「いや、そこまでしてくれなくても……」
「いいから、いいから」
すぐ後ろには俺なんかが本来近づけないほどの美人がいる。
心臓がバクバクする。
鎮まれ、俺の砲身(未出撃)。
それから綾さんも無言で背中を洗ってくれた。
僕も何を言っていいかわからずされるがままになっていた。
「前も洗いますね」
いやいやいやいや。
それはさすがにまずいでしょうよ!
「綾さん、嫁入り前の身でそんなことはよくないですよ」
「古風なことを言うのね。嫁入り予定ならいいの?」
むにゅっ。
「綾さん、あ、当たってます……」
「当ててるのよ。こっちだって恥ずかしいんだから。でも聞いて。誠くんには本当に感謝しているのよ。それに一緒にいるうちにあなたに惹かれたの。好きよ。だから昼間の続きを……ね?」
そういって顔を近づけてくる綾さんを拒む理由はなかった。
◇◇◇
お風呂を出て今度は綾さんの部屋で口づけの続き。
「ねぇ、誠、あなたが好きよ」
「僕もです、綾さん」
僕も彼女も生まれたままの姿をさらす。
「その……初めてだから、優しくしてね?」
「……僕も初めてなんだ」
「そう。うれしい」
◇◇◇
そして事が終わった後、布団の中で二人してまったりと過ごす。
「思ったより疲れるんだね…… 大丈夫、痛くなかった?」
「ええ、でも平気だから。あなたに彼女がいなくてよかった」
「いや、実は……」
そして僕は綾にかつていた彼女のことを『漆黒の瞬き』を追放されたときの事情も合わせて話した。
自分でも驚くほど淡々と、他人事のように語っていた。
「私の後にでてきた『漆黒の瞬き』のエースの里香がねぇ…… 辛いこと話させてごめんね、誠」
「いや、いいんだ。いつの間にか吹っ切れていたというか、もう気にしていないんだ。綾のおかげかもな」
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