第14話 曇り空
涼子が俺の人生で二度目の彼女になったのだが。
その涼子は俺の家に来てから事故で亡くなった妹の悠希に挨拶をしてくれて.....俺はただ涼子の事を大切にしなければ、と思い始めた。
そのままウチに来た涼子を涼子の実家に送り届けてから俺はまた悠希に挨拶をする。
「悠希。今日は.....有難うな。色々と。.....お前のお陰もあるから言っておくな?」
俺は言いながら写真立ての悠希を見る。
そして俺は手を合わせてから祈りを込める。
悠希は笑みを浮かべたりする事は当然無いが.....だけど。
俺を歓迎している気がした。
それは大喜びをしている様な感じだ。
何故そう思うかって?そうだな。
アイツならそれぐらい喜ぶって思ったから、だ。
昔が、にいに!、的な感じでそうだったから。
「なあ悠希。俺さ.....何だか今が一番幸せなのかもしれないな。.....今までも幸せだっけど。こんな事を言って良いのか分からないけど。だけど幸せかもしれないよ」
言いながら俺は手を合わせるのを止めて柔和な顔で悠希を見る。
悠希は笑顔のまま俺を見ていた。
そして俺は首を横に振ってからそのまま立ち上がる。
それから悠希の写真に触れる。
そうしてからそのまま後にした。
☆
『も、もしもし!?』
「お、おう。大きな声で有難うな。.....しかしいきなりだな。涼子?」
『い、いや。彼氏彼女になったから。だから電話したくなっちゃったんだよね。嬉しくて。そして.....感謝で。もう本当に嬉しい』
「.....恥ずかしい言葉ばかりだなお前.....」
『だ、だって本当に嬉しかったから。.....本当の本当に』
涼子はそう言いながら電話を掛けてくる。
本当に嬉しそうな声で、だ。
俺はその言葉に苦笑いを浮かべながら反応する。
それから目の前の紅茶を見る。
『も、元一。有難う。こんな私と付き合ってくれて』
「.....俺もお前が好きだった。.....だからそんな事言わなくて良いぞ。でも.....まだ結構苦労はすると思う。逆にこっちが良いのかなって思う。お前が付き合ってくれて」
『わ、私は後悔しない。.....だって元一だから』
言いながら、えへ、えへへ、という涼子。
俺はその言葉に、明日だけどな。.....もしメルと面談出来るなら行くつもりだがお前も行くか、と聞いてみる。
すると、もし会えなかったら?、と疑問を浮かべる。
「その時はその時だな。.....俺らにはどうしようもないから」
『そ、そうだね.....確かにね』
「.....だからもし会えたら会うつもりだ。.....決着は、話はしておきたいから」
『う、うん。良い心掛けだと思う』
まあ明日にならないと分からないな、と俺は言いながら壁に掛けられている予定の刻まれたカレンダーを見る。
すると涼子は、し、暫く会えないかもね、と肩を落とした様に俺に話してくる。
それもまあ覚悟の上だな。
取り敢えず明日会えないのなら別の日にしようとは思うが。
「その場合は予定中止だな」
『そ、そうだね.....元一は面会についてどう思う?』
「.....俺としても会えるとは思ってないな。.....そもそもアイツは精神科病棟に入院するかもしれないしな.....何か。多分だけど」
『た、確かにね』
自殺未遂とか起こすとその様な感じにはなるとは書かれている。
ただネットの情報なのでこれは嘘か本当かは分からない。
だけど今のメルの状態では精神が不安定だから.....多分、精神科ではないが継続入院という形にはなるだろう。
あくまで予想だけど、だ。
「.....俺はそこら辺は専門外だ。それにあるのはネットの情報だけだから鵜呑みには出来ない。.....だけど今のメルの精神状態なら継続入院もあり得ると思う」
『そ、そうだね.....確かに』
「あくまで精神科じゃないかもしれない。.....だけど入院はするだろうな」
『そ、そこら辺は難しいからよく分からないけど.....』
ああ。すまないな。変な事を言ったな。
言いながら俺は謝りつつ話をする。
すると涼子は、で、でも今の情報を纏めるとメルさんはまだ安定してないって事だね、と言葉を発した。
俺は誰も見ていないにも関わらず頷きながら、そうだ、と返事をする。
「.....取り敢えずはまだメルはどうなるか分からないから」
『か、可哀想って言ったら駄目だけど。.....私達を散々馬鹿にしたから.....だけど何かしてあげれなかったのかな』
「.....さあな。.....何かしてあげるったってして無かったと思う。アイツは.....それだけ堕ちていたからな」
言葉を一言一言。
俺は窓から外を見てみる。
そこでは雨が降りそうになっていた。
困った天候だな、と思う。
そして俺も困った野郎だな、と。
それから空を見上げ続ける。
特に何も思う事はない空だが.....灰色以上の漆黒に見えた。
墨でも流したかの様な。
決して明るくは見えなかった。
まだ雨も降ってないのに。
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