部屋


「あれ? 扉が開かない?」


 朝食を終えて制服を取りに帰ろうと、一度この部屋を出ようとしたその時、玄関の扉がびくともしないことに気づく。


「颯君どうしたの?」

「いや、扉が」

「あー、たまにあるのよ。なんか壊れてるみたいで」

「そう、なの?」


 たまに扉が壊れることってあるのだろうか?

 それに、どうしてもこんなに落ち着いてるんだ?

 いつものことだから?

 いや、いつものことならその解決方法も知ってるはずだ。


「あの、こういう時ってどうしてるの?」

「えー、どうだったかなあ。しばらく開くまで時間かかるし、学校はどのみち行けないかな」

「そ、それなら先生に連絡しないと」

「じゃあ私がしておくね。私と颯君は今日は休みますって」

「い、いやそれはまずいんじゃ」

「なんで?」

「え?」

「なんで? 私たちが一緒にいるって知られたら困るの? 先生の中に狙ってる人とかいるの? そうなの? だったら私、学校行って先生みんな問い詰めてくるから」

「ま、待って待ってそんなわけないじゃんか! 俺はただ」

「言い訳しないで。私怒ったから」


 ぷいっと顔を背けて部屋に戻るすみれ。

 慌てて彼女を追いかけると、振り返りながら「こういう時は機嫌とるものだよ」と睨まれた。


「……ごめん。別にそういうつもりじゃなかったんだよ」

「じゃあ私と今日一日一緒でも嫌じゃない?」

「……うん」

「一緒にいたい?」

「えと……う、うん」

「ほんと?」

「ほ、ほんとだよ」

「じゃあいいよ。ねっ、せっかく休みになったしなにする? またゲームする? それとも」


 もう一度寝る? と。

 俺の手を引いてベッドへ向かわせる。


 俺は彼女の機嫌を損ねてはいけないと、否定はできなかった。


 そのまま再びベッドへ。

 外はすっかり日が昇っていた。


 

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