その人だあれ?
「滝沢君、また後でね」
学校に到着すると紫すみれは先に校舎の中へ入っていった。
やけにあっさりと俺の元を去った彼女に対して、俺はひとまずホッとする。
俺が読書部の活動に協力的であれば彼女はとりあえず暴走せずにいてくれるようだ。
しばらくは騙されたフリをしながら読書部として大人しく活動しつつ、ももにゃんの話題になったら知らぬ存ぜぬでかわそう。
なに、証拠はないのだ。
警察の人は守秘義務が云々ってことで俺の話を口外することはないと言ってくれていたし。
他のバイトスタッフの人もみんなほぼ面識がないし、俺の正体を知っているのはあと……面接してくれた企画会社の担当者さんくらいか。
さすがにそんな人にまで話を聞きに行ったりは……いや、執念深い彼女ならそれくらいやりかねない。
今日のうちに電話しておこう。
うん、念には念をだ。
「ねえ、君って紫すみれとどういう関係?」
「え?」
紫を見送ってからゆっくり校舎に向かっていると後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこには見覚えのない女子が立っていた。
「滝沢君だよね? ねえ、紫すみれとはどういう関係?」
「お、俺のこと知ってるの?」
「同級生なんだから別に知っててもいいでしょ。それより質問に答えて」
「……ただの部活メンバーだけど」
そんなことより君は誰なんだ?
と、聞こうとしたがその子は一言「ふうん」とだけ。
そのまま俺を置いてさっさと校舎の奥へ消えていった。
◇
「……」
授業中。
ずっとポケットの中のスマホが震えている。
ラインだ。
そして誰からのものかは、見てはいないが想像はつく。
紫すみれだろう。
しかし俺と彼女はただの友人で、しかも俺は彼女の機嫌を損ねるようなことをした覚えはない。
だからこの鬼のような連絡はなんだ?
見るのは怖いが、一応というか、万が一彼女に何かあって助けを求めてるなんてことがあったら……まあ、授業中に何があるんだって話だが。
「……すみません、トイレ行かせてください」
手をあげてトイレと嘘をついて教室を出た。
で、廊下に出てすぐに携帯を見ると。
「嘘つき」
「あの女誰?」
「友達いないって言ってたよね?」
「なんで私に嘘つくの?」
「今すぐ屋上きて」
「来ないんだ。さようなら、死ぬから」
「読書部のこと、よろしくね」
おぞましいメッセージがずらり。
「……やば」
メッセージの量もそうだが、内容に俺は青ざめた。
死ぬから。
それを見て焦って俺は屋上へ走った。
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