第21話 A進学塾4 スタッフ招集

 話をしながら教室を横目に廊下を歩いて行く。まだ、この時間の教室に生徒はいない。教室近くの掲示板には最近の模試のランキングが貼られている。


 各学年のランキングが貼られている。一年生から六年生まで……

『一年生から?』確かれいたちの時代は一番下の学年で小学校四年生からだったような記憶がある。

 ここは習い事とか、補習的な学習塾ではない。中学受験を目指す生徒が来る進学塾だ『今のご時世、そんな小さい時から進学塾に通わせ、競争させているのか……』


「一年生から……」

思わず麗の口から声が出た。


「本当よね。それもどうかと思うでしょ」


掲示板を見ながら言う多香子たかこに頷く麗。


「一年生から競争って……」


「でも競争の中でこそ生まれる意欲とか達成感っていうのも確かにあるのよ。小さい子でもね」


「わからなくもないけど……それって、人を蹴落けおとす感じ?」


苦笑にがわらいしながら首を振る多香子、

「そんなんじゃないわよ。その中でこそ生まれる仲間意識や協力し合う意識もあると思うのよね」


「そうなのね……」


◇◇◇◇◇◇


 ある教室に通されると先に来た一人の女性が窓から外を眺めていた。肩までのゆるくカールをかけた髪、やさしい感じ女性は今回一緒に仕事をする赤壁真紀あかかべまきという女性だ。


「はじめまして、赤壁と申します。心理学を専門にやってます」


「こんにちは美景みかげと申します。私はシステム開発をやってます」


 そこへ多香子の先輩講師である秋山誠あきやままことに案内され早坂徹はやさかとおるという男性がやってきた。爽やかで端正な顔立ち、温厚そうなやわらかい物腰の早坂は脳科学の研究をしているという。


 今回の企画に参加するメンバーがそろった。今日は初めて一堂に会することになった。企画担当のチーフである秋山から教育システムの開発に関する説明があった。


◇◇◇◇◇◇


 最初はなにか面倒な難しい企画に呼び出されたと思った麗だったが、実際に参加してみると他のメンバーである心理学の赤壁真紀も脳科学の早坂徹も麗と同じくらいの年齢で話しやすかった。


 それぞれの立場から意見も言える雰囲気だと感じたし、なにより企画自体が期限にしばられかされめられるような感じではなく、案外楽しく参加できる企画だと思った。


◇◇◇◇◇◇

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