詮索
「……もしもし?」
知らない番号だったが、咄嗟に出てしまった。
「……滝沢颯君、だよね?」
「その声は……三船さん?」
「ええ、そうよ。ちょっとお時間いいかしら」
三船咲からの電話に、俺はなぜか安心した。
というのも、彼女が紫すみれに何かされてそれこそ消されたんじゃないか、なんてことを想像していたから。
まあ、さすがにそこまではしないと思ってはいたが実際何もなかったのであればそれに越した話ではない。
「ちょっとだけなら大丈夫だけど。どうしたの?」
「今日は部活に行かなくてごめんなさい。でも、ちゃんと明日から参加する予定だから。紫すみれにもちゃんと話してあるし」
「そ、そうなんだ。来ないからびっくりしたよ」
「ねえ、紫すみれと二人でいつも何してるの?」
「なにって、本を読んでるだけだよ?」
「それで? 今は一緒にいるの? それともいないの? ねえ、どうなの?」
「そ、それは……」
まるで電話の相手が紫すみれと錯覚しそうなほどに、三船咲は重い声で質問を重ねてくる。
「まあ、いいけど。あんまり私を雑に扱ってると紫すみれに正体をバラすからね」
「……なんで三船さんは、俺が彼女に正体を隠しているって知ってるんだ?」
「別に。見たらわかるってだけよ。ままならない事情があるんだろうなって。そこまでは聞かないけど」
「はあ」
やはり掴みどころがないというかよくわからない人だ。
この電話だって一体なんのために、それに誰に連絡先を聞いたのか。
不思議なことだらけな彼女に首を傾げていると、最後に三船さんが「とりあえず明日からよろしくね」と。
電話を切った。
「……なんだったんだ?」
話が見えず、少し部屋で一人考えた。
しかし結局何もわからないまま。
とにかく三船咲は無事だったということで、それがわかっただけよかったと。
息を吐いてから部屋を出る。
「何してたの?」
「わっ!」
すると部屋の前に紫すみれが立っていた。
「誰と話してたの? 三船さん?」
「あ、いや、ええと」
「嘘、つくの?」
「……電話がかかってきたんだよ」
「へえ、どうして?」
「し、知らないよ。連絡先を教えてもないのに勝手に電話がきたんだ」
「ふうん」
口をすぼめながら紫すみれは一歩前に出る。
そして俺の目の前に立つと、少しだけ俺より背の低い彼女が俺を上目遣いで見ながら。
口角を上げた。
「ねえ、滝沢君って身長何センチだったっけ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます