1. タイムパトローラーの隊長の場合


ここは時間の空間の中。


なんにもない久遠の空域。


今という場所の世界。


時間とは物事の変化を計る為の概念、物差しである。


時間は過去から未来へとどの場所でも常に等しく進むもので、空間と共に、現象が起きる固定された舞台を成すものである。


この固定された舞台を絶対空間および、絶対時間とも呼び、時空を合わせて、4次元の直交デカルト座標で表す事ができる事、および均一で平坦なユークリッド空間である事が暗黙に仮定されている。


特殊相対理論によれば、光の速度はどの慣性系に対しても一定である。


これを高速度不変の原理と言う。


高速度不変の原理から異なる慣性系の間の時空座標の変換式が求められ、それはローレンツ変換となる。


この時、ある慣性系から見て空間上の異なる地点で同時に起きた事象は、異なる慣性系から見ると同時に起きてはいない。


これを同時性の崩れと言う。


結果として、観測者に対して相対運動する時計は進み方が遅れて見える。


一般相対性理論によれば重力と加速度は等価であり、これらは空間と共に時間を歪める。


一般に重力ポテンシャルの低い位置での時間の進み方は、高い位置よりも遅れる。例えば惑星や恒星の表面では宇宙空間よりも時間の進み方が遅い。非常に重力の強いブラックホールや中性子星ではこの効果が顕著である。


時間は常に一定の速さで過ぎるもので、それに合わせて様々な現象の進行速度や周期の長さが計れると考えている。だが、観測的には我々は、ある周期現象の繰り返しの回数を他の現象と比較できるだけであり、何か絶対的な時間そのものの歩みを計れるわけではない。


時間軸には過去と未来という異なる方向がある。


言い換えれば、空間は各方向軸が反対対称だが時間は反転非対称であり過去と未来の向きを入れ替える事はできない。


物理学の基本法則を表す方程式は全て時間反転対称である為、時間の向きが何から定まるのかは大きな謎である。


難しい時間の概念の話は、ここで終わるとしよう。


時間とは、今しか、ないのだから。


常に今である。


今は過去でも、未来でもなく、今である。


そして、キミは、今、決断を迫られている。


人生の分岐点とでも言えばいいだろうか。


いつもと変わらない日常でも、キミは常に選択をしているのだ。


過去と未来、その道があるように、キミにも、選ぶ道がある。


選べる道があるんだ。


只、行ける道はひとつのみ。


だが、道は選ぶと、引き返せない。


何故って、キミは今しか存在できないからさ。


勿論、誰でも。


誰でも、選んだ道を引き返せない。


時間と同じ。


今しか存在できない。


過去も未来も、その存在があっても、誰も、その時間を手にできない。


だって、過去も未来も、その空間は、今と言う時間から見ると、安定していない時間だから、常に歪んでいるんだ。


だから、タイムマシーンで、時間を移動すると言うのは、過去へでも、未来へでもない。


今という時間を移動するんだ。


キミの今という時間は、ここにある。


だけど、今と言う、ここに辿り着く迄に、キミは様々な選択をして、ここにいるよね。


些細な決断もあれば、人生で最大の決断もあっただろう。


悔やむ事もあれば、神様は自分の味方だと思う幸運にも恵まれる選択もしてきただろう。


その様々な決断が、今のキミの存在。


この時間に存在できるキミ。


そういえば、キミは、さっき、チョコレートを買うか、買わないかで悩んでいたよね?


それで結局、買わなかった。


でも、買ったキミもいるんだよ。


直ぐ隣の空間にね。


今という時間は、鏡合わせのような空間が連なっている。


この場所から、直ぐ隣の空間は、今のこの場所と、大差、変わりはない。


駄菓子を買うか、買わないか、その程度の違いくらいだろう。


時間の単位も、秒、分、時間、日、週、月、年、世紀など、変わりもない。


だが、空間は、自分がいる場所から遠く離れれば離れる程、全てが変わってしまう。


自分さえ、存在しない。


人が存在していない時間だってあるのだから。


人がいても、まだ石で生活をしている時間の場所もあるのだ。


言えば、キミがいる時間から見て、今から過去へ行ったような世界だろう。


その逆に、科学が発展した今から未来へ行ったような世界もある。


それだけじゃない、御伽噺に出てくる天国や地獄のような世界もある。


天国は人それぞれ、何を思って、幸福を感じるのか違うからこそ、ハッキリと、これがキミにとっての天国だとは言い切れないが、地獄と言うのは、誰もが辛いと思うような場所。


そこは人が存在していない場所だった。


でも、今は違う。


このタイムマシーンができてから、時間犯罪者が増え、地獄は、その犯罪者達の牢獄となった。


時間の犯罪は、最も悪とされる。


何故なら、今を歪める事になるからだ。


ひとつの空間の今と言う時間が狂い、歪み始めたら、その隣の空間も歪み出す。


そして、最終的には、全ての今と言う空間が歪み、そして消滅する。


時間がなくなるんだ。


つまり、キミが生まれた事も、キミが今までして来た事も、全て消える。


ゼロになる訳じゃない。


消えてなくなるんだ。


この大きな宇宙から、消えてなくなるんだよ、キミが存在できる星そのものが。


宇宙から見れば小さなものだけど、キミが存在しているこの星は、キミにとっては全てだ。


この星に存在している者達、この星の今という時間を持つ空間の全て、そして、もう未来も過去もなくなるんだ。


そうならない為にも、タイムパトローラーと言うヒーロー達がいる!


さぁ!


キミも、タイムパトローラーとして共に働こう!


では、時間の犯罪とは、どんなものがあるのかを説明して行こう!


まずは——・・・・・・


「いやいや、ムリムリムリ。寝ちゃいそうになっちゃったよ。長すぎだしね、この映像。もっと、こう、わかりやすくまとめられないの? だってこれCMでしょ? これじゃあ、なんかドキュメントっぽいし。それにチョコレートを買うか、買わないかって言う例えもどうかと思うよ。ヒーロー呼ばわりは悪くないけど、最初の物理学っぽい説明はどうかなぁ? 頭悪いとヒーローになれないって思われるんじゃないの? まぁバカはなれないけどね? だからって天才じゃなくてもいいんだし? それに今更、難しい説明なんていらないでしょ、キャッチフレーズをさ、バーンと出して、昔懐かしいアニメのヒーローみたいに登場! そういうの、どうよ?」


と、タイムパトローラーの募集のCMに文句をつける男。


シンバ・シャルト。


まだ23歳という若僧の癖に、AAのタイムパトローラーの隊長をしている。


AAとは、シンバ・シャトルが生まれ育った世界で広く使われている暦の事だ。


今という空間でAAと言う暦の世界は、沢山ある。


その沢山ある世界の時間の中でのタイムパトローラーと言う訳だ。


「はぁ・・・・・・それもどうかと・・・・・・あ、でも、GXのタイムパトローラーの隊長はこのCM、オッケー出したみたいですよ」


GXと言うのも暦。


つまり、今と言う時間の中で、暦が違う場所からが、ひとつの世界として括っている。


「マジで!? こんな長いCM誰が見んの!? GXの隊長ってバカなの?」


「さぁ?」


と、首を傾げて、苦笑いしているのは、シンバ・シャルトに付いている隊員の一人だ。


どう見ても、シンバ・シャルトよりも年上。


だが、どう見ても、シンバ・シャルトを慕っている。


こんな奴等が、数十人、シンバ・シャルトの下で働いている。


「隊長、シャルト隊長!」


部下が、また一人、部屋に入ってきた。


「本部から緊急連絡が入りました」


「あ、そう、なんだって?」


「DHに追放された犯罪者が一人、逃亡したそうです」


DHとは地獄の空間の暦。


「へぇ、また凄い連絡もらっちゃったね、あそこから逃亡するって、どうやって?」


「タイムトラベル中の女性に憑いたって話です」


「トラベル中って、DHにトラベルに行ったのか? 物好きな旅行者だな」


「いえ、トラベル中にDHに追放された知人に会いに行った女性だったようです、その時に憑かれたようで」


「さっきも言ったな、憑いたとか憑かれたとか。どういう意味?」


「その犯罪者、NHの空間の人間らしいです」


「NH? NHと言えば、かなり文明が発達した世界だよな」


シャルトは言いながら、NHの空間を知っている限りで思い出す。


「自分の肉体から魂を離脱させ、他人の体に寄生し、その他人の体を利用する能力を身につけてるようです。女にだけ寄生するみたいですが、犯罪者は男です」


「最早、人間じゃねぇな、そういうのを捕まえるのは妖怪退治する人だろ」


そう言ったシャルトに、苦笑いしながら、


「この前は透明人間になって空間を行き来してた奴もいましたしね」


と、隊員が言った。


「科学も発展しすぎると良くねぇな、全く!」


と、面倒そうなシャルト。そこへ、


「隊長!」


と、もう一人、部下が部屋に駆け込んで来た。


「今度はなに?」


と、本当に面倒そうなシャルト。


「GXのタイムマシーンが現れて、隊長を出せと!」


「え? 俺? なんかしたっけ?」


「先程、CMの件で、GXの隊長を悪く言われたからじゃないでしょうか?」


と、CMを一緒に見ていた部下が冗談っぽい口調で言う。


「うちのタイムマシーン、盗聴されてんの? GX限定?」


と、笑うシンバ・シャルト。


「笑い事じゃないですよ、GXの隊長はすっごい怖いらしいですから!」


と、駆け込んで来た部下が不安そう。


「大丈夫だって。今、行くよ」


と、シンバ・シャルトは、部屋を出る。


ここはAAのタイムマシーンの中。


さっきいた部屋は隊長の部屋って訳だ。


操縦室では、目の前に、突然、乱暴に現れたGXのタイムマシーンのせいで、妙な空間エリアで停止させられた事に、隊員達が怒っている。


「あ、シャルト隊長! どうします、GXのタイムパトローラー達、最近、少し、乱暴すぎやしませんか?」


「扉開けて? 話聞いてみるよ」


「いいんですか? なら、オレ達も守備につきます!」


「戦闘態勢とってどうする? GXと戦争したいのか? 確かあそこの時間は、かなりの科学が進んでたな? 遅れた文明の時間の出の俺等はやられちまうよ」


と、笑うシンバ・シャルト。


「でもシャルト隊長にもしもの事があったら!」


「なんもねぇよ、バカだなぁ、心配しすぎ」


「しかし無茶苦茶な因縁つけて来る気じゃないでしょうか!?」


「とにかく話を聞いてみるよ、扉あけて? あんまり待たせると、うるさそうだからさ」


隊長がそう言うのならと、隊員の一人が、扉を開けるボタンを押した。


ウィーンと言う音と共に、扉が開き、目の前に大きなGXのタイムマシーンが堂々と止まっているのが目に入る。


マシーンの先端のデッキには、GXの隊長が待ち構えるように立っている。


「キミか! 噂のシンバ・シャルトと言う男は!」


「どうも。いい噂で名をご存知ならばいいんですが」


と、にこやかに対応するシンバ・シャルト。そんなシャルトに、鼻で笑うGXの隊長。


「キミはもう一人の自分に会った事があるかね?」


「はい?」


「時間を飛ぶ仕事をしているんだ、直ぐ隣空間に住むもう一人の自分に出会ってもおかしくないだろう?」


「会う訳ないじゃないですか、俺は俺が選んだ道で今ここにいるんですよ、同じ道を選ぶ俺なんている訳ないし、違う道を選んで来てるんだから会う事なんて不可能ですよ。だから違う空間に存在してるんだし」


「確かにそうだな。直ぐ隣空間にいる自分には会わないだろう、タイムパトローラーのキミもキミしかいないのだから。やはりCMのチョコの例えは飛躍しすぎか?」


「・・・・・・いえ、あれはあれで、わかりやすいかも?」


苦笑いで、そう答えるシャルト。


「隣空間と言っても、暦も同じ時間の中。タイムパトロール隊がいるだけ治安も悪くない。だが、お前達AAの者は裕福すぎて、時間犯罪を犯す奴等も多いな? 気をつけた方がいい、もう一人のお前は時間犯罪を犯すかもしれん。タイムパトローラーとしての道を選ばなかったお前は、犯罪者の可能性もあるだろう? 特にAAの出の者は」


「・・・・・・売ってます? 喧嘩」


そう言ったシャルトの背後に集まる隊員達。皆、凄い怖い表情で、GXの隊長を睨んでいる。


「野蛮な連中だな、折角、AAの時間犯罪者を捕まえてやったと言うのに」


GXの隊長がそう言うと、GXの隊員が一人、女を連れて来た。


「AAの者の犯罪者が逃亡している情報は来てませんよ?」


と、シャルトの耳元で囁く隊員。


だが、女はシャルト同様、ブルーの髪をしている。


俯いている為、表情や顔までは確認できないが、AAの者は髪の色が大体ブルー。


勿論、他の時間でブルーの毛を持つ者もいるが。


シャルトは胸ポケットから小さな透明のカードを出した。


そして、女を透明のカード越しに見る。


ピピピッとカードは女を認識し、AAの人間だと判明される。


「確かに、AAの人間ですね、タイムトラベル中に消息不明となってますが」


そう言ったシャルトに、GXの隊員は眉間に皺を寄せ、


「そんな筈はない、わたしのカードでは時間犯罪者だと出た、キミのカードの間違いじゃないのかね? カード記録の更新は毎日しているのかね?」


と、かなりご立腹状態で、シャルトに言い放った。


参ったねと、シャルトは頭を掻いて、


「ともかく、その女性、こちらで引き取りますよ」


そう言った時、


「冗談だろ、わたしは今回の事をタイムパトロール本部に話そうと思っている」


と、GXの隊長は言い出した。


「はぁ、今回の事と申しますと?」


「キミの態度だよ、シンバ・シャルト君。時間犯罪者を捕まえてもらっておいて、礼のひとつもない、ましてやカードの記録の更新は怠り、挙句、手柄を簡単に持っていこうとする態度。キミはそうやって手柄を持ち逃げし、隊長にまで登り詰めたのかね?」


「手柄ってその女性を引き取るって言った事ですか?」


「おやおや、自覚もないのかね? それとも天然のふりか? わたしはキミみたいな人間が一番嫌いだ。若いからと思って、許されると思うなよ」


「・・・・・・若い頃、努力が報われなかった事とか、今、俺にぶつけてます?」


「なんだと!? そうやって何もかも見透かした態度が良くないのだと、何故わからん!」


悪いの?と、シンバは真後ろにいる自分の部下に小声で聞くが、部下は苦笑い。


「いいか、シンバ・シャルト君、タイムパトロール隊と言うものはヒーローだ。勇敢であり、正直であり、何に対しても強くなければならない。そして、その隊長となる者は、隊員達の手本となり、最高の正義でなければならない。だが、キミはその隊長と言う器の持ち主とは思えない。今だってそうだ、隊員に耳打ちでボソボソと喋くりおって! キミの態度が、キミの部下達の品格をも落としているのではないのかね!!!!」


そう吠え終えた瞬間、AAの隊員達は、全員、銃を構えた。


シャルトが耳打ちで部下達に命令したのだろう。


「・・・・・・何のつもりだ? シンバ・シャルト君」


「すいませんね、GXの皆さん、念の為、犯罪者に寄生されてないかチェックさせて下さい。皆さん、その女性と性行為なんてしてませんよね?」


シャルトの発言が、GXの隊長に火をつけた。


「ふざけるな!!!!」


真っ赤な顔をして怒り出す。


「ふざけてませんよ」


シラっとした口調で、そう言うと、シャルトは、


「本部から直接DHからの逃亡者の情報は聞いてますか?」


と、尋ねた。


「逃亡者?」


眉間に皺を寄せた表情をするGXの隊長。その様子だと、まだ情報は聞いてないのか、それとも——?


「カードの更新だけで犯罪者を確認するよりも、本部からの連絡を常にオンにした方がいいですよ、オフにしてるんじゃないですか?」


「若僧が! わたしに説教か!?」


「いえ、そんなつもりは。俺のカード記録では、その女性はAAの人に間違いないでしょう、名はクリス・マロニカ。トラベル中に行方不明になってますね」


「・・・・・・クリス・マロニカ? そんな名ではない! 私のカード記録にはアイルと出ていたが?」


と、GXの隊長が再びカードを取り出そうとした瞬間、捕まえられていた女は急に飛び跳ね、隊員を蹴飛ばすと、マシーンから飛び降りた。


「しまった!」


シャルトは女が落ちる時間の空域を見ながら、下唇を噛み締める。


何が起こったのか、全く理解できないGXのタイムパトロール隊。


「おい、本部からの連絡で逃亡者の名前を聞いたか?」


「はい、アイルです、アイルと聞いてます」


「そうか、やっぱりな、クリス・マロニカに寄生し、GXの隊長のカードは寄生したアイルに反応し、AAの者であると言う所はクリス・マロニカに反応したんだ、くそ!」


「どうしますか?」


「そうだな、ここの時間はどこに繋がってる?」


「はい、MCBです」


「MCB? タイムパトロール隊もない時間か、て事はかなり文明も進展ないな?」


「そうですね」


「しょうがない、それでも行くっきゃないか」


シャルトとシャルトの部下の、この会話の意味が全く理解できないGXの隊長。


「な、何の話をしとるんだ、AAの犯罪者を逃がした事をわたしのせいにするつもりか?」


「え? あ、いいですよ、俺が責任持って、この問題を引き受けますから」


「なんだと?」


「それともMCBへ堕ちて捕まえて来てくれます?」


そう聞いたシャルトの表情は悪戯っぽい顔で、GXの隊長は顔を引き攣らせた。


「GXのパトロール隊達に寄生してないか、調べろ」


「わかりました」


「じゃあ、後の事は頼んだ」


シャルトは部下にそう言うだけ言うと、マシーンから身を投げた。


「なに!?」


驚きの余り、GXの隊長はシャルトが落ちていく姿を見て、更にAAの部下達が、落ちていくシャルトに敬礼をしたまま動かないのを見て、


「キ、キミ達の隊長は何を考えているんだ!」


そう吠えた。


「い、いいか、今と言う時間に少しでも間違った影響があると、全ての時間が消滅してしまうんだぞ!」


「シャルト隊長に間違いはありません」


そう言い切ったAAのタイムパトロール隊員達。


余りにも疑いもなく、そう言い切り、不安さえない隊員達に、


「・・・・・・それがキミ達の隊長か・・・・・・噂通りの男って訳か」


と、GXの隊長は呟く。


「スイマセンが、シャルト隊長の命令により、アナタ達全員を調べたいと思います、皆さん、手を挙げて下さい、マシーンの中にいる人達全員、出てきて下さい」


AAの隊員の言う通り、GXの隊員達は皆、素直に従った。


勿論、隊長も——。


シンバ・シャルト。


部下からの信頼も厚く、上からの期待もあり、良い事も悪い事も噂になる程の男。


年齢23歳。


身長165センチ。


体重53キロ。


ヘアカラー、AAと言う時間の中では一般的なブルーヘア。勿論、その時間の土地柄にもよるが。


アイカラー、髪と同じブルー系の瞳。


性格、勇気と言えるかは微妙だが、無謀とも言い難い、独特の度胸がある。何も考えなしの軽そうな言動から、まわりから誤解される事も多々。頑固と言われればそれまでだが、信念は崩さない。だが、何に対しても余り拘りを持たない。その為、偏見も持たない。


そして、何より、人を魅了するチカラがあり、誰からも信頼され、愛されるタイプ。


その分、敵も多いが——。


「うわっ! 化け物!?」


MCBの時間に落ち、空間に馴染み、地に足をつけた途端、目の前には巨大な生命体。


ヨダレを垂らし、シャルトを見下ろしている。


「俺、今、食われそう?」


いきなりの危機に、シャルトは苦笑い。


基本的に他所の時間の生命体と関わってはいけない。


何故なら、自分は、この時間に、存在しない者だからだ。だが、タイムパトローラーなら、誰かと関わる事も許される。


その分、タイムパトローラーは、簡単な仕事ではない。常に相手の未来も考えて、言動をしなければならない。


そして危険は当たり前。


だからこそ、危険を回避する武器もあり、タイムパトローラーだからこそ、武器を手に出来るのである。


シャルトは懐から銃を出すと、トリガーを引いた。


だが、飛び出したのは弾ではなく、煙のようなもの。


それが巨体の生命体を包み込んだ。


すると巨体の生命体は煙と共に消えた。


辺りは煙が漂い、シャルトはフゥッと安堵の溜息を吐いたのも束の間、剣を構えた男が顔を強張らせ、シャルトを見ている。そして、


「・・・・・・恐竜が消えた? アンタ、何の術を使ったの?」


と、シャルトに恐る恐る声をかけてきた。だが、言語が違う為、シャルトには通じない。だが、剣を仕舞わない辺り、物凄く警戒しているのだとわかる。


「・・・・・・俺、今日、厄日?」


苦笑いで、そう呟くシャルト。


だが、タイムパトロールの一員だからこそ、誰かと関わるのも仕事の内になる場合もある。


シャルトは少し考え、この男を利用しようかどうか、考えながら、言語翻訳機をMCBの時間に合わせ、耳に入れる。


言語翻訳機は、その時間に使われている言語が全て訳される。


だが、こちらの言葉も訳されて相手に聞こえるが、発音まで、うまく訳されず、妙な言葉使いに聞こえる場合もある。その為か、


「こんちわ」


と、銃を懐に仕舞い、笑顔でシャルトが挨拶したにも関わらず、


「・・・・・・何者だ?」


と、全然、警戒されまくり状態。


参ったなと、シャルトは何故か手を上げる。


勿論、丸腰だと言う合図のつもりだったが、その行動が、余計、警戒される事となったのか、男はズザッと足を後ろに引き、


「な、何する気だ!?」


と、更に警戒している。


さて、この今の状態、どうしたものか——。

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