感動の再会(Roster No.25)

「おい! 中止ってなんだよ中止ってよ!」


 軍装の少女が運営スタッフに殴りかかろうとして、そばにいたライダースーツの女性が「落ち着きなさいよ」と羽交い締めにした。Roster No.25の彼女らの、残りの2人のメンバーの姿はない。この『ウランバナ島のデスゲーム』は4人一組のチーム制なのだが、交通事情で他のチームメンバーが来られなかったチームもあり、さらには「開催中止」のアナウンスの影響で会場を出ていったチームもあり、現在開会式の会場には100人の参加者のうち、約半数程度の人数しか残っていない。


「納得いかねえんだけど?」


 運営スタッフから引き離された少女、ナイトハルトは腕を組み、顔全体で不機嫌をアピールしている。引き離したほう、シエラも納得いかないのは同じくで、ポケットからタブレット菓子のケースを取り出して、五粒ほど一気に口の中に放り込んだ。


「早くしないとねえさんが……」


 ナイトハルトの呟きに、バリボリとタブレット菓子を噛み砕いていたシエラが「ねえさん?」と反応する。


「てめえには関係ねえよ」

「そうね」


 Roster No.25は即席チームである。他のチームはオーディションを受ける段階から4人一組なのだが、こちらのチームだけが個別に応募している。なので、それぞれの事情や思惑は知らない。オーディションや身体能力測定ですれ違いはしていたが、面と向かって話をするのは会場についてからが初めてである。しかし、優勝した場合は賞金を分配、というのは他のチームと変わらない。


「わたしは、ナイトハルトというに頼まれてここまで来たのだけど、あなたは姫りんごさん?」


 運営スタッフに手渡された携帯情報端末の参加者一覧を開いて、シエラは問いかけた。会場内では「受付にて携帯情報端末の返却をお願いします。確認が取れ次第、お預かりしている私物をお渡しいたします」とアナウンスが流れている。個人所有のスマートフォンや、会場に入るまでに所持していたものは運営スタッフに回収されており、外とは連絡が取れない。


「オレもナイトハルトだ」


 ナイトハルトの名前を挙げられて、怒りが一時的に引っ込んで驚きが出てくる。今朝方「じゃあ、行ってくるからな」とまだ眠っているナイトハルト(男)に声をかけて、家を出てきたばかりだった。


「あら。そうなの」

「あいつとはどういう知り合いなんだよ?」


 さらっとした返しに、怒りがぶり返す。ライダースーツに身を包んだ、手足が長くしなやかなプロポーションのシエラと、相対する145cmのナイトハルト(女)。シエラが受付に歩いていくので、ナイトハルト(女)も小走りでついていく。


「どういうって?」

「知り合いにも色々あるじゃんか!」

「……そう言うあなたは、一体どうしてナイトハルトと名乗っているのかしら?」

「弟子だよ! 弟子!」

「ナイトハルトって屋号みたいなものなのね」

「で、どういう知り合いなんだよ!」

「ご想像にお任せします」

「はあ!?」

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