真相_Ⅲ

──そして訪れた「運命の日」。俺とシュシュちゃんは『彼』……『青年』に会った。


ある意味彼とは初顔合わせだ。…けど同時にこれが最後の顔合わせでもあった。



「……だから……なんだよ!」

『でも僕は君達とはもう…』

「正直、うざいんですよね~♪だから……」

俺達は当然の如く口論になって、俺とシュシュちゃん、そして『彼』の対立図だった。


どんなに続いても続いても止まない争いは、俺の中の他責と他害の意思を過激に立たせ、『青年』へ確かに向かった。






──ドスッ











──重い音が周囲に響く。

『っぐう……』

『青年』が呻き声を上げる。周囲に人は居なかったが、焦燥と背徳がオクタの背を這い回った。


「ぁ…あ……」

オクタは『青年』の心臓に刺さった刃物を震えながらゆっくりと引き抜く。その瞬間ずるりと落ちる『青年』の身体。

「…!」

シュシュがとびきりの歓喜に目を丸くする。そして『青年』は倒れ、辺りに血の海を作り上げた。


「あ…刺しちゃった……とうとう刺しちゃった!」

お…俺、人殺しになるかな!?と真っ先に自分の事でいっぱいになる。

そんなオクタと喜ぶシュシュから少し離れた距離から、何故か水狗ミイヌが現れ、

「おっくん……シュシュ…さん……」

それは小さな、小さな震える声で。



カタンッ!とスマホが落ちる音で、二人は後方の水狗に気が付いた。






──『人の形をした生き物を刺す』感覚がもたらす大きな背徳と快楽に思わずぁはあ…!と恍惚に浸るシュシュ。突如現れた水狗に戸惑いを覚えつつも、倒れたまま動かなくなった『青年』の方へ顔を青くしながらも震えてざまあみろ、と笑みを浮かべるオクタ。

「ミ…ミヌちゃん……」

彼はゆっくりと後方へ振り返り、引き攣った表情を愛する方ミイヌへ向ける。





──彼と目が合ったその瞬間、水狗は倒れた青年の方へ駆け寄った。

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