第三章 世界をもう一度見渡す時

ありがとう

第20話 ネグレクト

プロミスリングを作ってから。

俺達は嵌めてから.....お婆さんを見る。

その姿は感涙した感じだった。

本当に似合っているわ、と涙を浮かべながら。

俺はその姿を見ながら涼子の顔を見る。


「.....え、えへへ。し、幸せだなぁ.....本当に幸せだなぁ.....」

「そうか。良かったな。.....俺も幸せだぞ涼子」

「う、うん。良かった。本当に。有難うお婆ちゃん」

「私の事は気にする事はないわ。.....貴方がたに幸せがある様に」


俺達はお婆さんを見る。

そして頭を下げた。

それから顔を上げてから本当にお金は要らないんですか、と聞いてみる。

だがお婆さんは、良いのよ、と柔和になる。

お代は後でジューンブライドの会場の写真を見せて、と言いながら。


「必ずね。.....お願い」

「.....本当に有難う御座います。必ず持ってきます」

「そ、そうだね。.....元一」


それから俺達は、じゃあそろそろ行こうか、と手を伸ばす。

するとその手を涼子は恥じらいながら握ってきた。

そしてお婆さんをまた見る。

そうしてから、有難う御座います、と告げる。


「ええ。また機会があったら来てちょうだいね。.....貴方がたの幸せを祈っているわ」

「有難う御座います。本当に」

「.....私はこういう事をするのがきっと生き甲斐ね。.....有難う」


俺達は手を握り合う。

それからお婆さんに挨拶をしてから店の外に出る。

そうしてから俺達はそのまま顔を見合う。

リングが輝いている。


「.....え、えへ.....し、幸せだぁ」

「.....そうだな.....確かにな」

「.....も、元一も?」

「俺も幸せだよ。.....とても幸せだ。.....有難うな」


それから俺達はそのまま互いに笑顔になりながら歩き出す。

そして空を見上げる。

空は本当に晴れやかな空だった。

俺達を歓迎している様な.....そんな空だ。


「ね、ねえ。元一」

「何だ?涼子」

「.....み、見ているかな。悠希さん」

「.....きっと見ているだろうな。.....お兄ちゃんはそのままで、と」

「う、うん。そうだね。きっとそうだね」


俺達はそして歩き出す。

その中で俺は涼子を見る。

涼子。どうする?今から何処か行くか、と尋ねた。

すると涼子は、う、うん。じゃあ.....こ、恋人の丘に行きたい、と話してくる。


「.....恋人の丘.....あそこか」

「そ、そうだね。恋人の丘に行こう。私.....世界がもっと広く見たい」

「.....だな。じゃあ行くか」


そうして向かっていると目の前からセーラー服を着た誰かが歩いて来た。

その顔を見てから.....俺は驚愕する。

マナだったから、だ。

俺は眉を顰めながらその顔を見るとマナは俺を見てからビックリする。

それから俺を真っ直ぐに見据えてくる。


「何処か行かれるんですか」

「.....お前はウチにでも用事だったのか」

「そうですね。.....それで向かっていました」

「何の用事だ」

「.....貴方はお姉ちゃんを救う気はありましたか」


そんな事を言われて俺は、!、と思う。

それから俺は、俺は救う気はあった。ただタイミングを逃した、と話す。

するとマナは複雑な顔をしながら、そうですか、と回答をする。

俺はその姿を見ながら、いきなり何故そんな質問をした、と告げると。

マナは、私は考えたんです、と回答する。


「.....貴方は妹さんを失っているから」

「.....それで俺にいきなりそんな事を話したんだな」

「そうです。.....私が何か間違っているのかって考えてしまって」

「あ、貴方は冷静な人だから.....きっと間違いに気付ける.....と思う」

「.....私は感情任せに動く様な人間です。.....そんな事は無いですよ」


言いながら自嘲するマナ。

その姿に、?、を浮かべる。

するとマナは俺達に向く。

そしてお姉ちゃんが歪んだ原因があります、と答えた。

俺達は、!、と思いながらマナを見る。


「.....お姉ちゃんは毒親に育てられています」

「.....毒親ってのは何だ」

「その通りですよ。ネグレクトです。要は無視ばかりされていた」

「.....お前には愛情を注がれたのに、って事か」

「.....そうですね。私は可愛いと。お姉ちゃんはお姉ちゃんだからしっかりと毒親の偽の愛情を注がれています。.....性格が歪みました」


信じられないな、と言いながら俺は口元に手を添える。

だけどそれは浮気をやって良い理由にはなりません、と答えるマナ。

でも、とも切り出した。

それから俺達を見てくる。


「全て悪いと思います。.....今回の件は。.....それで言い訳をするつもりはないですが.....お姉ちゃんも相当に悩んでいると思います」

「.....」

「.....」

「だから.....良ければまた話してあげて下さい。.....またするでしょうから。今回の件を。本当に助かりましたけど.....」


自殺未遂か。

思いながら俺は盛大に溜息を吐く。

それから見てみる。

するとマナは、じっくり考えました。でも私にとってはあの姉でも家族。.....だから、と涙声になる。


「.....ど、どうする?元一.....」

「.....厳しい様だけど俺は許せない。.....少なくともメルのやった事は。.....だけど事情は汲んだ。.....だから取り敢えずあいつと話そうと思う」

「有難う.....御座います」


マナは涙声のまま口元に手を添える。

そして泣き始める。

俺はその姿を見ながらまた溜息を吐きつつ。

真剣に見据えた。

すると涼子が一歩を踏み出す。


「.....ま、マナさん。また来て下さい。私達の元に」

「.....涼子.....」

「は、話し合いで解決出来るなら。何とか解決したい」

「.....有難う御座います.....」


マナは震えながら回答する。

それから涼子は俺を見てから頷いた。

そんな姿に、本当に逞しくなったな。コイツも、と思ってしまう。

そして俺は柔和な感じで笑みを浮かべた。

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