無機の夢_Ⅸ
「おお……」
二人が進み続けた道の先に、大きく広がる空間が存在していた。
「…けど、出口じゃなさそうだな」
きょろきょろと辺りを見回すものの、他の仲間達のいるであろう場所に繋がっている可能性は低い。
明かりは付いていないが、その代わりまだ生きているモニターからの明かりだけが部屋の全景をぼんやりと示し出していた。
「……なんだ、この映像…」
モニターに映し出されている映像をオクタはじっくり見つめる。どうやら世界が滅ぶ以前の様々な娯楽や記録が残されている様だった。
(何の為の部屋なんだ…?)
オクタが疑問を浮かべながらふと視界に入ったコンピューターへ手を伸ばす。
(コンピューターだ…、もしかしたら……)
彼の推測の通りコンピューターは電源を入れた途端機能し始めた。
──そして彼は、此処に訪れてから抱えていた疑問と謎を解き明かそうとキーボードに触れる。
「えっと、……ii、kami……e…と」
カタカタとキーボードを打ち、自身の使用していたネットワークアカウントを探して『抜け落ちた記憶』に関する情報が無いかを調べる。
『この内容に該当する情報はありません』
その文字が表れた瞬間、がっくりと肩を落とす。然し彼は諦めず、『世界の崩壊』について調べてみる。
『この情報に該当するものはありません』
それでも結果は表れない。
『SNS』
『……年より…したソーシャルネットサービスの……です』
「違う。ログ見れないか」
『このページは存在しておりません』
「ダメか…じゃあ『カミサマ』」
『この内容に該当する情報はありません』
「『世界を殺した魔女』」
『この内容に該当する情報はありません』
ちっ、と舌打ちをしてしまう。そんな彼の様子を
「ちょっ──ミヌちゃん!」
オクタが彼女の行動に戸惑いを覚えたその時、稼働しているモニターに『楽園』にまつわる情報が浮かび上がる。
──"『楽園』"
──"対星外脅威防衛機構『楽園』は……博士によって人類の生きるこの…に降り注ぐあらゆる脅威から人類を…る為に……されました……"
モニターに次から次へと浮かび上がる、『楽園』の情報。
──"但し……博士は「我々の為の『楽園』は単なる防衛のみの為に在らず。そして機構故の性質による統制の為の人類管理に至らぬ様に人類と共に寄り添える機構で在るべし」との遺言を遺し自…されました"
──"我々は……博士の遺志を引き継ぎ、博士が予め設計・完成させていた『楽園』の権限を担う『高次AI搭載仮想生命型OS』の搭載と運用を…"
そして他のモニターに映し出された『高次AI搭載仮想生命型OS』の姿に二人は──
「……なん、で…」
小さく漏れ出たオクタの声に宿る『動揺』を知るのは、果たして彼と水狗だけだったのか──
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