§04 戸惑い 出会い2

第22話 鏡寧々1

 秋山あきやまから一通り説明があった。とりあえず、今するべきことは、まずは五年生の授業内容、時間割、授業科目のコマ数、試験結果の分析からだ。

 そして得られたものから、赤壁あかかべ早坂はやさかたちと協力して新しい学習体系の素案を考えることだと思えた。今日はとりあえず大まかな説明だけで終わった。


 と、その時、教室の外から子供たちの声が聞こえてきた。ふと時計を見るともう四時過ぎ。今日は月曜日だ『この時間、もう小学生が来る時間なのか……』そんなことを思った。


◇◇◇◇◇◇


 れいたちが話をしていた教室にも、バッグを肩に掛けた一人の女の子が入ってきた。気が付いた多香子たかこが女の子に声を掛けた。


「いつも早いわね。かがみさん」


「こんにちは、上田うえだ先生」


「鏡さん、この前の模試もすごかったわね」


「いえ」


 多香子が麗や赤壁、早坂に紹介する。


「この子、これから話をしたり協力してもらったりすることもあるかもしれない子だから紹介しておくわ……ここの小学五年生の鏡寧々かがみねねさん。彼女、四年生の夏からここに来始めて、今までの模試ずっと一位独占してるの」


「へえ、すごいんだ」


 麗の言葉に、その子は少し気まずそうに微笑みながら、少し怪訝な顔で麗たちを見回した。それを察した多香子が、


「あ、ごめんなさい。鏡さん。これから塾の事情でいろいろと、この人たちに協力してもらうようになるの。みんなは今まで通り授業と模試を受けてくれたら、この人たちが勝手にいろんなことを分析してくれるから……」


首を傾げながら頷く。


そこへ一人の男子生徒がやってきた。

「まあ、要するに、おれたちは今まで通り普通にしてれば、このお姉さんたちが勝手に塾のために、いろいろデータ分析してくれるってことじゃないの」


「あら、小咲こさき君。こんにちは。勘がいいこと」


多香子が続けて麗たちに紹介する。


「こちらも優秀な五年生男子、小咲崇こさきたかし君。最近、関西から転校してきたんだけど、いきなりこの前の模試で二位だったわね。さすが関西ナンバーワンの名門塾出身ね」


その言葉に反応したのは関西出身の早坂だった。


「え、君、関西出身なんだ」


「ああ、僕はそうだね。お兄さんも関西出身なの?」


他愛もない話を少しして、赤壁と早坂は帰って行った。


◇◇◇◇◇◇

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