世界を殺した魔女_Ⅶ

「──わたしがシェルターのゴミひと、ううん、世界中のゴミ共ひとたちから『魔女』って呼ばれてるのはですね、……ただの嫉妬ですよ!」

くるん!と振り返ってんふふ♪と笑う彼女の言葉に、オクタは拍子抜けする。


「…は、嫉妬ぉ?」

「そうです♪嫉妬です!ほんっとゴミはゴミのままですよねぇー♪『カミサマ』に選ばれなかったからって、選ばれたわたしに嫉妬なんかして、『世界を殺した魔女』だなんて言い広めちゃうんですもん」

シュシュはさながらコミカルな漫画の登場人物の様な表情を浮かべ、眉間にしわを寄せながらぶーぶーと文句を言う。

「おかげでわたしはどこにいても『世界を殺した魔女』って呼ばれて散々なんですからっ!…訴えられるものなら訴えて世界中のゴミからありったけのお金をふんだくりたいくらいですっ♪」

急に金の話が出てきたかと思えば、彼女は続けて

「でも、わたしって頭いいので考えちゃいました。『世界中がわたしのことを魔女扱いするなら、逆に利用してやろう』って──」

それでシェルターの人間達を『あなたたちも滅ぼしちゃいますよ?』と脅して今の家や色々な物を得たのだという。




「…っはは、そっか~(^ν^)シュシュちゃんらしいや!」

真面目に聞いたのが馬鹿らしくなってか、オクタもおどけ返す。

「ぇへへっ♪だからオクトンもみんなも大丈夫ですよー、ゴミ達かれらはわたしに嫉妬してるだけなんですから♪堂々としてて良いんですっ♪」

そう言うシュシュの姿は、心無しかくるんと丸まった尻尾を振って撫でられ待ちの柴犬の様に見える。






オクタが「ははは、はいはい」と無意識にシュシュの頭を撫でた後、満足気な表情を浮かべた彼女が

「ちょっとわたしここでのんびり考え事したいので、オクトンは先にみんなの所へ戻っててください♪」

と言う言葉に従い、「わかった~(^ν^)」と水狗ミイヌ達のいるシュシュの家へ戻ってゆくのを彼女は手を振りながらその場で見届ける。





「──危なかったぁ」

彼の後ろ姿が見えなくなった後──その言葉と共に、シュシュは少しの冷や汗をたらりと流しながら口の端を意味深に吊り上げた。

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