部屋
♤
「あれ? 扉が開かない?」
朝食を終えて制服を取りに帰ろうと、一度この部屋を出ようとしたその時、玄関の扉がびくともしないことに気づく。
「颯君どうしたの?」
「いや、扉が」
「あー、たまにあるのよ。なんか壊れてるみたいで」
「そう、なの?」
たまに扉が壊れることってあるのだろうか?
それに、どうしてもこんなに落ち着いてるんだ?
いつものことだから?
いや、いつものことならその解決方法も知ってるはずだ。
「あの、こういう時ってどうしてるの?」
「えー、どうだったかなあ。しばらく開くまで時間かかるし、学校はどのみち行けないかな」
「そ、それなら先生に連絡しないと」
「じゃあ私がしておくね。私と颯君は今日は休みますって」
「い、いやそれはまずいんじゃ」
「なんで?」
「え?」
「なんで? 私たちが一緒にいるって知られたら困るの? 先生の中に狙ってる人とかいるの? そうなの? だったら私、学校行って先生みんな問い詰めてくるから」
「ま、待って待ってそんなわけないじゃんか! 俺はただ」
「言い訳しないで。私怒ったから」
ぷいっと顔を背けて部屋に戻るすみれ。
慌てて彼女を追いかけると、振り返りながら「こういう時は機嫌とるものだよ」と睨まれた。
「……ごめん。別にそういうつもりじゃなかったんだよ」
「じゃあ私と今日一日一緒でも嫌じゃない?」
「……うん」
「一緒にいたい?」
「えと……う、うん」
「ほんと?」
「ほ、ほんとだよ」
「じゃあいいよ。ねっ、せっかく休みになったしなにする? またゲームする? それとも」
もう一度寝る? と。
俺の手を引いてベッドへ向かわせる。
俺は彼女の機嫌を損ねてはいけないと、否定はできなかった。
そのまま再びベッドへ。
外はすっかり日が昇っていた。
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