第19話 俺達のプロミスリング
ジューンブライドという事で.....ジューンブライドイベントがある。
その為に用意をする為に俺達は婚約指輪になるものを買いに行く。
それから俺達は若者が行かなさそうなショップに来た。
驚いた様な顔をする店主のお婆ちゃん。
「それで貴方がたはプロミスリングをこの場所に買いに来たのね?」
「そうです。.....この場所は若者が普段来ない場所ってのは分かります」
「わ、私達はそれでも将来は結婚したいって思っています」
「.....そんなに強く言わなくても良いわよ。アハハ。良いわねぇ.....お爺様と出会った時を思い出すわぁ。アハハ」
私とお爺様と運命の出会いをしたのが50年前。
貴方がたと同じ様に学生の時代に会ったのよ、と柔和な笑顔になる。
それなりに懐かしむ様な感じで、だ。
俺達は、!、と思いながらそのままその顔を見る。
するとお婆さんは、少しだけ寂しげな表情を浮かべる。
「.....お爺様とは去年、死別。.....別れたわ。.....でも私が頑張っているのを見て下さっているわね。きっと」
「そうなんですね.....」
「そ、そうなんですね」
「.....2人で逝こうって話していたけど.....私の方が生き残ってしまった。.....様々な人生を2人で歩んで来た。.....だからとても悲しかった。でも貴方がたの様な人達に背中を押されて前を見ようという感じになって今になっているわ。.....貴方がたの様な若いカップル様は私の最後の希望ね」
柔和になりながら俺達を見てくれるお婆さん。
俺はその顔を見ながら複雑な顔をする。
すると涼子が、さ、最後の希望なんて言わないで下さい、と切り出した。
俺は、!、と思いながら涼子の顔を見る。
「わ、私は.....悲しいです。.....そんな事言われたら」
「.....あらあら。お優しいわね。.....そうね.....確かにそうよね」
「わ、私はお婆ちゃんの立場になって考えました。.....そ、そんな事があったら前を向けないとは思います。.....でもきっと明るい未来は待っています」
「.....そうね。.....貴方の言う通りだわ」
そんな事を言いながら笑顔になるお婆さん。
俺はその様子を確認する様に見ていると。
じゃあ次は私の番ね、とお婆さんが言い出してから指し示す。
プロミスリングはどの形が良いかしら、と呟いた。
「わ、私はお婆ちゃんの全部お任せで選んだもので」
「そうだな。.....確かに」
「あはは。そう言ってくれて有難うね。.....でも私が全部を選ぶ事は出来ないわ。私はあくまで他人。貴方がたの一生を選ぶものよ。私が不幸にしちゃったら意味が無いしね」
「.....お婆さん.....」
それから、でもそうね。貴方がたに多少なりに少しだけヒントを与えるとするなら水色が似合ってそうね、とまた笑顔になる。
俺達は顔を見合わせてから、じゃあ水色が主なリングで、と柔和になる。
するとお婆さんは、そう?じゃあ水色を主調にして詳しく聞かせてもらうわね、とリングの事を詳しく聞いてくる。
そして。
☆
お互いのプロミスリングが出来た。
それは.....水色の石が嵌め込まれた銀のリング。
単純なもの。
だけど俺達はそれを見てから一番に、これだ、と思った。
そしてお互いに顔を見合わせてから笑みを浮かべる。
「.....じゃあこれでお願いします」
「分かりました。.....じゃあこれで作るわね」
「あ、有難う御座います」
そして俺達はハッとしてから、代金を、と財布を取り出す。
するとお婆さんは、いいえ。要らないわ、と言葉をまた笑顔で発する。
そんな訳にはいかないですよ、と言いながら慌てる。
そうしていると、じゃあそうね。お代は.....貴方がたが今度行くそのジューンブライドのイベントの婚約写真を見せてちょうだい、と話す。
「.....え、えっと.....そんな.....」
「私は貴方がたを見て純粋な想いを感じたわ。それだけで十分ね。私は気に入った方々の料金をタダにする癖があるのよ」
「.....お、お婆ちゃん.....」
「.....本当にそれで良いんですか」
真剣な顔をする俺。
その言葉に、私にとっては今が幸せなのよ。貴方がたはお気に入りだからね、と言いながらお婆さんは作業をし始める。
満面の花咲く笑顔で.....丁寧に。
俺達はその姿を見ながら寄り添った。
それから作業が終わるのを待つ。
「貴方がたのお名前は刻むかしら?」
「じゃあ.....お願いします」
「分かったわ。.....じゃあ先ずはお名前をここに記して.....。全部ローマ字で良いわね?」
「「はい」」
それから俺達は名前を紙に書いてから。
そのまま手を恋人繋ぎをしてから寄り添い待つ。
そして10分も経たぬうちに完成.....した。
水色の石が嵌め込まれた俺達のプロミスリングが、だ。
何というかクソガキどもには早いとは思う。
だけど俺達は.....本当に幸せだった。
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