第20話 A進学塾3 多香子との再会
「麗、お久し振り、元気にしてた」
「あなたは相変わらず元気そうね」
「小学生を相手にしていると、こっちもそれなりにテンション上げてないとね」
大学を卒業して塾講師になった多香子は、どこか学生時代の雰囲気が残っている感じがした。小学生に勉強を教えるのは楽しいと言っていた。
しかし、塾の講師というのは、学校が終わってからやってくる小学生相手なので、OLをしている麗とは基本的に生活のリズムが違うようだ。
「毎日、大変じゃない」
「まあね。今回は久し振りにあなたに会えたけど。普段はなかなか友達と会うこともない感じね」
「まあ、そこはOLやってても似たとこあるかもしれないけどね」
「そうだね」
微笑んで頷く多香子。
「あれなの……最近じゃ映像で授業したりするの?」
あまり塾業界に詳しくない麗がありったけの知識を総動員して多香子に質問してみる。
「ここは対面授業ね。でも、そういうのは考えてるみたい。そうすることで、ここの塾の授業が全国どこに住んでる子でも受けられるのはいいことだと思うの。こっちの、塾側の営業的な面だけじゃなくて生徒にとってもね。地方格差っていうのか、機会均等っていうのかさ」
「そうだよね。首都圏とか関西圏とか、都会の子だけ有利っていうのもね」
「そう、まあ、有利かどうかはわからないけど、やっぱりいろんな意味で刺激にはなると思うの」
「……」
「受験ってさ。いろんな意味で競争じゃない。しかも全国の生徒が最初は中学受験とか高校受験って感じで、その地域その地域で競争してるんだけど、最終的には大学受験で全国の生徒と競うでしょ。スポーツで言ったら、そこまでずっと地方の大会で頑張ってきた生徒が、最後はいきなり全大会の決勝で戦わないといけないみたいな……」
「そうかもね」
「それにそこだけじゃなくて高い授業料の部分もなんとかできそうじゃない?」
「そうかもね」
「それにそういうところが、うまくいけば私たち塾講師の労働環境もかなり変わってくる気がするのよね」
「そうかもね」
◇◇◇◇◇◇
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