第9話 貴方が世界で一番好きです
メルの事は正直言って今はどうにも思えない。
それどころかまあ落ちてしまえば良いとも思っている。
そんなメルだがメルに対するイジメが過激になっている様だ。
例えば机に花を置かれたりしている。
これは死んだ人を表す様な事なので絶対にやってはならない。
俺はその事に溜息を吐きながら見ていた。
仮にも彼女だった人間だ。
思う所はあるのだが。
だからと言って救済はするつもりは無い。
何故かといえば俺達を裏切る事をしたのは彼女だ。
まあそれを考えると俺達は救済をする必要すら無い。
「め、メルさん.....も大変だね」
「でも俺は許せないからな。.....丁度良い裁きになったのでは無いだろうか」
「そ、そうだね。確かに丁度良い裁きかもね」
「俺は絶対に許せない。お前の事が大きいけど.....俺の事もあったしな」
そんな感じで会話を保健室でする。
涼子はメルを気に掛けている様だがそれも必要無い。
メルは気に掛ける様な相手ではない。
思いながら俺は話題をちょっと変えてみる。
「なあ。今日はまた何で来たんだ?ウチに」
「そ、それは.....」
「?」
「色々ある。.....で、でも今は言えない」
「今は言えないのか。.....まあそれならそれでも良いけどな」
俺はそう話しながら笑みを浮かべる。
それから微笑む涼子を見る。
すると涼子は、ね、ねえ。ご飯食べよっか、と話してきた。
俺はハッとして、ああ。もうそんな時間.....だな。確かに。遅くなるな、と慌てながら言葉を発する。
「そ、そう。.....せ、先生にも許可を貰っているから」
「そうか。なら食うか」
「そ、そうだね」
そして俺は弁当箱を広げる。
そこには美味しそうなおかずとご飯がいっぱいあった。
俺はその様子を見つつ涼子を見る。
涼子は少食な感じの小さなお弁当箱を出していた。
俺の弁当箱のサイズはその弁当箱の4倍はある。
「お前はそれだけで良いのに。わざわざ大変だったろ?こんな大きさの弁当箱を食材で埋めるとかなったら」
「い、良いの。私がやりたいって思ったから。ただそれだけ。.....私は普段から元一のお弁当を作りたいって思っていたから。良い機会になった」
「.....そうか。.....そいつは何よりだな」
でもコイツには好きな人が居る。
良いのだろうかこんな感じで接しても。
考えながら俺は涼子に聞いてみる。
涼子。良いのか。俺だけにお弁当ってのも、と。
すると涼子は!と浮かべながら、う、うん。大丈夫、と返事をした。
「今はその人は.....そ、その。遠くに居るから。別に作ったし」
「ああ.....そうなのか。じゃあそいつの分も含めて頂きます、だな」
「そ、そうだね。頂きます」
「ああ」
それから俺達は食べ始める。
またメチャクチャ美味い食事だった。
思いながら俺は一生懸命食べていると涼子が俺を見ているのに気が付く。
だがその目が合うとボッと赤面してから俯いた。
「お前どうした?」
「ど、どうもしてないよ。.....有難う」
「.....そんなに恥ずかしい事か?」
「お、美味しいか気になるよ?だから恥ずかしがっている」
俺にそんな事を言いながらモジモジする。
その姿に頭を撫でる。
それから、美味しいよ、と笑顔になる。
俺を見てくる涼子。
「ほ、本当に?」
「ああ。メチャクチャ美味い。有難うな。こんな俺の為に」
「.....う、うん。元一が美味しいって言うならそれで満足だよ」
「そうなのか?.....その好きな人にも美味しいって言って.....」
「い、いや。.....良いの。貴方が美味しいって言うならその人も美味しいって言うだろうから」
言いながら俺にはにかむ涼子。
俺は顎に手を添える。
それから俺は膝に手を添えながら聞いてみる。
なあ、と。
すると涼子は、な、何?、と聞いてくる。
「そいつの何処が好きになったんだ?」
「ふぇ?.....そ、その人の何処.....が?」
「そうだな。.....それが聞いてみたい」
「.....え、えっと。そうだね。私ね。その人と知り合ったのは幼稚園の頃だった」
それから笑顔になりながらまたはにかみながら涼子は話す。
私がその人に救われた。
そして私はその人が好きになった事、と。
俺は聞いているうちに何だか胸がチクッとした。
何だ今の妙な感触は。
「しかしそうなるとお前を本気で愛しているんだな。そいつは」
「そ、そうだね.....うん。きっとそうだと思う」
「何だか羨ましいかもな。.....本来ならメルと.....」
「ね、ねえ。元一」
そう言い掛けた所でいきなりその様な声が聞こえた。
それから、わ、私がその人と結婚したらどうする?、と話してくる。
俺は!?と思いながら箸を止めて涼子を見る。
涼子は真剣な顔をしている。
「.....どうも.....しない.....かもな」
「.....嘘でしょ。それは。元一。また嘘を吐いてる」
「.....」
涼子のどもりが瞬時に無くなった。
つまり本気で聞いてきている。
俺はその言葉に、欲張りかな。俺。お前が他人と幸せになるの見てられないかもな。ずっとお前の側に俺が居たから、と言う。
するとニコッとした涼子。
「.....ねえ。元一。目を閉じてくれない?」
いきなりそんな事を言い出した。
俺は?を浮かべてから、何で?、と聞くと。
涼子は、良いから。閉じて、と話してくる.....。
俺は訳が分からないまま箸を置いて目を閉じた。
その瞬間、頬に手が添えられた気がした。
暖かい感触がする。
何かやわらか.....ってか、え!!!!?
「.....!?.....お前!!!!?」
「目を開けないで」
「ちょっと待て!?お前.....今キスしなかったか!!!!?」
「気のせいだよ。アハハ」
何が起こっている!!!!?
俺は愕然としながら、開けて良いよ、と涼子が話したので目を開ける。
そこに柔和な顔をした涼子が居る。
そして赤くなりながらこう告げてきた。
「私は貴方が好きです。今も昔もずっと。.....何かズレていたからそれを修正したい」
「バカな.....ば.....バカな!?」
「貴方と過ごした日々をこの胸に焼き付ける為に。いつか他の誰かを好きになったとしても.....私は世界で一番。貴方が好きです」
あまりにも衝撃的な告白だった。
そして俺を真っ直ぐに赤面しながら見てくる涼子。
何か.....申し訳ないなって思う。
今言うのは、とも言いながら、であるが。
俺はあり得ないぐらい真っ赤になる。
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