6.王という立場
次から次へと書類を持って来る大臣に、
「今日中にコレ全部目を通すの無理なんだけど!!?」
と、王は大声を上げる。
やる事が多すぎて、イロイロと手が回らない状態。
折角、今日もカーネリアンの空は晴れ渡り、気持ちのいい風が吹いているのに、王は仕事でてんてこまい。
「昼食会はどうなさいますか?」
「え? あ、えぇっと・・・・・・キャンセルできるならキャンセルで」
「畏まりました」
と、ペコリと頭を下げて出て行く大臣に、
「あ! 昼食会ってどこの国の王とだっけ!?」
と、尋ねるが、既に、部屋を出て行った後で、大臣は聞こえなかったようだ。
大きな溜息を吐く王。
休んでいる暇はないと、書類に印を押しながら、王は、別の書類に目を通して行く。
そこへ、ノックもせずに入って来たのは・・・・・・
「パパ! アタシの誕生日に大きなクマのヌイグルミ買ってくれるよね?」
と、フリフリのドレスを着た小さな女の子。この国のお姫様だ。
「おはよう、リンクス、よく来たね。でもパパは忙しいから、ママと遊んでてくれるかな? それともママも忙しそう?」
「あのね、ママがパパがいいならいいよって言ったんだもん!」
「何の話?」
「だからクマのヌイグルミ!」
「あー・・・・・・それなら・・・・・・ママに聞いてごらんよ、ママがいいって言うならいいんじゃない?」
書類を見ながら、そう答えると、
「そういうトコ、嫌われるよ?」
と、言われて、王が顔を上げて、書類の山から顔を出して見ると、リンクスを抱き上げたフックス。その隣にはスカイの姿も。
「おにいちゃん! どこでねんねしてたの? ベッドにいなかったでしょ? この人だぁれ?」
リンクスはスカイを見て問う。
「この人はオレの友達」
と、フックスが言うので、スカイは、友達なの!?と、ちょっとビックリした顏になるが、リンクスが、フーンと頷きながら、スカイをジィーッと見つめて来るので、苦笑いで、
「よろしく」
と、挨拶してみるが、完全無視される。キョーダイ揃って腹立つわと、スカイがムッとした顏になる。
「ねぇ、おにいちゃん、一緒に遊べる?」
「おにいちゃん、忙しいんだ、ごめんね、リンクス」
「えー?」
と、不貞腐れるリンクスに、フックスは、何もない手の中から飴玉を出して見せた。
「いい子にしてたら、おにいちゃんが後でもっといい物を出してあげるよ。何がいいかな? クッキー? マカロン? ケーキかな?」
「ケーキ!! 苺イッパイの!!」
「わかった、じゃぁ苺のケーキ、後で出してあげるから、あっちでママと遊んでおいで」
「ハーイ!!」
と、フックスからもらった飴を口の中に入れて、笑顔で、バイバイと手を振りながら、走って行くリンクスに、バイバイと、手を振り返すフックス。
「妹の扱いがうまいね、お前はホントにイイおにいちゃんだ」
王は、そう言った後、
「で? 戻って来たって事は何かあった? 解決した訳じゃないだろう?」
と、フックスとスカイが戻って来た理由を聞く。
「その前にさ、リンクスへの態度、もう少し考えなよ。小さくても、結構、イロイロと考えてるし、理解してるんだよ? 仕事が忙しいのはわかるけどさ」
おい、今はやめろよと、シンバが、フックスの腕を軽く引っ張ったが、フックスは不満を我慢しないタイプのようだ。
「嫌われるのはパパだからいいけどね。ああやって、パパパパって言って来てくれるのは、今だけだよ? アイツ、オレの事も懐いて来てくれるけど、直ぐに、ウザイ、ムカツク、触んないで、バカなの?って言うようになるよ? 女の子ってそういうもんだからね?」
なんて言うから、一体、どんな女の子と接して来たんだ?と、スカイは苦笑いの表情が止まない。
「だな」
と、納得の王にも、納得すんのかよ!?と、スカイは苦笑いの顔がフリーズする。でも、
「反省する。僕が悪かった。ついつい忙しくなると、後回しにしちゃってね。僕の悪いトコだよね」
そう言って、すまないと頭を下げる王に、スカイは、ちょっと胸打たれるものを感じた。
もっと親とか、ましてや王となる者は、人に頭を下げないものだと思っていたし、ましてや、フックスの言い分は、わからなくはないが、仕事を優先するのは当然のような気もして、謝罪する言葉など必要ないとも言えるし、それに親が子供に対して、頭を下げるなんて、想像もしてなかったと、スカイは、
「・・・・・・変な王様」
と、呟く。
「で? お前達の方はどうだったんだ?」
「セルトさんが、シンバくんはシャークが連れて行ったんじゃないかって言いだして、サードニックスの船がいる方へ飛んで行けば、シャークの乗ってる船に会えるかもって言いだしてね、飛んで行ったんだけど、船は一艘もなかった。サードニックスに着いた時には、既に、ギャングが来た後みたいで、で、そのギャング連中を連れて来たんだ。カーネリアンで裁きを受けさせようって、セルトさんが言うから。で、ソイツ等は、騎士達に渡して来た。多分、一応、牢屋に入れとくんじゃないかな? 騎士隊長がいなかったから、どうするかまでは聞けなかったし」
「そうか、わかった。他に言う事は?」
そう聞かれ、フックスは、チラッとスカイを見る。
キャプテン・サードニックスが亡くなった事は、言う必要はないかと、フックスは、
「特に何も」
そう答えた。
「そうか。じゃぁ、引き続き、シンバくんの捜索を宜しく頼む」
それだけ言うと、王は、また書類に目を通して行く。
フックスは、小さな溜息を吐き、スカイと一緒に王の部屋を出て行く。部屋を出たトコで、
「自分は何にもしない癖に」
と、ぼやくフックス。
「まぁ、忙しいんじゃねぇの? 王様だし?」
と、宥めるスカイ。
「かもね。でもさ、忙しいって言っても、もっと、オレ達を気遣う台詞を言ってくれても良くない?」
「例えば?」
「疲れただろう? とか、よく頑張ったね! とか。報告だけ聞いて、直ぐ次の話だもんな」
「でも、謝る時は謝ってるし」
「謝る? あぁ、リンクスへの態度ね。それくらい謝ってくんないと! 育児は母親だけがするもんじゃないし!」
「そういえば、そのリンクス? って、お前の妹?」
「うん」
「シンバと同じくらいの子だな。ていうか、意外」
「意外?」
「お前が妹想いって事が」
「そう? 妹の事は大事にするようにって・・・・・・小さい頃からそう言われてるし・・・・・・」
そう言われたのは父親からだったと思い出し、
「なのに自分は全然大事にしてない!」
と、突然、怒った声を出すから、スカイは、何か地雷だったか?と、思う。
「とりあえず、急いで戻るか。サードニックスの船に」
スカイがそう言った時、向こうから、大きな白い狼が駆けて来て、フックスに飛び掛かり、フックスは後ろに引っくり返るから、スカイは、
「おい!? 嘘だろ!!? なんだよ!!? なんでこんなトコに獣が!!? おい誰か!!? 大丈夫か!!? おい!!? おい? 大丈夫なのか…?」
大声を出していたが、直ぐにフックスと大きな狼がじゃれてるだけだと気付いて、眉間に皺を寄せた。
「アリオト、くすぐったいよ」
そう言いながら、大きなふわふわのシッポをブンブン振って、ベロベロ舐めまくる白い狼のアリオトを、フックスも笑顔で、抱き締めながら起き上がる。
「アリオト? ってこのデカい犬の名前?」
「犬じゃなくて狼。7匹キョーダイなんだアリオトは。ドゥーベ、メラク、フェクダ、メグレズ、ミザール、ベネトナシュ、そしてアリオト。でもオレに一番懐いているのはナシュ」
「ナシュ?」
「ベネトナシュのナシュ!」
「ソイツはどこに?」
「ナシュは僕の言いつけで、他のキョーダイ達と一緒に裏庭にいると思う。でもアリオトは…」
ツナ騎士隊長に懐いているんだと言おうとした所で、
「戻ってたんですね、王子」
と、ツナが現れた。アリオトは、さっきまでフックスにデレデレの顔で甘えていたのに、急に真顔で、ツナの真横にピシッと立つ。
「うん、ついさっきね。サードニックスを襲ったギャングを騎士に渡したんだけど、ツナ騎士隊長がいなかったから・・・・・・」
「そうですか、仮眠中でした。後で確認に行きます」
「ツナ騎士隊長も、どこか行ってたんじゃないの?」
「いえ?」
「ずっと城にいた?」
「いました」
「ホント?」
「本当です」
「それなら・・・・・・いいけど・・・・・・」
「王子は、昨夜、寝ておられないんですか?」
「寝てたよ!!」
と、横から大声を上げたのはスカイ。
「寝てないのはオイラ!! ずっと操縦してたから!! コイツは何にもしないで寝てた!! 寝てただけ!! もしくはゲームしてただけ!! オイラが夜明けだって言っても夜明けの空さえ見ようともせず寝てたから!!」
スカイがそう言うので、ツナは頷き、
「それなら良かったです、寝てないと疲れますからね。せめて仮眠くらいは必要です」
と、言うので、
「ハッ! ずっと操縦してたオイラへの労いはナシかよ」
と、スカイは嫌味で呟く。
「では、失礼します」
ツナがペコリと頭を下げて、アリオトと行こうとするので、
「あのね!」
と、フックスが呼び止め、ツナとアリオトは足を止め、フックスを見る。
「あのね・・・・・・後ね・・・・・・」
「はい」
「後、サードニックスを襲ったギャングを倒したのはフォックステイルだって聞いたんだけど・・・・・・」
「フォックステイル・・・・・・? ですか・・・・・・?」
「うん。パパには言ってない。どうせフォックステイルは架空の人物だって、バカにするだろうから」
「そうですか・・・・・・でもフォックステイルがギャングを倒したと言っているのは、サードニックスの賊達なんでしょう? 賊の言う事ですから信じてはいけませんよ」
そりゃどういう意味だ!?と、スカイはツナを睨む。
「オレも実際に見た」
そうなの!?と、スカイは驚いてフックスを見る。
「サードニックスのみんなが、キャプテンの部屋に行ってる間に、オレ、場違いだなって思って、一旦、船のデッキに出たんだ。そしたら、フォックステイルらしき男が船の先端から飛び降りたんだ。その人の腰にはフォックステイルが付いてたし」
そう言ったフックスに、
「いや、でも、王子、それだけでは・・・・・・」
と、困ったように言うツナ。
「だよね、それだけでは、証拠にはならないよね。ごめん、聞き流して。オレの戯言だから。だからパパにも話さなかったから」
と、フックスは歩き出す。ツナは頭を下げ、スカイが、待てよとフックスを追い駆けた。
ツナは頭を上げて、王の間へアリオトと歩き出すのを、フックスは足を止め、振り向いて見る。
「似てるんだよなぁ、あの時のフォックステイルの後姿と・・・・・・」
と、呟くから、
「何? なんかあんの? あの人とフォックステイル」
と、スカイが聞くが、何もと、フックスは首を振り、
「オレはまだセルトさんの線も疑ってるから」
なんて言うから、スカイは、
「セルト? セルトがどうかしたのか? 疑ってるって何を?」
と、フックスにしつこく問いかける。
勿論、背を見られていたのを、ツナはわかっているからこそ、何事もない感じで歩き続け、王の部屋の前で深呼吸。
フックスの視線を感じながら、何もない感じで歩いて来た事に、深呼吸なのだ。
王子の洞察力はあなどれないなぁと、冷や汗もんだ。
そして、ドアをノックし、王の返事で、アリオトをドアの前で待機させて、中に入り、
「只今戻りました」
と、ペコリと頭を下げるツナ。王は、
「誰もいないよ、僕とツナだけだから、普通にしてていい」
と、書類に目を通しながら言う。ツナは王に近付いて、
「徹夜?」
そう聞いた。
「うん、なんでわかった? 顏ヤバイ?」
「夜食の皿が置いてあるし、服が昨日と同じ」
「あぁ、後でシャワー浴びて、着替えなきゃ。ツナもだろ?」
「俺はまた直ぐに行かなきゃならねぇし。とりあえず、イロイロと報告に」
「うん」
「シンバくんを見つけた。案の定、シャークと一緒にいたよ。包帯だらけになってたけど」
そう言った。
「包帯だらけ? 怪我をしてるの?」
王は書類から目を離し、ツナを見て聞く。
「どうかな、元気そうではある。掠り傷程度なのかもな」
「掠り傷?」
「それからシャークは、恐らくカルサイト一味の船を奪ったと思われる。シロギスがいたから」
「そう、シロギスが。覚えてないな、どんな賊だっけ?」
「大した賊じゃねぇよ。かなり弱い一味だと思う。懸賞金すら付いてない筈だ、賞金首の奴は1人もいない一味だろうな」
「そんな小さな賊をシャークはなんで狙ったんだろう? シャークなら、もっと強い賊を狙ってもいいのに」
「たまたま・・・・・・かな・・・・・・? 近くにいたのが、たまたまソイツ等だったとか・・・・・・」
「うーん・・・・・・」
なんとなく納得できないのだろう、王は、唸り出して、考え込み始める。だが、もっと難しい顔をしているのはツナの方だ。それに気付いた王が、
「どうかした?」
と、聞いた。
「え?」
「いや、なんか、悩み事?」
「あぁ、いや、シンバくんを奪えなかったから」
「なんだ、そんな事か。しょうがないよ、相手はシャークだ。ん? あれ? でも助けれなかったじゃなくて、奪えなかった? それってどういう事?」
「あー、いや、言い方悪かったな。そう、助けれなかった・・・・・・」
そう言った後、そうじゃないなと、
「助けれなかったんじゃなくて、偽物フォックステイルだと思われた。俺はシャークに相手にもされなかったし、シンバくんには、俺じゃなくて、シャークの方を選ばれた」
物凄く落ち込んだ顏で言うから、王は思わず吹いた。
「笑う事ないだろう!?」
「いや、だって、ツナは正真正銘の本物のフォックステイルだ。なのに偽物と思われたからって、そんなショック受けるなんてさ、本物が」
「本物だからショックなんだよ。お前にはわからないよな。悩んだ事ないだろ、フォックステイルになれない自分に!」
「常にだったよ」
王はそう言って、
「僕は常に思ってた。僕じゃダメなんだ、やっぱりフォックステイルはフックスじゃないとダメなんだ、僕じゃできない、僕じゃなれない、僕じゃ無理だ、常にそう思ってたよ。だから、ツナの気持ちに笑ったんだ。まるで僕だなって」
と、笑っている。笑いごとじゃないんだよと、ツナは溜息。
「でも、お前はフォックステイルだった。完璧な程に。苦悩はあったかもしれないけど」
「バカだなぁ、ツナだって、僕に言わせたら本物のフォックステイルだよ」
「賊に偽物と認識されたんだぞ!!」
「いいんじゃない? それがフォックステイルでしょ?」
「え?」
「本物とか偽物とか、よくわからない存在でしょ? フォックステイルって。偽物と思われてもいいじゃない」
「そう言われたら…何も言い返せないけど…」
「それにフォックステイルをやるのも、かなりブランクあるし、しかもツナは裏方だったから表舞台で活躍する事を急にやる事になったんだし、うまくいかないって思う事になってもしょうがない。ツナをサポートする裏方達も、急な事に、うまくやれてないってのもあるだろうしね、だから、しょうがないよ」
「しょうがないか・・・・・・自分の事なら、そう思えるか?」
「思えない」
そう言って笑う王に、そうだろ?と、ツナも笑う。
「まぁ、今更の苦悩なんて、どうでもいいとして、あのラガルトが所有している島はギャング共しかいなかった。ラガルトの姿もなければ、ラビもバニの姿もなかった」
「そう、じゃぁ、別の場所に雲隠れしてるって事かな。革命家だったから、世界の彼方此方に居場所を持ってそうだよね。捕らえたギャング達に聞くしかないか」
「それからもう1つ、報告! サードニックスのガムパスが死んだ」
「え?」
「フックス王子から聞いてないか?」
「聞いてない」
「そうか、言う必要ないと思ったのかもな。サードニックスの船は、アンダークラウドへ向かってる筈だ。セルトもサードニックスの船に残ってるんだろうな、さっきローカでフックス王子と、あのスカイって言う飛行機乗りに会ったが、セルトがいなかった」
「・・・・・・」
黙り込んで、何か考え事を始める王に、
「シャークの耳にも入ってる情報だと思う。だからシャークもアンダークラウドへ向かうだろうな。俺も行った方がいいんだろうが、フォックステイルとして行くべきか?」
そう尋ねた。
そのままシャークを追わずに、戻って来たのは、それを聞く為かと、
「いや、カーネリアンの騎士として出動してくれ」
と、王は、そう言って、
「全員だ。そこにいる全員の賊を捕まえて来てくれ」
などと言いだした。
「全員!? 無茶だろ、何万といるぞ? ガムパスが死んだんだ、恐らく、サードニックスを狙う賊達が集まってる筈だ。一艘の船に何人の賊が乗ってると思う? 多いと100人や200人はいるんだぞ? 少ないと10人程度だろうが・・・・・・」
「ツナ、僕は無茶も承知で言ってるんだ。全員、捕まえて、カーネリアンに連れて来てくれ。勿論、シャークも」
「本気で言ってるのか?」
「勿論」
「大勢の賊だけでなく、あのシャーク・アレキサンドライトを捕まえて来いって?」
「無茶でも、できない事はないでしょ、カモメやパンダと相談して、やってみせてよ、フォックステイル!」
「ハァ!? フォックステイルとして行く訳じゃなく、騎士として行くんだろ!?」
「うん、だから王の命令。なのに、できないなんて言うの?」
嘘だろ?と、ここで権力を出してくるのかよと、ツナは黙り込む。
「ギャング達の取り調べをシカにお願いするから、心置きなく、騎士を全員連れて行っていいよ。人の心を掴むのは、シカの方が得意だしね」
と、ニッコリ笑う王に、もう何も反論はできない。
「わかりました」
そう答えるしかない。そして、頭を下げて、部屋を出て、大きな溜息。
向こうから歩いて来るのはシカ。
「もう王に呼ばれたのか?」
そう聞いたツナに、クエスチョン顏のシカ。
ツナとシカの間で、ずっとツナを待っていたアリオトは、2人の顔を見上げる。
「なんだ、王の所へ来たんじゃないのか?」
「王の所へ来たんだけど、呼ばれた訳じゃなくて、報告に」
「報告? 今、俺が報告した以外に報告する事があるのか?」
「うん、今さっき得た情報。エル・ラガルトの居場所を突き止めた」
「凄いじゃないか、どこにいやがるんだ?」
「ジェイドで拘束されてたエル・ラガルトを釈放した奴を調べたら、保釈金を払った奴がいてね。それは相当の額。しかも王の保釈の許可が得れたって事だろ?」
「誰なんだ、その保釈金を払った奴」
「ジェイド王の妻の実家」
「は?」
「つまり、ジェイド王の妻の国の王って訳」
「マジかよ」
「ジェイド王は、我等がネイン妃様の兄だ」
「だな」
「エル・ラガルトを保釈したって事は・・・・・・」
シカから話を出される前に、
「ないだろ、ないよ、シカ。ジェイドはカーネリアンと同盟を結んでる。相当の金額が払われたから、しょうがなしの保釈だったんだろうよ」
と、ツナは否定した。
「だとしたら、相当、奥様に尻に敷かれた旦那って訳だ、ジェイド王は」
と、シカは、保釈させたのは、妃の方かも発言。それは、妃の方は革命家ラガルトの方に忠誠を誓っていると言う事。
「とりあえず、レオンくんにね、連絡とってみた」
「レオン? ジェイドの騎士隊長の?」
「そう」
「大丈夫なのか? アイツはジェイドに忠誠誓ってんだろ?」
「そうだけど、レオンくんは、我等が王と、腹違いの兄弟だよ? それに忠誠を誓っているのは王であって、妃にではないでしょ」
「あぁ、まぁ・・・・・・」
「だからレオンくんと話した事を王に報告に来たんだ。ツナは? これからどうするの?」
「あぁ、俺は、王の命令で、カモメとパンダと合流して、後、騎士達を全員集合させて、サードニックス及び、他の賊連中、全員をとっ捕まえに行く」
「へぇ。じゃぁ、この国に賊が一杯来るって事? そんなに罪人を集めてどうするんだろう? この国は罪人を裁く法もないのに。王は何を考えて、その決断を?」
「知らねぇよ、ヘラッと、できない事はないでしょってさ」
「まぁ、ツナくんなら、できない事はないと思うけどさ」
「そう思うか!? 無理あるだろ!! 大体、どういう乗り物で出動すりゃいいんだ!? 騎士全員を引き連れて!? そんでもって、全員を捕まえるんだぞ!?」
「まぁ乗れるだけ乗れる飛行機で行けばいいんじゃない? 帰りは、全員が船を持ってんだからさ、それを乗っ取ればいいでしょ、幸いうちは島国だから、飛行船が着水する場所はイッパイある」
「簡単に言うなよ」
と、ツナは、舌打ちをしながら、シカの横を通り過ぎて行くから、アリオトも、シカを見ながら、ツナを追いかける。
シカはそんなアリオトに笑顔でバイバイと手を振った後、王の部屋のドアをノック。
王からの返事が聞こえ、中へ入り、
「ラガルトの居場所を突き止めました」
そう言った。
「うん、ほぼほぼ聞こえてた。ラガルトの居場所がわかったなら、ギャング達に聞き出す必要はない。それと、ジェイドの妃を責める事はナシで行こう」
「そうですね、ジェイドとの関係をこじらせたくない」
「なんとなく、ラガルトの居場所を突き止めたって事で」
「そうですね、なんとなく、それがいいかと思います」
「革命家が終われば、革命家を支持する連中も言わずと知れて終了する」
「そうですね、何事もトップの首を跳ねれば、全て終わる」
「よし! もう少しで書類の山もひと段落するから、その後はシャワーを浴びて、着替えて来る。そしたら出発しよう」
「そうですね・・・・・・どこへ?」
「どこって、ラガルトがいるトコ。僕とシカの2人で行くしかないでしょ?」
「嘘でしょ?」
「だってツナも騎士達も、カモメもパンダも、賊達を捕まえる為にいなくなるしね。僕とシカしかいない」
「そろそろ医師としての仕事に戻りたいんだけど?」
「冗談でしょ、フォックステイル」
「いや、だって、ボクは・・・・・・」
「王である僕の命令なんだけど」
「え!?」
「ん? で? ボクは? その後の台詞はなに? フォックステイル」
そう言われ、権力を出すの!?と、シカは王を見て、
「異論はありません」
と、答えるしかなく。
王はニッコリ笑い、
「じゃぁ、書類を切りのいいトコまで片付けちゃうから、その間、医師としての仕事してていいよ」
なんて言うから、シカは頷きながら、
「それはありがとうございます」
と、嫌味で頭を下げた。
「王の特権だよねぇ。リーダーって立場だとこうは行かない」
鼻歌交じりにそう言った王に、まさかフォックステイルのリーダーをやってた頃、余り言う事を聞かなかった仕返しな訳ないよねぇ!?と、シカは苦笑い。
「さて、クライマックスまで、もう少しだ」
王のその呟きは、聞こえず、鼻歌で、ご機嫌だなぁとシカは頭を下げて、部屋を出て行った。
果たして、王は、何を考えているのか――。
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