信じる者、信じぬ者(Roster No.3)

「開催中止かぁー」


 携帯情報端末を返却し、スマートフォンを受け取ったジョージは電源を入れ直しながら誰にともなく呟く。チームメンバーは、とっくのとうにどこかに去っていった。もとより一時的なお仲間だったので寂しさはないが、他のチームが和気藹々とレストランフロアに移動しているのを見ると、なんか一言あってもよかったんと違うますのんと思ってしまうわけで。そう思うのなら自分から言い出せばよかったのか。


「こんつぁ」


 ぬっと目の前に現れた仮面の女に、思わず「うわあ」とスマートフォンを落としそうになる。


「どちらさまでいらっしゃいます?」

「ワタシ?」

「そうでございますが」


 チラリと見える仮面の下は、痛々しいやけどの痕があった。隠すための仮面なのだろうけども、怪しさを倍増させているような気がしてならない。出るところは出ていて出なくてもいいとされる箇所は引き締まっている肉体だから、そちらのほうに目が行ってしまうだろうに、頭部が特殊なので、こう、なんというか、世の中うまくいかないものである。


「ヒトメサマを信じますか? 信じませんか?」


 世の中、本当にうまくいかないものである。宗教勧誘ときた。……ん、でも待てよ。ヒトメサマ。


「俺っち、会ったことあります?」

「会ったことありますですか?」

「だいぶの昔に……思い出せそうで思い出せんから、かあちゃんに聞いてみていい?」


 ちょうどスマートフォンが返ってきたから。


「アナタ、ヒトメサマと似ている。似ているアナタ、ヒトメサマと面会するです?」


 世の中で〝イケメンおじさん〟だとか言われているヒトメサマと似ていると言われて、ジョージは苦笑いした。まあ、そりゃ似てるだろうよ。


「今日はいいや。連絡先だけ教えて」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る