『カミサマ』
眠る『楽園』_Ⅰ
──あれから一週間程が経過し、オクタ達もシェルターでの生活にそれなりに慣れ、シュシュの家で世話になるだけは…という理由で生活周りを少しずつ手伝う様になった頃。
「──~ねっ!みんな、そろそろ『楽園』に行きましょ♪」
「「「はぁ?」」」
「え?」
「どしたのシュシュさん」
唐突なシュシュの言葉にオクタ達はきょとんとした。
「ほら前ここ来たばかりの時にわたし言ったじゃないですかぁ♪『わたしを選んだカミサマの所へみんなを連れて行って、わたしとおんなじにしてもらう』って!」
目をきらきらと輝かせながら夢見心地に語るシュシュへ、焦げ茶色の髪を指で軽く弄りながらオクタが訊ねる。
「…でもよ、みんなって言ってもくもちゃん…コホン、
全員、彼の言葉に暗い顔を浮かべ俯く。
「うん…レイグーンちゃん達だってさ…」
「みんな目を覚まさないまま死んじゃったんでしょ…?」
亡き友の事を思い出して思わず悲しみの涙を零す
そんな彼女達の姿が痛ましく見えてか、アルコと
「確かに…ですよね……まさかほとんどの友達はすでに死んじゃってたんですし、曇さんも施設から出る途中で……っ!」
ギュウゥ…とシュシュの拳が悔しそうに握り締められる。
「──まあ、確かにずっとシュシュさんの所で世話になりっぱなしってのもどうだろうって思うよ俺は」
HONEYと水狗を慰める手を止めて考え直した炉景は言う。
「何より、俺達の存在はシェルターの人間達にとってあんま歓迎されるもんじゃないってのはこの一週間で分かった。シュシュさんは長い事ここに住んでたんだしほぼここの住人と変わらんとしても、俺達は外から来た余所者なのは変わらんよ。まあ…言っちゃ失礼だが、シュシュさんもここの人らからあまり良く思われてないのは納得出来んかったけど」
それならいっそシェルターから出て『楽園』を目指し其処を新たな場所にしてしまえば良いじゃないか、という考えだ。
「なるほど、『楽園』って呼ばれている場所は誰も踏み込んでいないんですよね?でしたら丁度良いかもしれないですよね~!」
炉景の提案にアルコも大いに賛同する。勿論彼女だけでなくシュシュを含めたその場に居る全員が賛同した。
「流石ロキ君だよね~(^ν^)てんさあい!──新しい土地でみんなと一緒に生きてさ~、幸せになっちゃわない?水狗~…」
オクタは強く抱き寄せている水狗へ顔を近付け、チュパッチュパッとリップ音を鳴らしてキスの様な仕草をする。
オクタのこういった行為は事ある毎に水狗へ向けられておりセクハラを指摘すれば一旦は止めるがそう間もなくして繰り返すというのが当たり前だった。
好きな女を前に男の本能を自制出来ないのか頻度と度合いは増し、挙句の果てに最近では水狗の入浴時に裸で入ってきては「これは俺とミヌちゃんのただの戯れだって!戯れ!(^ν^)」と言いながら必ず勃起した陰茎を彼女の両股に挟ませ、太腿と膣口で自分の陰茎を擦る──
正直気持ち悪い上にある意味立派なセクハラなのだが、『仲良しのお戯れ』として見られてるのか皆からの反応は特に引かれたものとかでは無く、仲良し二人の当たり前の光景という扱いをされていた。──それが余計彼を増長させる要因になってしまっているのだが。
「ですです♪わたしも炉景さんの意見にさんせーい♪なにより『カミサマ』がいる場所ですもん♪」
困った事は何でも『カミサマ』が解決してくれる。と当然の様にシュシュが言った。
皆の幸せの為ならば目指すべき場所だ、シュシュの望みを叶え、自分達だけの許された美しい理想郷にしてしまおう──と、彼等の意見は一致する。
「じゃ、準備して目指そうぜ、『楽園』を」
まるで、希望を見出した物語の主人公の様にオクタは立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます