第四十三話 なんで強くなりたかったのか

《草間町 西門の大通り:桃太郎》






 ────ドクンッ。


 鳴りやまない鼓動の音が僕の脳を叩く。


「ティナよ! ワシのことは良い! 辰夜を連れて逃げよ!!」

「駄目よ! 二人を守るって言ったじゃない!」


 相変わらず周りの状況が分からない。

 ────でも、そんなことは


「ええい! 離すのじゃ!!」


 栗太郎の声と、何か固いものを叩いた音が聞こえた。

 さっき見た『黒』と戦っているのだろう。


 人を食べる大きな『黒』

 散らばる『赤』


 僕は、それが無性に気になって仕方がない。


 見るモノすべてがどうでもいい。

 聞くモノすべてがドウデモイイ。


 僕は……。

 今、無性に!!


「あ! 桃太郎君!!」




 ティナさんのもとを離れた僕は、

 そこで意識が途絶えた。




──────────────────────




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