第4話 チークキス.....?
涼子の現在の障害を纏めると。
音に過敏であり.....対人関係が極端に苦手。
文章を読むのにも苦労する。
そんな彼女の事は愛おしい、と思っている。
だけどそれは恋愛感情では無い。
恋愛感情では無く、存在が愛おしいのだ。
分かるだろうか。
つまりは幼馴染として構ってやりたくなるのだ。
俺が.....もう二度と後悔しない様に。
「そ、その。家に付いて来るまでしなくても良いんだけど.....」
「まあ念の為にな。お前の事が心配だし」
「そ、そうなんだね」
二階建ての一軒家が涼子の家。
特徴的な青い屋根の家の玄関まで見送った。
それから涼子を見る。
涼子は赤くなっていく。
俺は?を浮かべながら、熱があるのか、と目線を合わせる。
「な、な、んでも!?」
「???」
「わ、私は.....至って正常、だから」
「そうなのか?何かあったら言えよ?確実に。.....俺は後悔したくないし」
その言葉に涼子は眉を顰めて胸に手を添える。
俺はその姿を見ながら、お前が悩むな、と言う。
実は俺は。
一歳下の妹が居たのだが。
今はもう、亡き、存在である。
そうなってしまった理由。
家族で山に行って滑落したのだ。
それを助けられなかった俺は。
絶望に暮れた。
そんな時に俺を助けてくれたのが涼子である。
「.....お前は本当に本当に愛おしいよ」
言いながらも俺は罪悪感を感じている。
もしかして俺は涼子を妹として認識しているのでは?、と。
思いながら沈黙する俺。
すると涼子が手を伸ばしてきた。
それから背伸びして俺の頭を撫でる。
「だ、だいじょうぶ。私が居るよ、い、居るから」
「.....そうだな。.....でももしお前まで死んだら俺はどうしたら良いんだろうな」
「そ、そんな事ない。死なない。.....私は貴方の側に居る」
死ぬ、が怖い。
家族がバラバラになった、死ぬ、という事が、妬ましい。
死ぬ、という事が。
思いながら俺は唇を噛んだ。
弱音は吐かないつもりだった。
だけどメルに裏切られて.....、俺はさらに絶望したのだ。
「待って、て」
「?.....どうしたんだ?涼子」
「さ、さっき取ったの」
「?」
その手に四葉のクローバーがクシャクシャになってあった。
だけど俺はそれを見た瞬間に涙が止まらなくなる。
優しい気持ちに包まれて。
それから俺は涼子から四葉のクローバーを受け取る。
何で俺達だけこんな目に遭っているのか。
「く、くるしいよ.....」
「ゴメン。でも今だけこうさせてくれ」
「ま、待って。あ、熱いから。じ、自律神経が乱れて体が.....」
「あ、すまん.....」
言いながら俺を見てくる涼子。
で、でも嬉しい。
そんなに喜んでくれて、と涼子は満面の笑顔になる。
俺はその姿を見ながら俺も笑顔になる。
「涼子。お前にお返ししないとな。何かしてほしい事はあるか」
「し、してほしい事.....?」
「そうだな。.....こんな大切な四葉のクローバーとか貰ったんだから」
「.....じゃ、じゃあほっぺにキス」
涼子は汗をかきながら真っ赤になる。
数秒間世界が止まった気がした。
今何つった?、と思いながら俺は瞬きする。
そして目を瞑る涼子を見た。
これは現実か!!!!?
「お、お前冗談だろ!!!!?」
「じょ、うだん、じゃない。.....わ、私はしてほしい。だって。何でもするって言った」
「それは確かにその通りだが.....お、俺はお前に何でキスを.....」
「ほ、ほっぺにちゅーぐらいなら」
バカな.....。
俺は次元を超越した考えが浮かぶ。
待て待て。
相手は障害を持っている。
つまり何か間違って言っている可能性もある。
それはいかん。
「幾らお前の望みでも.....」
だがそこまで言ってから駆け出して来た涼子。
それから俺の頬にキスをした。
俺はまさかの事態に目を丸くしてから鼻血が出そうになる。
な、な、な!!!?!
こやつ何をしている!?
「お、お前!?」
「えへ、えへへ、えへ。.....き、キスしちゃった」
「モジモジするな!?.....全く何考えてんの!?」
「だ、だって.....その。元一が何でもして良いって言った」
それは確かに言った。
しかしこれは予想外だ。
思いながら俺は頬を押さえて真っ赤になる。
これ以上無いぐらいに。
こ、こういうのって好き、な人達がするものだけど.....で、でも私はす、好きじゃ無いから、ね?が、外国ではハグしてキスがあるから、と慌てる涼子。
「.....お前な。確かに外国にはチークキスはあるかもしれないが.....!?」
「だ、だからその、チーク?キスした。あ、挨拶代わり」
「馬鹿野郎.....お前な。あくまでこの場所は日本だぞ」
「い、良いの。わ、私が満足しているの」
そ、それじゃ、じゃあね。
そう言いつつ口元に手を添えて嬉しそうに玄関に歩いて行く涼子。
それから鼻歌混じりで俺にまた手を振る。
俺はその姿を見ながら盛大に溜息を吐いた。
何か恥ずかしそうに入って行ったが.....全くアイツは。
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