3.7人目


「ねぇ、もう帰ろう?」


葉山が不安そうな口調で言う。


「帰るっつっても、まず出口探さねぇと。外に出て、ここがどこなのかわかればいいけど、窓の外を見る限り、山奥って感じだし、直ぐに帰れるもんじゃねぇかもな。だから早めに出口探しとけば良かったんだよ、明るい内に外に出ねぇと、山の中、遭難なんてダセェよ」


帆村がブツブツと文句を言い出す。


「でも川瀬 水花って人は?」


日野がそう言って、何故か俺を見る。


「・・・・・・もともとそんな人物はいなかった——とも考えられるよな?」


俺達がいた部屋とは別に、他の部屋にいると言うのは考え難いと思った。


同じ藁人形がある以上、立場は変わらないだろう、だが、どの部屋にもいなかったとすると、もともとそんな人はいなくて、只、俺達を混乱させようとした・・・・・・のかもしれない——。


誰が?


何の為に?


最早、俺達がこの場所に連れて来られた時点で、誰が何の為にこんな事をしているのか、全くわからないのだから、考えてもしょうがないような気がして来た。


「も、もしかしたら、ぼ、ぼく達より早くに目が覚めて、建物の中をウロウロしているのかもしれないよ」


大畑のその意見も有り得る。


「だったら先に出口見つけて、もう帰ってるかもよ? オレ達も行こうぜ?」


帆村はそう言うと、警戒心もなく、どんどん先へ進んでいく。


「あ、階段があるよ、帆村君!」


上り階段を無視して行く帆村に日野が言った。


帆村は振り向くと、


「馬鹿か、お前は」


と、溜息混じりに言う。


「いいか、オレ達は出口を探すんだ。ここは窓から見える景色からして一階。出口は一階にある。そうだろう?」


「そうとも限らないんじゃないかな? 二階にだって出口らしきものはあるかもよ? 例えば非常階段みたいな?」


「はぁ? 非常階段? 普通の出口見つけりゃいいだろ、いちいち妙な所を探して、手間かける必要ねぇよ、行きたきゃ一人で行けよ、メガネ君」


帆村は大畑をチビデブと言い、日野をメガネ君と言い、俺の事は何て思ってるんだろう?


まぁ、そんな事はどうでもいい。


日野も俺も上り階段を見上げただけで、帆村に着いて行く。


一階は個室となる部屋が幾つかあり、トイレと風呂場、それだけだった——。


「どういう事だ? なんで玄関らしきものがない? まだ見てない場所があるのか?」


焦る帆村の気持ちは、俺達みんなの焦りと同じ。


閉じ込められた気分だ。


「僕達がここにいると言う事は、どこからか入ったって訳だし、出口はあるよ」


日野の言う事は最もだ。


どこからか入ったんだ、どこからか出れる筈だ。


「ちょっと・・・・・・トイレ」


俺はそう言うと、直ぐ目の前にあるトイレに入る。


トイレは女子と男子別にある。


と言う事は、男と女が一緒に暮らしてたと言う事だろうか?


寮なら、男子寮、女子寮と分かれるのが普通じゃないだろうか?


そして俺はトイレの窓にも格子がついている事に愕然とする。


ここは・・・・・・一体・・・・・・何の建物だったんだ・・・・・・?


「おい、まだか?」


帆村の声が聞こえ、とりあえず、トイレを済ませ、皆のいる所へ戻る。


「水流れた?」


日野が聞いたので、首を振ると、


「クソじゃねぇだろうなぁ? クソ浮いてる便所なんて使えねぇぞ」


と、笑いながら帆村が言ったが、無視した。


「そんな事より、どうするの? 上に行く?」


三上がイライラしながら、俺や帆村、日野を見て聞いた。


「い、行こうよ、い、行くしかないよ」


何故か大畑が答える。


皆、この建物の事、どう思っているのだろう?


とりあえず、上へ行ってみるか。


皆、動き出そうとした時、


「私もトイレ行きたい」


葉山がモジモジしながら、俯いたまま、そう言うので、


「行って来いよ」


と、俺がそう言ったが、葉山はトイレに行かず、そのまま突っ立って俯いている。


「あぁ、怖いのか? 大丈夫だよ、大きな窓があるから、光が入ってるし、暗くはない」


「それ男子トイレだろ? 女子トイレは違うかもよ? 三上さん、一緒に行ってあげれば?」


日野がそう言うと、三上はコクンと頷いたが、葉山は困ったように、更に俯く。


まさか大の方か?と思った瞬間、


「生理か?」


帆村が言った。


葉山は俯いたまま、小さく頷く。


俺に対し、クソだの言っていた奴が、女の事に敏感に気付くなんて!


只、デリカシーはない。


でも絶対に彼女持ちだな、帆村は・・・・・・。


「どうしよう・・・・・・ナプキン・・・・・・カバンの中だったから・・・・・・」


小さい声で三上にそう言っているのが聞こえる。


三上も小声で、


「何日目? 多い日? とりあえずトイレに行ってみよ?」


そう言っているのが聞こえる。


「女の子は大変だね」


日野も何故か小さい声で呟く。


「なぁ、卒業旅行のつもりで来たなら、みんな、カバン持ってたんだよな? 俺も肩からさげるカバン持ってたんだ。財布も入ってたし、葉山もカバンの中身が必要みたいだし、出口を探しながら、カバンも探そう? 外に出れても金も何もなければ、意味ないし」


「カバンなんてオレ達をここに連れて来た変態が持って逃げてるだろ」


「それはないだろ、だったら貴重品だけ持って逃げるだろ? それにこんな手の込んだ事をする奴が、貴重品だけを狙っての計画じゃないだろ、金だけほしいなら、金持ちそうな奴を狙って、引っ手繰りでもしてるだろ」


「それもそうか、オレ達の中で引っ手繰りに合いそうなのは、あの生意気な女くらいだしな」


帆村が言う生意気な女とは、三上の事だろう。


「・・・・・・三上は金持ちなのに、スマホとか持ってないのかな?」


「持ってんだろ、でもカバン中なんじゃねぇの? それにこんな所じゃ圏外だ、きっと」


「いや、そうじゃなくて、卒業旅行の連絡、なんでハガキで三上も届いたんだ?」


「え?」


「メールとかでいいんじゃないの?」


俺がそう問うと、帆村は黙り込んだ。


変わりに日野が、喋り出す。


「確かにそうだよね。親には甘やかされてるみたいだし、今時、スマホを持ってない方が珍しい。学校では禁止されてるけど、僕の友達もみんな持ってた。僕も欲しかったけど・・・・・・。三上さんだってスマホをほしい筈。親に強請らない訳がない。聞いてみる? 三上さんに直接——」


メガネを中指で上げて、俺を見るので、


「なんでも思ったまま喋る帆村が聞けよ」


俺は帆村を指名すると、帆村は、


「オレが聞くとまた喧嘩みたいになるだろ、チビデブが聞けよ」


と、大畑を指名。


「ぼ、ぼく? や、やだよ、だって、何か疑ってるみたいだし、疑った事で恨まれたら嫌だし、あの人は気が強そうで怖いし。やっぱりシッカリ者の日野君が適任者だよ」


大畑は日野を推薦。


「神場君、君が聞いてよ、やっぱり疑問に思った人が聞くのが一番だよ」


日野は俺に。


青白い顔の葉山と三上がトイレから出てくる。


葉山は貧血気味で体調も悪そうだ。


「大丈夫だった?」


日野が気遣うように言うと、葉山はコクンと頷く。


本当は大丈夫じゃないかもしれないが、そんな事、男の俺達に言えないのだろう。


「7人目も女だったな、ソイツが生理用品持ってるかもしれないし、何とかなるだろ」


帆村の言う通り、何とかなるのだろうか。


男の俺にはよくわからない——。


ふと、男達は俺をジッと見ているではないか。


俺にスマホの事を聞けと、皆、目で訴えてくる。


「・・・・・・三上」


「なに?」


きょとんとした顔で俺を見る三上。


ここで疑問を問いかけると言う事は、ソイツを疑っていると言う事になりそうで、気分を害するんじゃないだろうか、ましてや相手は女・・・・・・。


泣かれたりしたら嫌だなぁ・・・・・・。


「三上もさぁ、ハガキが届いたんだろ? クラスメイトから」


「うん」


「その・・・・・・何て言うか・・・・・・三上はスマホとか持ってないの?」


「え?」


「俺はスマホ持ってなくて、不便だって友達にも言われててさ、でも・・・・・・別にスマホ必要ないかなって持たなかったんだ。あ、勿論、社会人になってからって思ってたけど、その、学生の内はいらないかなって・・・・・・あぁ、でも、ほら、学割とか聞くし、よくわからないけど、そんな高い品物でもない気がしてさ、三上程だと、スマホなんてオモチャみたいなもんだろ?」


「何が言いたいの?」


「・・・・・・」


察してくれよと、俺は参ったなと頭を掻く。


「あ、スマホで誰かに連絡しようとしてる? ごめんね、スマホ、カバンの中なの。カバン見つかるような事があったら貸してあげてもいいよ? 圏外かもしれないけど」


「そうじゃなくて!」


「ん?」


「・・・・・・クラスメイトから、なんでメールじゃなくてハガキで連絡が来たのかって思って——」


俺がそう聞いた途端、三上は黙り込んだ。


何故か、みんなも黙り込む。


「・・・・・・ごめん、疑ってるとか、そういうんじゃなくて——」


「疑っているのね」


「いや、違う違う、只、本当に疑問に思っただけで——」


「でも疑ってるんでしょ、私を!」


「違うよ、三上は違うと思う!」


キッパリそう言った俺に、三上は逆に疑いの視線を向ける。


「本当だよ、だって、三上、小柄だし、俺はそんなに身長ないけど、170はある。日野もそれくらいあるよな? 帆村は俺よりもう少し高いし、大畑は身長は低いけど、体重は俺達より重そうだ、俺達をここに運ぶのは無理があるだろ?」


「・・・・・・疑ってないのはわかった」


三上はしぶしぶ頷いてみせる。そして、


「スマホは持ってる。でも私の学校って小・中・高・大ってエスカレート式のお嬢様学校なの。エスカレート式って言っても、高校、大学は、一応、試験もあるし、落ちる場合もあるし、勿論、就職組もいる。スマホは親と連絡をとる為とか、GPS機能とか、そういう理由で持つのを許可してるだけ。だけど、先生には内緒でみんなラインしてるよ。グループ作ってチャットみたいに。メールはしないかな」


と、ちょっとツンケンした言い方で言うから、


「あ、そ、そうなんだ、メールじゃなくて、ラインね」


と、苦笑いで、頷く。


「今回、ハガキが来た時、ライン繋がってないクラスメイトからだったし、安い旅館なんて、ちょっとした社会見学みたいな感じがして楽しそうだと思って、参加・不参加は自由だったし、何の疑いもなく、仲良しの友達に連絡とる事もしないまま来たの。今、思えば、連絡して、確認すれば良かったと思ってる——」


「仲良しの子が不参加かもって思わなかった?」


「ハガキにはクラス全員参加するって書いてあったの、なかった?」


「あった」


「でしょ? 内容は同じよね?」


「ハガキだったから、内容は親も見たよな? お嬢様が、そんな旅行、よく許されたな?」


「・・・・・・白状すると、うちの親は私より妹の方が可愛いの」


「妹がいるのか?」


「うん、でも私が可愛がられてないとは思ってないよ? 贅沢してるし、欲しいものは何でも買ってもらえるし、お金は幾らでもくれるし」


それは、金さえ与えておけばいいと思っている親に聞こえ、俺達は三上が少し不憫に思えた。でも三上は屈託のない笑顔で、本当に幸せそうに言う。


金さえあれば、幸せなんだと思っているのか、その歪んだ愛情しか知らないのか——。


俺は・・・・・・親の愛情を感じている。


だからこそ、三上が可哀想に思える自分がいるんだ・・・・・・。


『親はお金を出してくれる存在』


どんな気持ちで、そんな事を言っているのかと思ったが、三上なりの親の愛情表現を口にしただけだったんだな——。


「他に尋問は?」


意地悪な口調で、俺を見て、そんな事を言う三上に、少し笑い、


「お嬢様って、どんなラインするの?」


と、ふざけた質問をしてみた。


「大体『ごきげんよう』ら始まるかも」


「マジで!?」


驚く俺に、


「ごきげんようってスタンプあるんだから」


と、笑う三上に、俺も笑う。


気付いたら、皆、笑っている。


こんな所で和んでいる場合じゃないよなぁ。


だけど、この中に、俺をこんな場所に連れて来た奴はいなさそうだ・・・・・・。


最初は疑ってたけど、みんな、いい奴そうだよな。


実を言うと、コイツ等って、なんでか不思議と親近感と言うか、なんというか、そういうのが湧くんだよなぁ・・・・・・。


川瀬 水花、もし、ソイツが存在するなら、ソイツもコイツ等と同じだといいな。


「上へ行ってみようか」


日野がそう言って、皆、頷く。


階段もこれまた古くて、一歩上がる度に嫌な音を鳴らし、嫌な雰囲気を演出してくれる。


上りきると、消火器が置いてあって、その上の壁は、大きめの黒板がある。


8月9日 晴れ。


・2号棟の本を勝手に持ち出さない。


・1号棟と2号棟を繋ぐローカで騒がない。


・鍵の閉まった部屋をむりやり抉じ開けない。


・みんな仲良く!


もう消えかかっているが、黒板の隅の方に、白いチョークでそう書かれている。


他にも何か書かれていたようだが、もう読めない。


——なんだろう、この注意事項?


——本を持ち出さないとか、ローカで騒がないとか、むりやり抉じ開けないとか?


——こんなの子供に対しての注意だ・・・・・・。


「・・・・・・1号棟と2号棟を繋ぐローカってここかな?」


真っ直ぐな長いローカがあり、日野は黒板を見て、ローカを見て、呟く。


俺はその長いローカを見て、突然、フラッシュバック。


『待ってよー!』


『早く! 早くここから出ないと、みんな殺されちゃう!』


ガクンと膝まずき、口を押さえ、わからない映像に冷や汗を流す。


——小さい頃の俺?


——誰だ? 誰の背中だ? 俺は誰を追いかけてるんだ?


——みんな殺されちゃうって?


突然、気分が悪そうにする俺に、大丈夫?と三上が覗き込む。


「あ、見て、誰かいる」


突然、葉山が窓の外を指差して、そう言った。


「どこ?」


日野がメガネをクイッと上げ、外を覗き込む。


「あれ? 向こうの建物の一階の一番端の窓側に誰か立ってたの」


葉山はローカの窓から見える向こうの窓側に誰か立っているのを発見したようだ。


向こうの窓側とは、この建物がTの字かLの字になっているのだろう、この場所から曲がった位置にある部屋の窓が見えるのだ。


だが、どれもこれも窓には鉄格子がついていて、ここの窓にも鉄格子はついているから、向こうの窓の中を見ても、よくわからない。


「あっちの棟の一階の端の部屋? 川瀬 水花って人かな、行こう」


日野がそう言うと、葉山はウンと頷いた。


二階から見える景色で、やはり、ここは山の中だとわかる。


手入れもされていない木々と、聞いた事もない鳥の鳴き声、それから——


「また蝶だ」


俺はヒラヒラと舞う白い蝶を見つけ、呟いた。


だが、気付かないのか、それとも、どうでもいいのか、誰も何も言わない。


2階から見ると、結構、白い蝶があちこちで飛んでいる。


木々ばかりで花など見当たらないが、この蝶が好む樹液でもあるのだろうか。


一匹の蝶を目で追い、ふと、遠くにあるモノに気がついた。


「温室がある」


俺が遠くにあるモノを指差し、そう言うと、皆、え?と口々に言い、俺を見た。


「ほら、あれ! あれ、ビニールハウスじゃないか?」


窓から見える景色は木々ばかりだが、木々の間に見える白いハウス。


「ほ、本当だ、あれはビニールハウスだ。近くに農業をしている人がいるのかなぁ」


大畑がそう言うと、


「こんな所でか? 不便じゃねぇの?」


と、帆村が言う。


「そ、そうだよね、ここの気候に合う畑があるって言うなら、わかるけど・・・・・・」


大畑がそう言って、考え込む。


「農業とは限らないんじゃない? 蝶やワニや蛇を飼育するのも温室が必要だよね」


日野がそう言うと、


「蛇!?」


と、葉山が悲鳴に似た声を出した。


俺は何故か、蝶!?と、声を上げそうになったが、


「何の為に蝶や蛇を飼育するんだよ、考え過ぎだろ? きっとイチゴだよ、イチゴ!」


そう言って、頭から蝶を掻き消し、更に葉山の恐怖を和らげようとした。


「イチゴかぁ」


葉山はホッとしたように、そう言うと、三上が、


「イチゴは大好き! 食べるのも、見るのも!」


と、笑う。


「見る? イチゴを見るのか?」


不思議に思い、聞くと、


「可愛いよねぇ?」


「うん、可愛いよぉ」


と、三上と葉山は二人で納得し合っている。


どうもその辺の女の感覚がわからない・・・・・・。


しかもイチゴの話は楽しいらしく、女二人は長いローカを歩きながら、イチゴについて語り続けている。


牛乳の中にイチゴを入れて潰して食べるだの、牛乳がピンクになって可愛いだの、練乳が好きだの、やっぱりイチゴのショートケーキは最高だの。


話はイチゴからケーキに移り変わり、チョコレートの話になり、クリームの話になり——。


だからなんなんだと聞きたくなるような話のオンパレード。


女ってのは、どいつもこいつも、下らない話が好きだな。


これで川瀬 水花とか言う奴が加わったら、更に下らない話が膨れ上がるのかもしれない。


「そう! イチゴのピアスなの! 可愛いんだよ!」


話はイチゴに戻ったが、スイーツからアクセサリーに変わったらしい・・・・・・。


「ここからが2号棟かな? それとも、こっちが1号棟かな?」


ローカも終わり、下り階段がある場所で立ち止まり、日野が誰に言うでもなく、聞いた。


「いいじゃん、どっちでも。行こうぜ?」


どうでも良さそうに帆村は言うと、階段を下り出した。


俺は、わからない胸の鼓動に不安を感じていた。


もしかしたら、この場所、俺は知っているのかもしれない。


ここに来た事があるのかもしれない。


でも、だとしたら、どうして思い出せないんだろう?


何故、フラッシュバックのような断片的なものでしか、脳裏に浮かばないんだろう?


こんなの、まるでPTSDみたいだ——。


「あ、ドアがある」


日野は何気なしに、そう呟き、誰に問うでもなく、そのドアノブに手をかけた。


階段を下りて、長いローカの真下となる部屋だ。


俺達は緊張感をなくしていた。


6人もいるし、木々に遮られ多少は暗いが、光は窓から入って来ているから明るい方だし、何より、俺達は少しずつ親しくなっていたんだろう。


何をした訳でもないが、何気ない会話や、下らない話を耳にしている内に、元々友達だったくらいに思えてきていたんだ。


考えたら、そんな訳ないのに——。


俺達は、たった一枚のハガキで呼び出され、ここに、何者かによって、連れて来られ、藁人形と言う殺人予告までされている。


そんな計画的犯行を受けながら、俺達は何をしているんだろう。


ねぇ、誰かが殺されて、誰かを信じられる人間なんているのかな——?


例え、友達でも、人殺しだと疑ったら、ソイツを信じられる時が来るのかな——?


そう、俺達は6人なんかじゃなかった、7人だったんだ——。


7人目の俺達の仲間は死体だった・・・・・・。

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