第18話 遅めのジューンブライドのイベント

俺は涼子と付き合い始めて.....何か。

世界があっという間に過ぎていく感じがする。

この世界は7月の初めに突入した。

暑いもんだな、と思う。

一応試験があるので油断は出来ない。


そしてマナとは議論が平行線となっている。

それから一方でメルは.....入院したままだった。

果たしてどうなっていくのか分からないが.....でも。

明るい未来は待っていると思える。


「ゆ、遊園地に行きたい」

「.....は?涼子。それはマジか」

「で、デートには最適でしょう」


おうちデートをしていると。

そう涼子が切り出した。

俺は赤くなりながらその言葉に驚く。

どうしてまた遊園地なんか。

無理があるだろうに。


「涼子。知っているか。あそこメチャメチャに騒がしいぞ」

「し、知ってる。.....でも私は今じゃないとイヤ」

「.....だけどお前.....あまり大きな音を聴かせたくないんだが」

「知ってる。.....でも今じゃないとね」


だってこんな下らない事に永遠に従うなんてイヤ。

元一とデートするのも制限が掛かる。

だから絶対にぜーったいにイヤ!、と怒る。

自分自身に力強く。

俺はその言葉に目を丸くしていたが、そうか、と苦笑した。


「.....協力する。なら」

「元一.....?」

「お前がそのノイズキャンセリングイヤホンを手放せる様に.....手伝うよ」

「有難う。元一」


言いながら擦り寄って来る涼子。

その頭をなでなでしてやる。

すると涼子は、うにゃー、と言いながらもっと縋ってきた。

それから耳を撫でてやる。


「も.....もう。耳は弱いって」

「弱くても良いじゃないか。可愛いぞ」

「も、もー.....うぅ.....ぅー!こしょばい.....」


赤くなりながら悶える涼子。

俺はその姿にあまりに堪らなくなってくる。

それから見下ろすような形で涼子を見る。

涼子は俺を見ながらまた赤くなる。


「ははは。俺の勝ちだな。赤面したし」

「も、もう。勝ち目とかない」

「勝ち目はあるんだ。.....お前の弱い場所を突けばな」

「も、元一のあほ。嫌い。もうキスもしてあげない」

「.....良いのか?そんな事言って。.....お前が傷付くだけだぞ」


ふーんだ、と言いながら目の前を見る涼子。

俺はその顔に、まあまあ。こっち向いたらお菓子あげるぞ、と言うが。

お菓子なんかに釣られないもん、とそっぽを向いたまま言う。

俺はその様子に、じゃあこっち向いたらプレゼントをやるぞ、と話す。


「ぷ、プレゼント.....って何」

「結婚式場のジューンブライドイベントチケット」

「.....は、はぁ!!!!?」


バッと向いてきた涼子。

予想外の言葉だったのだろう。

俺に赤面しながら向いてくる涼子。

それからチケットを見てから、こ、これどうしたの、と俺を驚愕して見てくる。

あー.....実はな。俺の親父の飲み会の景品、と苦笑いを浮かべる俺。


「へー.....へー!そうなんだ.....」

「結婚しているのにこんなもん要るか!って事で俺に渡してきた」

「お、お父さんグッジョブだね」

「.....そうだな。今思えばな」


え、えへへ。じゃあ擬似結婚式が出来るんだ、とホワホワになる涼子。

それから、もう7月だけど行かないか、と提案すると。

あ、当たり前でしょ、と涼子は胸を張ってご機嫌になる。

さっきまで怒っていたのにな。


「ね、ねえ。じゃあキスの練習しようよ」

「.....はぁ!!!!?お前冗談だろ!?」

「は、ハグ.....キス.....指輪交換.....ふへへ.....」

「お前なぁ.....指輪とかは用意されてあるんだぞ?練習しなく.....」


そこまで言った瞬間。

いきなりキスをされた。

それから唇を離してから、じゃ、じゃあ次は新郎の番、と言葉を発する。

俺に手を広げて甘えてくる。

この野郎.....可愛い!


「.....覚悟せぇよお前.....」

「か、覚悟してるよ」

「.....本当に?じゃあキスをしてやるよ」

「う、うん。新郎さん。やって」


それから俺はキスを交わした。

唇を離す俺達。

そして、こ、これが結婚式場だったら変わるのかな?、と俺に問うてくる涼子。

俺はその言葉に、だな、と柔和になる。


「ゆ、指輪は持ち込みでも良いの?」

「良いんじゃないか?でも相手様がこういうのはイベントで用意して.....」

「じゃ、じゃあ買いに行きたい。お互いの指輪」

「.....い、いや。まだ早いぞ。カップルリングとか。俺達はまだ高校生.....」


か、買いに行きたい。私は.....貴方とカップルリングを作りたい。お、お互いにお金を出して、と潤んだ目で見上げてくる。

だからそれ反則だって言っているだろ.....!

俺は、くぅ!、と胸が締め付けられる。

貴方が選んだリングを嵌めたい、と笑顔になる。


「.....お前な。愛おしすぎるぞ」

「い、いとおかし?」

「いとおかしってwww。違うよ。愛おしいって言っているの。.....あまりにも可愛いんだよお前が」

「え、えへ?そう。可愛い?可愛いかぁ.....えへへ」


悶える涼子。

くそう.....なんて可愛さだ。

それから俺達はまさかのカップルリングを買いに行く事になった。


まだ高校生にも関わらず.....。

結婚する訳でも無いのに良いのだろうかこれ。

思いながらそのままその日に動く事にした。

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