第2話 メッセージ 

「お帰り。早いじゃん。京介きょうすけさんとデートだったんじゃないの」

四つ下の妹のまいは都内の大学に通っている。


「ただいま。ちょっとね、いろいろあって」


「ケンカしたんだ」


「そんなんじゃないよ」


「じゃあ何があったのよ」


「殺人事件」


「え、殺しちゃったの?」


「バカ」

まいの頭を叩いて自分の部屋に上がって行く。


「どうしたの?」

姉のるいがやってきた。


「わかんない。れいちゃん殺人事件に巻き込まれたんだって」


「え、あのお昼に駅前であった事件?」

るいの驚く顔に、まいも驚いた。


「え、何? 本当に殺人事件があったの?」


「知らないの? ニュース見てみなさいよ」


 急いでテレビを見る舞。麗の部屋に行く泪。

泪は麗の三つ上の姉で都内の大学で大学院に通っている。


「麗、大丈夫だった?」


「うん、なんとか」


「あの場所にいたの?」


「うん。すぐ近くにいた人が撃たれたの」


「え! 無事でよかったわ」


「うん」


「ねえ……大丈夫?」


泪が心配そうに見る。頷く麗。


「よかった」


泪はやさしく麗を抱きしめた。麗の目に少し涙が浮かんだ。


「こわかったね」


もう一度深く頷く麗。


 下りて行くと舞がかじりつく様にニュースを見ていた。今日の出来事の一部始終をアナウンサーやニュースキャスターが伝えている。

 つい先ほどまで麗がいた駅前広場から、リポーターの女性がまるで自分が現場に居合わせたかのようにその時の様子を伝えている。


 生々しい現地リポート。アナウンサーやキャスターの専門的な解説、報道……それを真剣に見ている妹の舞。

 しかし、麗は何か伝えていることが違うような違和感を感じた。


 誰もがまるで他人事のように事件を伝えている。他人事のようにニュースを見ている。自分には関係ない駅前で起きた事件という感じだ。


今日、麗が感じた『あのとき、あの場所で感じたの感覚』を誰も伝えていない。


そうだ。


『いつでも、どこからでも、だれの命でも狙える』


という犯人からの暗黙のメッセージ。


◇◇◇◇◇◇

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