世界を殺した魔女_Ⅱ

「シュ…シュちゃん……?」

HONEYハニーが少しばかり信じられなさそうな様子で問い掛けた事に、彼女はそうだよー♪と無邪気な子供の様に返す。

そして彼女はオクタと水狗ミイヌから離れたかと思えば皆の近くをくるりくるりとフィギュアスケート選手の様に回っている。


「あー良かった!思い切って早めにここに来て正解だった♪」


回っていたかと思えば、拳をぎゅっと顔の前で握り締めて漫画やアニメの元気系のヒロインの様な動きをする。






「誕生日…?」

オクタがシュシュの言葉を聞いて記憶の中を振り返る。──の記憶では、シュシュの誕生日は確か6月13日だった筈だ。


「……という事は今日って6月13日なのか?」

疑問符を隠さないオクタに対して、

「ふふーん♪そうだよー♪今日はわたしの誕生日。ぇへへ…だからほんとはゆっくり過ごすつもりだったんです」

シュシュはぇへ…と過分な愛嬌を含めた笑みを零す。

「…あ!皆さん服!着てないじゃないですかぁ!キャーえっちー!♡」

一々大袈裟な仕草をするシュシュの存在は明らかに違和感そのもので、先程までの彼等の暗い雰囲気を見事なまでにブチ壊した。


そして各々方が記憶の中の彼女の姿を思い出し、目の前の人物を改めて再認識すると、二つのお団子が特徴的な赤みを含んだ桃色の髪、見る時によって紫色にも見える赤色の瞳、子供の様な無邪気さ、そして…





──カサ…






「──危ない」











グチャ!と先程のクムリの時の様な柔らかいものが潰れる音。

「ふー危なかった~」

一行の近くを通り過ぎただけの無害な蛇を、彼女は武器らしきものをすかさず取り出して思い切り潰した。

「…蛇!もし噛まれちゃったら大変です!怪我してませんか?」

狂気的な笑みを浮かべ蛇を潰した彼女は、皆を見るやにぱっ!と無邪気な笑顔に変わる。だがその傍らで彼女の手は武器を持ったまま、既に死んでいる蛇を楽しそうに何度もグチャグチャと潰し続けている。



──オクタ達は、そんな彼女のの片鱗を目の当たりにして、目の前の女がシュシュ本人なんだと確信したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る