無機の夢_Ⅱ
──『楽園』内部をひと固まりに進み、セキュリティシステムの目を掻い潜って最深部を目指す。そんな一行の前に三叉路が現れ、一度ぴたりと進行を止める。
「三叉路だ…」
一つ一つの道は順番に入っていけば問題無く進められるであろう幅だが、真上のランプを見るとどうもシステムが生きている状態らしい。
全容を把握している訳ではないものの、経験があるらしいシュシュがこのシステムについて説明し始めた。
「……ここのシステムはね、一つの道に二人しか通れない仕組みになってるの。もちろん一人でも駄目だった」
「…『だった』?」
「うん…あなた達より前に目が覚めたひとと訪れた時、ここに差し掛かって進んだ事があるの。……だけど、一人ずつ通れば大丈夫って先に進んだひとが、熱線で焼け死んじゃった」
「ひええぇ」
彼女の話を聞いた
「熱線とは…随分物騒なもんだな」
そう言いながら
──ジュウッ!
「うおっ」
「きゃあああ!」
「ちょっとちょっとロキ君~!何してんの!(^ν^)」
咄嗟に足を引っ込めたが、掠った衣服の一部が見事に焦げて炭化している。
炉景の唐突な行為にHONEYが悲鳴を上げ、オクタが思わずおどけた口調をする。
「炉景さん大丈夫ですか!?」
流石のシュシュも炉景の無事を心配し、彼の足元をすぐさま見る。──衣服の一部が炭化してしまったものの、特に何も無くホッと安堵した。
「…もう!あぶない事しないで下さいねー?……気を取り直して話しますが、道の入口上にセンサーが付いてるんです。一人で通ろうとするとさっきみたいな事に、でも二人だったら解除されるしくみなんですよー」
彼女が指差ししながらセンサーへ説明を続け、
「けれど…二人以上が一つの道に進もうとすると道の床がすべて抜けちゃうんです。上になんか戻れません。だから…気をつけてくださいね」
と付け加えて説明を終えるシュシュの表情はほんの少しの不安を帯びていた。もしかすると彼女は先に入った一人も一緒に入ってしまった三人の末路も見てしまっているのだろう。
助けられなかった悔しさが、帯びた不安の中にまだ残る。
「まあそういう事なら…でもまともに残ってる道ってここだけなんだろ?他は無いんだよね?……だったらここ進むしかねえよな」
しゃーない、とでも言いたげだが、オクタは「仕方が無い」と三叉路を進む二人一組のメンバーを決める事にした。
「えーと…んじゃ、シュシュちゃんはアルぴと、ロキ君はハニハニと。で!俺はミヌちゃんと一緒で!(^ν^)」
またしてもおどけたオクタの言葉にそれぞれが承諾の返事をする一方、炉景とシュシュが
「オクタ氏さぁ…どうせ
「オクトンはほんとミヌヌンのこと好きですねー♪」
等と茶化し、
「べ、別にやましい理由じゃねえから!(^ν^)」とおどけた態度のまま弁明をする。
『楽園』の中の一行の様子は、まるでかつて何時も仲良く戯れていた頃と変わらなかった。
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