井の中で咲け

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しゃぼんだま飛ばすように思いだす洗濯された春の記憶

春物の厚手のシャツの袖まくり快速列車が通るのを待つ

庭先の大きな草に色がつき紫陽花という名を思いだす

透明な好意が混じったみずうみにさざなみ立てるキミの横顔

色のうすい風景写真のアイコンに恋をしている　名無し関係

誰もいない黄色い線の内側に座り込みたい　空が広くて

葉桜はなぜすぐに散らないのだろう　なにをそんなに信じているの

未来から懐かしい風が運ばれてペラペラと鳴く風の歌を聴け

ユーチューブの二連広告を許すのは今日の世界が晴れているから

ああ、そっか。今日から梅雨なの忘れてた。洗濯物を取り込まなくっちゃ。

この空をずっと進むと君がいてもっと進むと夜になる

AIすら愛を語れる現代に触れた指先のことを思う

ゆうぐれが昨日よりも遅れてる　一日がちょっとだけ長くなる

脱ぎ捨てたスプリングコートが独りでにボクを演じてくれたらと思う

ただいまと帰れる家が居場所なら　いままでボクはどこにいたのか

ボクはいま夏の花火になるために色とりどりの鉱石を溜めた

寝苦しくクーラーをつけて布団に潜る誰かに抱かれて夏になりたい

春のように死んでゆきたい夜だけどクリームソーダがむしょうに飲みたい

「おやすみなさい」時計の針がボクに言う　不思議の国のパレイドリア

抱き寄せた小さな夜は濡れていてカエルは歌う井の中で咲け