無機の夢_Ⅶ

「きゃーっ!」

「うおおおおおお…!」

暗い空間の中、ひたすら落ちてゆくオクタと水狗ミイヌ。何処に繋がっているかすらも分からないまま抵抗も出来ず落ちるのみだった。




──そうして空間の中を落下し続けた二人の身体は、幸いにも植物のクッションによって守られた。

「いてえ…」

緑色のレンズが目立つ眼鏡のズレを直したオクタが、水狗を起こして先に部屋の中を確認する。

「ここ…なに…?」

オクタの後に立ち上がった水狗も彼の後に続いてきょろきょろと辺りを見回す。


「何だここ……何もねえな…」

二人が周囲を見回してもあるものは、瓦礫、植物。

辛うじて機能していた明かりが一つ。そして、開いたままの扉。

衣服を着たままの一組の白骨。

「物置か?…いや……」

とは言えこの部屋が物置では無い事を、一組の白骨が物語っている。



「ひっ…!」

水狗はオクタより遅く白骨の存在に気付き、少し引き気味の小さな悲鳴を上げた。

「し…死体……!」

怯える水狗を、オクタが素早く抱き締める。

「ミヌちゃん、大丈夫、大丈夫」

愛してる方オクタの行動によって、水狗は少しずつ落ち着きを取り戻す。




「ってか丁度いいや、ズボン脱ぎ捨てちゃったし服も汚れちゃったからありがたく貰っちゃおうぜ(^ν^)」

ラッキー(^ν^)、とオクタは白骨から衣服を剥ぎ取る。

「うえぇ…怖いよ……」

水狗は死者の服を着る事に抵抗を持ったものの、オクタの説得によって腹を括ったらしい。


二人は剥ぎ取った衣服を着た後、一組の白骨に手を合わせた。






「ま!とりあえず行けそうなとこ進むっきゃないっしょ」

気を取り直して行こうぜ、とオクタは水狗の手を取って扉の向こうへ進んで行った。

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