第2話 準備期間

昨日は芋虫くんと一緒にギルドの馬車に乗せてもらい帰った。






あの後金髪のリネさん、赤髪のラーラさんと一緒に管理地入り口まで戻った。

ギルドの馬車と馬が四匹、ギルド職員らしき男性二人と登録者三人組がいた。


登録者三人組はちょうど話しが終わったのか軽く手を挙げてこっちに挨拶した後管理地に入っていった。見た目は三人とも剣を使うようで、大きな荷物を背負ってるのが一人、あとの二人は荷物は小さな袋だけで少し重そうな装備だ。


リネさん達は色々話し合ってたりしたので、邪魔にならないように馬車の近くで一人待機。その後幼虫くんを見に来た他の職員二人は「なんだこいつ」「うわぁ」って反応してた。


そのあとは短槍を軽く拭いたり、ラーラさんの弓を撃たせてもらったりした。

二十メートルほど離れた場所に当てるのは難しく、教えてもらいながら練習できたのはよかった。


それなりの時間があったので最終的にはもう少し離れた距離を、ビャッと飛んでストンと当てるのは無理だったけど、ピョーンと飛んでプスって感じで当てることはできたので満足。弓の性能もあるんだろうなきっと。




髭のおじさんと茶髪くんが管理地区入り口に戻ってきたのは、空の色がだいぶオレンジ色に変わった頃だった。


「一カ所を除いてアガメノソウ、ヤダウモソウ、シロトゲバシリソウの発見ができないことを確認した。それに君が示した場所にきちんと採取に向かっていたことも確認できた」

「確認できなかった一カ所は、元々あった通れそうな場所が崩れて崖みたいになったとこっすね。さすがにあそこ全部を確認してからだと他の場所を回る時間が・・・」

「君が通ったところは草木が押し潰されてて岩も無くわかりやすかった、そしてその幼虫の発見場所である大きな倒木も確認した。」


やっぱり一本もなかったのかぁ、そりゃ探しても見つからないはずである。

それに幼虫くんとの出会いの場所も確認できたらしい。やっぱり人が通った後だと進みやすいんだな。


「他の場所でも採取のために行ったってわかったんですか?」

「ああ、踏まれて折れた草木やコケ、ひっくり返された岩などの状況からも判断した。随分効率的に回っていたようだな」

「獣人族みたいな移動場所の選び方だったっすね」


髭のおじさんに他の場所もどうして通ったってわかったのか気になったので聞いてみたら、足跡や痕跡を残し過ぎていたらしい。

無理やり岩とか上ったのもわかりやすかったと。



帰りの馬車ではリネさんが幼虫くんの特徴をメモしながら報告書の下書きをしていた。揺れる馬車で器用なことである。

リネさんラーラさんはギルドの近くに最近新しくできた社宅?に住んでいるようだ。

木製鍵で一泊四百マードの激安宿に泊まってると話したら驚かれた。ラーラさんが時間が合えば装備のことなど相談に乗ってくれるらしい。


ちなみに髭のおじさんことゴデルダラスさんと、茶髪の兄さんラチャオさんは馬での移動だ。


流石に馬車での移動は楽だった、揺られてるだけで目的地に進んでくれる素晴らしい。でも維持費を考えると相当お金かかるようだ。



ギルドについた後は芋虫くんのお引き取りがあり、短い時間だったけど少し寂しく感じた。念のため籠ごと買い取りということで籠代だけ先にもらい、芋虫くん自体は値段が決まり次第知らせるので受付に来た時に確認してほしいと。


ちなみに管理地での情報料としては五万マード、籠代が五百八十マード、激安宿が一泊四百マードと考えるとなかなかだ。

激安宿から他へ移ってもいいかもしれない。



手続等を終わらせた頃にはもう真っ暗で夜中だった。

お金をほとんどギルドに預けて激安宿へ向かう。


ラーラさんに教えてもらった宿が二千から五千マードくらいの値段だったので、明日色々と準備にかかる値段を調べることにする。


最初は毎日依頼を受ければよくない?と考えてたけどその日使った装備や服等洗ったりしなきゃいけないし、食糧等の準備それだけで一日潰れる、その日その日で気軽に依頼を受けるというのはとてもじゃないけど現実的ではない。


街中での日雇い仕事でもあればいいけどこの世界だとかなりの地元民優先である。

ギルドに登録したばかりのよそ者の場合、ある程度依頼をこなしてギルドからの依頼達成証明書(この人はこういう依頼を受けていましたという履歴書のようなもの)を発行してもらえるくらいにならないと怪しい仕事くらいしか残っていない。身元確認大事。




激安宿に向かう途中、暴れる大男を二人の老人が一瞬で取り押さえて捕まえる瞬間を見た。


大男の前蹴りを一人の老人が片手で掴んでそのまま地面に叩きつける。

叩きつけられた大男が喚きながら片腕を地面に突っ込み、石を引っ張り出して投げつけたと思ったら、もう一人の老人が上からひっぱたくような動作をすると、投げつけられた石と大男が上から潰された。

その後大男は老人に片足掴まれて路地裏に引きずられていったけど、こういう風景を見ると魔法はすごいんだなと思う。


地面抉れてるし、血の跡もあるし関係者だと思われるのも嫌なので素早く離れて宿へ。





目が覚めた。

部屋の隅で座りながら寝てるので体が痛い。

部屋の扉と窓の前に浮かべてある、もやもやっとした見た目の魔法に手を突っ込んで回収する。


今日は色々と調べたり準備をする。あと昨日使ったものを綺麗にしないと。




おおっ凄い、朝夜食事付きで部屋の鍵が金属だ。窓も縦長の隙間に木の板を突っ込んで塞ぐ方式じゃなく、鎧戸ぽいものがあって開く。床に布を敷いて座って寝なくてよさそう。うーん、これは文明を感じる部屋、何より凄い綺麗だ。

部屋の中に水を流せる場所がある。道具や服を洗う場所も外にある。トイレは共同、お尻を拭く紙は受付で買うか専用の紙を持ち込みのようだ。


これで一日二千六百マードか、激安宿七日分。一定期間借りると先払いだが結構安くなる。色々調べた感じここも安宿といわれてるらしい。これは早く証明書がほしい。



新しい宿も決まり昨日使ったものをジャブジャブ洗いながら、次の補助依頼について考える。

魔物関係は装備にかかる値段と期間を考えると論外。何より魔物相手に行くような人たちは気性が荒い人が多い、ほんとにびっくりするほど多い。そんな人たちと荷物運び等でも依頼期間中一緒にいるのは避けたい。


そうなるとやっぱり採取系、今の季節なら食べれるものもついでに取ってこれるし。

とりあえずまた籠買おう。あとは違う管理地に行くならそこの地図、魔物の目撃情報の有無、採取できるものの種類も調べないと依頼で稼げない。


やっぱり次も需要のある薬に使う原料狙いの採取にしよう。補助依頼中ならちょっと買い取り高くなるし。ここでの需要高そうなもの調べてそれ狙いで。




頑張って洗ってたけど頑固な汚れもだいぶ薄くなってきたしこれ以上は落ちないかな?もともと汚れるものだしこれくらいでいいか。


ギュッと絞ってバサバサと振り回しペシペシ叩いて干す、今日は天気がいいしちゃんと乾きそうだ。



前と同じ籠が見つからない。大きさ的にちょうどよかったんだけど今日朝一で三つ売れちゃったらしい。

他の店でも大きめのサイズの籠が売れちゃってて籠ブームでも起きてるのか。

六件目でようやく一つ小さいサイズの籠を見つけて購入、値段もちょっと高かったし。




アガメノソウ、ヤダウモソウ、カギヅメチョウソウ、シロトゲバシリソウ、トメモソウをお隣の国の商会が大量に買い取っていったらしい。


これって全部に大型の鳥系魔物傷に使うはずなんだけど何かあったのかな?

















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