アシスタントの新米小説家が新作のヒロイン案と称して色々なキャラクター設定を至近距離で披露してきて、協力するとは言ったもののちょっと照れるんですがどうしたらいいと思いますか?

みけきゃっと

第1話 アシスタントの新米小説家が悩んでいるらしい

「せ〜んせっ! 今日もお疲れさまでした! さあさあさあさあ、どうぞこちらへ! 私特製世界一美味しいオムライスがお待ちですよ!」


「え? いつもすまないねって? いいんですいいんです! 先生の生活能力の無さをサポートするのが私のお仕事ですから!」


「いや〜〜それにしても先生の生活能力ゼロっぷりはほんとすごいですよね! 編集さんが家事ができるアシスタントを募集する理由がわかりますよ! 私最初ここに来たとき何もなさすぎてビックリしましたから!」


「私ここにくるまではゴミ屋敷をイメージしてたんです。足の踏み場もなく天井高くまでゴミ袋が積まれたよくみるやつ」


「でも実際はそれと真逆! なんっっっっにもないっ! THE・ミニマリスト! テーブルと布団! そしてパソコン! もう一部屋は空っぽのTHE・新居! いやいやいや、何これ? どゆこと?? ってなりましたから」


「あれなんですよね? デビューする前はゴミ屋敷で、デビューが決まってから一念発起して片付けを始めたら『全部捨てちまえ!』ってなって、勢いで全部捨てたんですよね? 編集さんがそう言ってました」


「まあそんな感じって……極端! ゼロか百! でもどっちにしろ健康的な生活はできてない! どっちにしろダメ!」


「一人暮らしで今までどうやって生きてきたのか不思議で仕方がない!」


「──って、先生の生活能力皆無話しはよくてですね、食べましょう食べましょうオムライスを! 温かいご飯は温かいうちに食べるのがご飯さんへの礼儀ですから! では! いただきま〜す!」


「──うん! 美味しい! 我ながらあっぱれ! どうですか先生? 美味しいですか?」


「はいっ! 美味しいいただきました! ありがとうございます! さすが私、オムライスを作らせたら並ぶものなし」


「まあケチャップでハートも書いていなければ、萌え萌えキュンパワーも補充されていないので、先生が大好きなメイド喫茶仕様ではありませんが」


「え? 別にメイド喫茶が大好きなわけじゃない? というか行ったことすらない?」


「いやいやいやいや、な〜〜にをおっしゃいますやら。先生の小説の舞台メイド喫茶じゃないですか。メイド喫茶に行ったことのない人があれほどの熱量でメイド喫茶について語れるとはとてもとても」


「本当に行ったことがない? 一度も? 一ミリも? 一ミクロンも?」


「……まじですか。それなのにあれほどの小説を……いや、でもそれくらい妄そ──じゃなくて想像力が豊かじゃないと小説家として売れるのは難しいともいえるのか……」


「え? いま妄想力って言おうとしたって? まさかまさか、聞き間違いですよ聞き間違い。きっとお疲れなんです。あとでお肩をお揉みいたしますね」


「それでですね先生、話しは変わりますが小説の進捗状況はいかがでしょうか。そろそろ締め切りも近づいていまして、編集さんからも進捗状況を確認しておくようにと言われておりまして」


「はい……はい……なるほど。わかりました、ありがとうございます。順調そうでよかったです。編集さんにもそう伝えておきます」


「いえいえ、お礼なんてそんな。私も勉強になっていますから」


「ただ──もし可能であれば、お礼のかわりにといってはあれなんですが、実は先生にひとつお願いしたいことがありまして……」


「うん、いいよって──いやいやいや、先生先生、まずは話しを聞きましょうよ。どうするんですか、もし私が先生の命を狙う暗殺者で『御命を頂戴いたす』とか言い出したら」


「その時はお金でなんとかする? まあ私もお金がもらえるのであれば、依頼主には『任務は達成した』と伝えますけど」


「って、そうじゃなくてですね、私のお願いというのは、私の新作づくりに手を貸していただけませんかっていうお話しなんです」


「いや実はですね、新作のヒロインをどうするかで悩んでいまして」


「やっぱりヒロインって大事じゃないですか。魅力的なヒロインがいてこそのライトノベル」


「特に私が書いているジャンル、ラブコメでは主人公と同じくらい最重要キャラと言っても過言ではないわけでして」


「ところがどっこい、このあいだ編集さんに書き始めた新作を見せたところ『ヒロインがイマイチ。2点』って言われまして」


「2点て! もういっそ0点の方がよかった! その2点はどこからきた!」


「あっ、すみません、取り乱しました。まあそんなわけでして、魅力的なキャラクターを生み出せる先生にご協力をお願いできたらなと思った次第です。はい」


「……いいんですか? 本当に? 自分から言い出しておいてあれですけど、先生も執筆中ですし……」


「ありがとうございます。先生にご協力いただくからには、絶対にいい小説を書いてみせます」


「よし! そうと決まれば早速お願いしちゃいます! オムライスを食べ終わったらまずは一つめのヒロイン案をお見せします! よろしくお願いします!

先生!」

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