アシスタントの新米小説家が新作のヒロイン案と称して色々なキャラクター設定を至近距離で披露してきて、協力するとは言ったもののちょっと照れるんですがどうしたらいいと思いますか?
第3話 アシスタントの新米小説家が後輩になるらしい
第3話 アシスタントの新米小説家が後輩になるらしい
「先生! 昨日はありがとうございました! そして今日も今日とてよろしくお願いします!」
「さあさあ! 本日お披露目する二つめのヒロイン案はこちら! じゃじゃじゃん! 『元陸上部だった先輩を慕い敬う後輩』です!」
「ええ、ええ、そうなんです。私の新作の小説の主人公は元陸上部なんです。でもケガをして引退したという設定なんです」
「それでもってその設定を活かすために、二つめのヒロイン案は陸上部にしてみた次第なわけです」
「ゆえに! 今の私はジャージ姿なのです。どうですか! 萌えますか!」
「別段萌えはしないですか。まあたしかにただ単にジャージですからね」
「萌え袖要素がプラスされたら強いですが、これから料理しますから袖もまくっていますし、若干のパワー不足は否めませんね」
「そうなんですよ、いま先生が私の隣に立ち、台所にいるのはですね、これから私とカレーを作ってもらうためなんです」
「今回のワンシーンは『文化祭でカレーを作ることになった陸上部。だがしかし料理できるのは後輩ちゃんくらい。少し不安な後輩ちゃんは元陸上部の先輩に味見をお願いする』っていうシーンです」
「元陸上部の先輩じゃなくて現陸上部の人に味見してもらった方がいい? やめてくださーい。リアルな正論を言わないでくださーい」
「たしかに小説にリアリティは大事ですけど、完全にリアルである必要はありませーん」
「ラノベの主人公の両親は海外に出張してるんでーす。ご都合主義なんでーす」
「ということで早速カレー作りに取りかかりましょう! あ、でも安心してください。先生の料理の腕がゼロナノメートルなのはわかっていますから」
「先生は隣に立っていてもらうだけで大丈夫です」
「少しくらい手伝う? いやいやいやいやダメですダメです。赤ちゃんに危ないことはさせられません」
「皮剥きくらいならできるですか? ……わかりました。具材を切るではなく皮剥きといったその謙虚さに免じて、赤ちゃんな先生にもお手伝いをお願いいたします」
「でもジャガイモは丸くて危ないので人参です。人参なら皮剥き機を上から下に引くだけなので大丈夫です。……大丈夫ですよね?」
「多分ですか……。正直不安ですけど、赤ちゃんの成長を見守るのも親の勤めですから、ここは先生を信じてお願いすることにします」
「それではクッキングスタート! あーんどアクション!」
「──はい! じゃあ先輩には人参の皮剥きをお願いします! 大丈夫っすか? 自分の指の皮剥いちゃダメっすよ?」
「そんなに見られたらやりにくい? いやだってめちゃくちゃ心配なんすもん! いつ先輩の指から肉汁──じゃなくて血が滴るか気が気じゃないっす!」
「……セーフ。大丈夫そうっすね。さすがに心配しすぎたっす。じゃあその調子でよろしくお願いします!」
「ちなみに先輩はなにカレーが好きっすか? ビーフ、チキン、ポーク、シーフード、キーマにレトルト、選べるとしたらどれがいいっすか?」
「レトルトはギャグっすよギャグ。ツッコミ待ちってやつっす」
「チキンっすか。いいっすね、あたしもチキンカレーが一番好きっす。鶏もも肉みると先輩のふくらはぎ思い出すんすよ」
「いや〜先輩のふくらはぎは引き締まってていいふくらはぎだったっすよ。歯応えがありそうで、見てるとお腹がすいちゃって困ったもんだったっす」
「──あ、人参の皮剥き終わったっすか。ありがとうございます」
「え? 切るのにも挑戦したいんすか? ん〜……いや〜〜それはちょっと〜〜〜……ねぇ」
「指切っちゃったら大変じゃないっすか。軽く切るくらいならマシっすけど、ざっくりいったら肉汁ブシャーーっすよ!」
「そんなことになったらもったいないじゃないっすか! 今から作るカレーの具材に先輩のお肉が追加されちゃうじゃないっすか! いやあたしとしては嬉しいっすけど──」
「え? ストップ? 待て待てですか? なんすかなんすか先輩──じゃなくて先生」
「怖い? ところどころ狂気がもれてる? 肉汁いうな?」
「いやいやいやいや、後輩ちゃんの想いの強さを考えたらこれくらいは愛のうちですよ」
「猟奇と暴食の罪に満ちている? 小説に出すにはギリギリライン?」
「まあたしかにカニバル系は表現的にあれではありますけど……」
「でも実際に食べてはいないですし、後輩ちゃんの食いしん坊ギャグってことでセーフになりませんかね?」
「ですよね! キャラとしては強いから表現の仕方に気をつければありですよね!」
「わかりました!じゃあ後輩ちゃんのキャラ設定は『元陸上部だった先輩を慕い敬いつつも猟奇的な食いしん坊ギャグをいう後輩』にグレードアップします!」
「よし! これで二つめのヒロイン案も固まりました! ありがとうございます!」
「あと一つヒロイン案があるのでそれも後日よろしくお願いします!」
「それじゃあ今日はこのまま一緒にカレーを作りましょう! ちなみお肉はチキンです! 私は別に先生のお肉は食べたくありませんのでご安心ください!」
「それじゃあレーッツ、クッキーーング!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。