第4話 クランメンバー

「お前は今日から採用だ」



 なんかいろいろと本題から外れた気がするけど、その用事で来たんだった。


 よかった。


 とりあえず無職からは脱出できたぞ。



「んで、他に何ができるんだ?」



 え、とおっしゃいましても。


 

 世界にダンジョンが突如現れてから、国はダンジョンを攻略する探索者の育成に力を入れ始めた。


 日本では高校卒業と同時にダンジョン攻略が解禁となる。



 初めてダンジョンに入ったときにスキルが発現するため、僕と里香は高校卒業と同時に身近な初級のダンジョンに入りスキルを得た。


 里香が得たのは【黒衣の賢者】で、僕が得たのはいまいち使い方の読めないスキルだった。


 しかも【黒衣の賢者】は最初から【四大魔法Lv5】【闇魔法Lv7】【経験値増加LvMAX】【魔力回復】【魔力強化】【詠唱破棄】といったスキルを備えていたのにもかかわらず僕には特にスキルがついてこなかった。


 それで何回かダンジョンに入ったけど『漆黒の瞬き』に入って以来は潜ってなかったので普通のスキルはゲットできていない。


 だから僕はスキルが【リターンLv1】しかないんだ。


「えっと…… スキルは【リターンLv1】だけです」


 やっぱ採用取消しとかにならないだろうか。


 思わずネガティブなほうに思考が傾いてしまう。


「おいおい、顔が引きつってんぞ。採用するってさっき言っただろ。せっかくの掘り出し物がわざわざこっちに歩いてきたんだ、逃すかよ」


「あんまりダンジョンに挑戦してないので他にスキルがないんです」


「そんなもんあとから何とでもなる。そうじゃなくて【リターン】は他に何ができるのかってことだよ。修理するだけなら【リペア】でいいだろ。わざわざリターンなんて名前のスキルなんだから他にも何かできるんじゃないのか?」


 

 え、うーん。


 考えたこともなかったな。


 だいたい1日1回しか使えないし、武器を新品に戻すのに気がついたのも里香の武器が壊れたのを何とかしようと思ってやっと使い方がわかったんだし。



「聞いたことのない珍しいスキルだからな。まあそれは何とかしてやるよ。それはそれとして、クランメンバーを紹介してやる。この時間ならそろそろダンジョンから帰ってくるかな」



 そうするとタイミングよく部屋に4人の女の子が入ってくる。


 見た感じ剣士、ガーダー、魔法使い、僧侶と思われる。


「ただいま、お父さん。その人は誰ですか? まさかの新メンバーですか?」


「そうだぞ、綾。紹介しよう、今日からクランに採用した帰来誠くんだ」


「どうもこんちには。帰来誠です。スキル【リターン】を使えます。武器とかの修理は任せてください。事務もちょっとならできます。よろしくお願いします」



 まずは女剣士がこちらに近づいてくる。


 腰まである長い銀髪が綺麗だ。


「私は白鳥しらとりあやよ。【白銀の剣聖】のスキルを持ってるわ。一年前の合同攻略のときに大怪我をしてから後遺症であまり動けないの。あなた、それを知ってて入ったの?」


「いえ、詳しくは知らないです」


「そう。あなたもすぐに辞めるのかしら。まあよろしくね」


「おいおい綾、こんな上玉絶対手放さないからな」


「お父さん前もそんなこと言って逃げられたじゃない」


「今度は大丈夫だぞ」


「どうだか……」


 あんまり親子仲は良くないのか?


 そんなことを思ってると大盾を持った女の子が話しかけてきた。


 茶色の短い髪をしたこの子は、獅童しどうみおさんといって、守りに特化した【重騎士】のスキルを持っているが斥候系のスキルも持っているとのこと。


「レベルはまだ50だけど、綾さんといっしょに初級ダンジョンに潜って経験を積ませてもらってるんだ。よろしくな」


 落ち着いてお姉さんって感じのする澪さんと握手をした。


 次は、肩まで長さの黒髪の魔法使い、鈴崎すずさき香織かおりさん。


 レベルは48でスキルは【魔法使い】で地水火風光闇無属性の魔法が使えるけどレベルは低いらしい。


「よろしくお願いしますね〜」


 ちょっとおっとりした感じの香織さんとも握手する。


 最後は【聖女見習い】の一ノ瀬いちのせ瀬玲奈せれなさん。


 一通りの回復、補助魔法が使えるけどレベルは50。


 というか綾さん以外は初級ダンジョンレベルなんだけど、それは三人が同時期にクランに入ってそれ以外のメンバーは結局去っていったからなんだって。


「……よろしく。すぐにいなくならないで」


「努力します……」


 口数が少なそうな瀬玲奈さんとも握手して…… これで全員?


 どうやってクランを運営してるんだ?


「あの、これで全員ですか……?」


「そうだ。悪いか? 脱退は認めんからな!」


 クランマスター白鳥雄也はぶっきらぼうに答えた。



◆◆◆◆◆◆


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