放課後

「滝沢君、迎えに来たよ」


 放課後になってすぐ。

 紫すみれが俺を迎えにやってきた。


 その様子にクラスメイトたちはざわついていた。

 俺は目立っていた。

 それはあまりよくない傾向だと、すぐに察して、廊下で待つ彼女の元へ向かった。


「あの、わざわざ迎えに来なくても」

「でも来てもいいよね? それとも、私が来たら迷惑?」

「いや、そんなことはない、けど」

「だよね。じゃあ、いこっか」


 いつも通りマイペースというか俺の話を聞こうとしない彼女に呆れながらついていく。


 迎えにこなくたってちゃんと部室には行くって……ん?


「あの、どこに向かってるの? 部室はあっち」

「あー、その前にちょっといいかな?」

「う、うん?」


 家庭科準備室のある方とは逆へ歩き出したので焦ったが、ニンマリ笑う彼女になぜか逆らう気にはなれず、ゆっくりついていくことに。


 すると。


「ここって……」

「屋上だけど? ほら、この前も来てたじゃん」


 屋上に連れてこられた。

 前はここで偶然紫すみれと出くわしたが、しかしなぜ放課後にこんなところに?


「滝沢君、放課後に話があったんだよね?」

「話? ん、そういえばそんなこといったっけ」

「またまた、とぼけちゃって。ほら、今は誰もいないよ? 私に言うこと、あるんでしょ?」

「……」


 二人きりになったところで詰められはじめた。

 ちょうど風でパタンと扉が閉まり、彼女の長い髪が靡いて、顔が隠れた。


 そして再び顔が見えると、紫すみれはじっとこちらを見つめていた。


「……あの、紫さん」

「んー、なーに?」

「え、ええと……俺、実は……」


 何もかも見透かしたような目でこちらを見る彼女に俺は嘘がつけないと悟った。


 そして、その大きな瞳に吸い込まれるように意識がぼーっとしてきて。


 気がつけば俺は口を開いていた。


 そして、こう言った。


「俺、実はあの日のももにゃん、なんです」

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