目前
♡
「颯君、疲れたねー」
「うん。でも、すみれのご両親もいい人だったし、うちの親もすっかりすみれと仲良くなってくれたから。もう、いつ結婚しても大丈夫って感じかな」
「もー、照れるよ。でも嬉しい。私、幸せ」
夏休みもお盆を過ぎた。
先日は、盆休みだったうちの両親を交えて、颯君の家族と初めて顔合わせした。
うちの両親は基本的には友好的ではあったけど、その理由は早く私に結婚させたいという気持ちでしかないだろう。
反対に颯君のご両親は緊張していた。
まるで結婚の挨拶のようだと引き攣った笑いを浮かべていたけど、それでも終始私のことを褒めてくれていた。
もう、これで終わり。
私は颯君と二人で遠くへ行くの。
誰かへの依存はつまり、何かからの脱却。
私の場合は家から。
親に依存しないと生きていけない子供が、誰かとの子供を欲しがるなんておかしい話だけど。
私は颯君に依存する。
そして彼も私から離れられない。
それでいい。
それがいい。
もう私たちは一人じゃない。
すべてはあの日から。
彼がももにゃんの姿で私の前に現れたあの日から。
……ううん、違うね。
多分生まれたその日から。
私たちは一緒になる運命だったの。
「颯君、夏休みが終わったらお引越ししたいな」
「いいよ。じゃあ、まずはお金貯めないとね。夏休み中バイト頑張るよ」
「うん。広い部屋がいいな。あと、静かな場所がいい」
「この辺りはどこも人が多いからなあ」
「遠くに行きたい。二人で」
そんな嘘を私はつく。
彼は迷わず頷いてくれるけど。
二人で、遠くに。
ふふっ、嘘だよそんなの。
もう、二人じゃないんだから。
助けたクラスメイトが病んでいたので、俺の正体を全力で隠しているのですがなんかバレているっぽい件 天江龍 @daikibarbara1988
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