決まりね
「た、ただいま」
三船咲が去ったあと、すぐに俺たちも部室を出て帰宅した。
無事、家にたどり着くことができた。
が、しかし。
「ただいま……だとおかしいよね。お邪魔します」
今日はなぜか紫すみれも一緒。
ついてくるとしつこくて、ついてくるなとも言えずに俺は彼女を家へあげることに。
母さんがいないか警戒したが、夕方は買い物へ出かけたり近所の人や友人とお茶をして外にいることが多く、今日ももれなく外出中だったので一安心。
まあ、そんな安心はすぐに消える。
「滝沢君、今まで女の子を家に呼んだこととかあるの?」
「な、ないよそんなの。彼女もいたことないし」
「へえ、ないんだ。ふーん」
興味なさそうなふりをしながら、しっかり嬉しそうだ。
頬が緩んで、目尻が下がって声もうわずっている。
この反応を見る限り、彼女は俺に脈ありだと。
いくら恋愛経験のない俺でもそれくらいはわかるほどに彼女はわかりやすい。
学校のアイドルが家にきて、さらに俺に脈ありな反応を示してくれるなんて普通ならガッツポーズしてよっしゃと声が出てもおかしくない激アツ展開なのだが。
今はその反応が逆に辛い。
激サブ展開である。
俺に対して好意があるということはつまり、俺をももにゃんの中の人だと思い込んでいるからである。
そして正解。
核心に近づいているというより彼女はもう確信してるまである。
まずい。
こんな状況で詰められたらもう誤魔化しようがない。
なんとかももにゃん関連の話題にだけはならないように気をつけないと。
「……」
「どうしたの滝沢君?」
「あ、いや。あの、リビングこっちだから」
とりあえず玄関で立ち話とはいかないだろうと、入ってすぐにあるリビングへ通す。
向かい合わせの応接用ソファに彼女を座らせてからお茶を出し、そして向かいに腰掛ける。
彼女はすぐに話を切り出す。
「ねえ、あの三船咲って子は必要?」
「……別に必要ないけど、断る理由も今のところ見当たらない」
「滝沢君は断りたい? その気持ちが一番重要なんだけど」
「断り……たいよ。でも、部活動の私物化は問題視されたらそれこそ部の存続に関わるから」
「私物化……ふうん、なるほど」
ふむふむと、俺の話に耳を傾けている。
案外いい感じなのか?
そう思った瞬間。
紫すみれはポンっと手を叩いて何か閃いたように俺に言った。
「じゃあ、三船咲を入部させましょ」
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