世界を殺した魔女_Ⅳ

──目的地である1076シェルターに到着後、オクタ達はシュシュの言う通り周りを気にせず彼女に付いて行く。…が、どうしてもシェルターの人間達の視線と声が気になりちらりと周囲を一瞥いちべつし、耳を傾ける。



「…の魔女、碌でも無い身分の分際で勝手に……」

「見ろ、魔女が連れてきた連中、魔女と同じ位の見た目だぞ」

「世界を……た魔女の癖に、よくあんな狼藉の数々を平気で…」

「あいつらも魔女と同じ奴なんじゃないのか?」

──此方を訝しむ表情、その眼差しにはくすぶる怒りや侮蔑が混じっていた。

また、ぼそぼそと此方の事を囁き合ったり警戒している様子だった。

そんな彼等の口から出てくる『魔女』という言葉。






──『魔女』?もしかしてシュシュちゃんの事か?






『魔女』の事が気になったが、此処で不意に訊ねようとするのは悪手かもしれないと思い、「後でシュシュちゃん本人に聞いてみよう」と誓って大人しく彼女の進む方へ友人達と向かう。











「──はい!ここがわたしの家でーす!」

立ち止まって自分の家を紹介するシュシュの声に、色々巡らせていたオクタの思考はぴたりと止まる。

「おお~!結構大きそうな所だね!」

水狗ミイヌがきらきらとした眼差しで彼女の家の扉を見ていると、「でしょでしょ?」と嬉しそうにシュシュが喜んでいた。


「喉もかわいたでしょ?飲み物出してあげるからゆっくりしてて~」



まるで慣れた様子で親しい友人達を自宅へ招き入れる、普通の人間の様だった。
















「~はーっ!生き返るぅ~っ!」

出された飲み物をごくごくと飲み干して、水狗とHONEYハニーが仲良く肩を組んでいる。

「ったくイチャイチャしてんじゃねーよ…」

その様子をオクタは嫉妬と羨望を抱きながら見つめ、彼も水狗に近付いてこっそりと彼女の身体に密着した。


「いやー助かった」

「服だけじゃなくて飲み物も休める場所も貸してくれるとは…シュシュさんありがとうございます!」

炉景ロケイもアルコも施設の時より気が緩み、やっとの安堵を得た事を噛み締める。

「んふふー♪わたしもみんなと再会できてほんとに嬉しいです♪」

シュシュも笑顔を綻ばせ、場は安らげる空間となった。

「でもね……」






シュシュの放った言葉に、一同はぴたりと固まり彼女を見る。






「今日わたしの誕生日なのでみんなと一緒にわたしの誕生日お祝いしたいです!」

そう言うや否や、周囲をきらびやかな光が舞い、楽しそうで古めかしい音楽が鳴り始めた。




「さぁパーティしましょ♪わたしの360とちょっとの誕生日!」

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