世界が死に絶えた日_Ⅵ
「きゃあああああああ!」
不気味な音の後に空かさず
「ミヌちゃん!?どうした!」
オクタが水狗の元へ駆け寄る。彼もまた彼女の視線の先へ顔を向ける。…しかし思わずそれを認識してしまった事を彼は後悔してしまう。
「あ………」
「ッ…!」
オクタはそれから本能的に顔を
「く…くもちゃん……」
「
オクタの後に駆け寄った
「ぁ……ぅ…あぁ…」
まるで二人の声に応える様にげぼ、と大量の血を口から吐く。場所が暗い所為でその血は真っ黒に見えた。
「だ…ダメ!何も喋らないで!くもちゃん死んじゃう!」
HONEYが必死に助けようとするが、
「…無理だ……くもちゃん、もう助からねえよ……」
オクタの悔しそうな声と手がHONEYを制止する。
「そんな…勝手に決めないでよオクトン!」
悲痛な声音で訴えるが、オクタは首を横に振るのみだった。
「そんな…そんな……」
アルコも信じられなさそうな様子で目の前の状況に
「無理なもんは無理なんだよ!」
やり切れない感情からか、オクタも思わず爆発させる。
「そんな…そんな、だからってそんな言い方しなくたって良いじゃん……」
HONEYは突き付けられた現実を前に涙を零した。
「…み…んな……」
沈黙を打ち破る様に、防衛装置に潰された曇がか細い声で言葉を紡ぎ始める。
「くもちゃん…」
「ケン…カ……しちゃ…だめです…よ……でぐ、ち…すすんで…わたしの、ことは、きに…しないで、いい、ですから……」
その言葉を紡ぎ終えたと同時に、ゆっくりと目を閉じた。…そして、一つの命がその場で絶えた。
──もう自分は助からない。
死ぬ寸前に曇が伝えた言葉は、その意味を含みながらも、争うのを止めて自分を気にせず先に進め、というものだった。
「くもちゃん…くも、ちゃん……」
HONEYが事切れたばかりの彼女の手を取り、その死を看取る。
「……さっさとここから出よう」
非常口前で立っていた
曇以外の全員が非常口から外へ出てゆく時、内部が少しだけはっきりと見えた。
──先程水狗が触れていた壁の部分に防衛装置の起動スイッチがあった事を、誰一人気付く事は無かった。
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