バイバイ
「……」
「ねえ、本読み終わる? そろそろ片付けしないと部室施錠する時間だから」
「う、うん」
静かな放課後だった。
二人でずっと、黙々と読書を続けるだけの平和な時間。
なのに胸騒ぎがおさまらない。
三船咲はどこにいった?
あれほど強気に入部させろと息巻いていた彼女がなぜ来ないのか。
昼休みに何かあったのか。
それともたまたま来れなくなったのか。
しかし怖くて聞けない。
聞けばよくないことが起こりそうな気がして。
「ふう、今日は結局話し合いまではできなかったね。あっ、そうだ。今日もおうち寄っていい?」
「い、いいけど。何するの?」
「晩御飯今日も作ってあげようかなって。ほら、昨日すごく喜んでくれたのが嬉しくて」
「そ、そう? でも今日は母さんもいるかも」
「ううん、いないよ」
「え?」
「あはは、そんなに驚かないでよ。さっき連絡が来てね。実はライン交換してるのよ」
「へ、へえ」
「それに今日できなかったお互いの読んだ本の薦め合いもしたいし」
「そ、そういえば三船さん来なかったね」
話の流れで三船咲の名前を出した。
やはり気になって仕方がないというか、それを聞かないまま紫すみれと平気な顔で過ごせる自信がなかった。
「三船さん、やっぱり飽きたんじゃないの?」
「そ、それならいいけど。昼休みは何話したの?」
「んー、他愛もないことだよ? 好きな本の話とか筆記用具何使ってるかとか」
あと、ももにゃんの話とか。
そう言って彼女はクスッと笑う。
「……ももにゃんの話?」
「うん。可愛いよねーって」
「そ、そうだね。今結構流行ってるもんね」
「ねー。それでさ、今度の週末なんだけど、駅前でももにゃんの着ぐるみを着れるイベントがあるんだって。みんなでももにゃんになろうキャンペーン」
「キャンペーン?」
「そ。三船さんが教えてくれたの。よかったら一緒に行ってみない?」
「……」
「嫌なの?」
「い、いやじゃないよ。予定がなかったかなあって考えてただけで」
「予定なんかないよね?」
「……まあ」
予定なんかない。
それはそうなんだけどなんでお前が決めるんだと言いたいがもちろん言えず。
結局一緒に俺の家へ。
そして到着するとすぐに台所に立つ紫すみれをよそに俺は一度部屋へ。
すると。
電話が鳴った。
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