無機の夢_Ⅳ
──オクタと
「それにしても『楽園』ってこんなんだったんですね~」
内部の壁や天井を時折見ながら、そう語るアルコ。
「名前の割に機械的ですもんね~」
アルコの思っている事を汲み取ったシュシュの返答に、うんうん、と返すアルコ。このふたりも中々良好なまま三叉路の一つを進んでいた。
「でもですね…この『楽園』の中心って、何がいたと思います?」
突然のシュシュの投げ掛けに、アルコはきょとんとしたが、うーん…と口元に指を当てて考える。
「えっと、でもここって一応機械の施設だったんですよね?だったらとても大きくて凄い機械なんじゃ」
「うんうん。普通ならそう答えちゃいますよねー」
アルコの返答ににこりと微笑むシュシュ。普通に考えたらそういうものだと彼女も思っていた時期があったからだ。
「けど、シュシュさんは『カミサマ』がいるって言ってましたよね?」
アルコは彼女の言っていた事を思い出し、改めてシュシュに訊ねる。
「ですです♪」
「だけど……」
アルコはふと少しだけ考え、そして暫くして何かを思い出したらしい。
「あ!そう言えばここ進んで何故かちょっと思い出したんですけど、シュシュさんは『彼』の事覚えてます?一緒に遊んだ事、ありましたよね…」
緩めの微笑みと共にシュシュの方へ向き直ったアルコに対し、シュシュの表情は目を大きく見開き、凍り付いた様な無表情になっていた。
──その瞬間、互いを取り巻く周囲の空気が変わる。
「…シ、シュシュさん……?」
突然の事に戸惑うアルコに対し、暗い瞳になったシュシュの目が彼女を射抜き殺す様にアルコの目を見つめている。
シュシュの暗く、読めない瞳に得体の知れない恐怖がアルコの背筋を大いに這った。
「……『彼』って、『あいつ』の事ですよね?」
先程迄の彼女の声音と打って変わった低い声に、良くないものを感じたアルコは、路の壁にもたれ掛かる。
「シュ、シュ…さん……?」
彼女の目に映る
「ここに来てからって言ってましたよね?何か見ちゃったんですか?ほんとに思い出しただけ?」
淡々と語るシュシュの言葉に、アルコはただ震えながら戸惑うだけ。
「や…やめて下さいシュシュさん……」
──彼女のその瞳は、既に恐れを宿していた。
「…『あいつ』の事を思い出してしまったのなら……」
ぼそぼそと呟くシュシュが、静かに武器を取り出す。その路は彼女の靴音だけが響き、とうとうアルコに迫るや嘲笑的な笑みを浮かべて静かに囁いた。
「──そういえば、ひとつだけ教えてあげますね?実はこの三叉路…ひとつだけシステムが作動しない路があるんですよ♪」
「え──?」
アルコがその言葉の意味を知るより早く、クスリとシュシュが笑む。そして同時に彼女の武器がアルコの心臓を貫いた。
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