アシスタントの新米小説家が新作のヒロイン案と称して色々なキャラクター設定を至近距離で披露してきて、協力するとは言ったもののちょっと照れるんですがどうしたらいいと思いますか?
第2話 アシスタントの新米小説家が幼馴染になるらしい
第2話 アシスタントの新米小説家が幼馴染になるらしい
「じゃじゃ〜ん! どうですか先生! 私のセーラー服姿は!」
「あれ? 思ってたより反応が薄いですね? 先生はセーラー服はお好みではない? もしやブレザー派ですか?」
「セーラー服もお好き。それはよかったです」
「どこからセーラー服出してきたか? そりゃあもちろんあのリュックの中からですよ。今日は先生にお願いをするつもりでしたので、ちゃんと準備をしてきました」
「ちなみに断られた時のことはなにも考えておりません!」
「さあ! ということで! 早速よろしくお願いします先生!」
「まず一つめのヒロイン案は『清楚でお淑やかだけどグイグイくる幼馴染』です! どうでしょう!」
「はい、若干盛りました。いえですね、編集さんに見せたのはこの子なんですが、その時はただの幼馴染、『無印幼馴染』だったんです。でもイマイチと言われたのでちょい盛りしてみました」
「性格も編集さんに見せた時から少し修正しています」
「清楚でお淑やかとグイグイのギャップがポイントですがどうでしょうか」
「ですよね! いいですよね! ギャップ萌えですよね! さすが先生! わかってらっしゃる!」
「──で、で、で。ただヒロインの設定を披露するだけではなくて、しっかりと性格とか喋り方も固めていきたいので、小説のワンシーンを一緒に演じていただきたいのですがお願いできますか?」
「ああ、いえいえ、先生はそこに座っているだけで大丈夫です。自然体で、いつものようにしていただければそれで問題ありません」
「はい、ありがとうございます。ではこちら──テレテレッテレーーン、数学の教科書とノートォ〜〜」
「え? 勉強するのかって? はい、します。今回のワンシーンは主人公と幼馴染が主人公の部屋で向かいあって一緒にお勉強するシーンですので」
「たしかに、たしかに座っているだけでいいとは言いました。言いましたがまあまあまあ。前言は撤回されることもあります。大丈夫です、そんながっつりお勉強するわけではありませんから」
「ではノートを開き、教科書を開き、そして──はい先生、シャーペンどうぞ」
「シャーペン握るの久しぶりじゃないですか? 小説書くのもパソコンですからね」
「それじゃあ始めます。『清楚でお淑やかだけどグイグイくる幼馴染編』スタート!」
「──どう? どこかわからないところはあるかしら?」
「全部? もう、ダメよ、少しは自分で考えないと。今度赤点取ったら留年するかもしれないんでしょう?」
「ここはね、この数式をそれぞれ括弧の中の数字に掛けて、そのあと同類項をまとめて──って、ちゃんと聞いてる?」
「そう? なんだか頭から煙がでているような気もするけど……。でもそうね、試験勉強を始めてからだいぶ時間もたったし、少し休憩にしましょうか」
「私ね、クッキーを作ってきたの。勉強をするとお腹が空くと思って。──はい、あなたが小さいころから大好きなチョコチップクッキー。ほら、あーん」
「? どうしたの? 食べないの? そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない。私達、幼馴染なんだから」
「美味しい? ──そう、よかった。私ね、毎日作っているのよ。チョコチップクッキー。いつでもあなたに食べてもらえるように」
「うふふ、いつでも言ってね。カバンにも毎日入れているから、学校でも平気よ。もしおうちにいる時に食べたくなったら連絡して。すぐに持っていくわ。ふふ」
「朝でも昼でも夜でも──」
「え? ちょっと待ったですか? はい、なんでしょう先生」
「怖い? なにがですか? え? この幼馴染が怖い?」
「いやいやいやいや、なーんてこと言うんですか先生。こんなにも清楚でお淑やかじゃないですか。毎日想い人のためにチョコチップクッキー作ってる女の子なんてそうそういませんよ」
「ヤンデレ感がすごい? グイグイっていうかなんかヤバイ? チョコチップクッキーになんか混ざってそう?」
「先生ひどい! 鬼! 悪魔! 乙女の敵!」
「でも、まあたしかに言われてみれば『朝でも昼でも夜でも』のくだりは若干怖い気がしなくもないようなそうでもないような……」
「でもキャラとしては強くていい、ですか?」
「──たしかに! ヤンデレは定番でありながら個性際立つヒットメーカー! 打線に一人は欲しいところ!」
「わかりました! じゃあ『清楚でお淑やかだけどグイグイくる幼馴染』じゃなくて『清楚でお淑やかだけどヤンデレな幼馴染』でどうでしょうか!」
「はい! ありがとうございます! いいと思う頂戴いたしました!」
「じゃあ一つめのヒロイン案が採用された場合はその方向で進めます!」
「いや〜さすが先生、助かります。私、編集さんに言われたんですが、設定とキャラの性格が微妙にズレる傾向があるみたいで、そこの修正も課題なんですよね」
「でも今回は先生にそこも指摘してもらえて修正できるので助かります!」
「じゃあ続いて二つめのヒロイン案を──、と思いましたけど今日はもういい時間なのでおいとまいたします! 先生! ありがとうございました!」
「また明日もよろしくお願いします! お疲れさまでした!」
「へ? 待てって? ──あ! セーラー服のままでした! 忘れてました! ありがとうございます! 着替えて帰ります!」
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